くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「青春相談室」三浦哲郎 その②

2009-08-23 08:30:22 | 哲学・人生相談
三浦さんの人生相談、解答編です。
まず、わたしが初読したときに最も心に残った相談を引用しましょう。(ごく一部省略しています)

「初めて好きになった人に誤解され悩んでいます」
Q
私は中学三年生になってから初めて男の人を好きになったのです。今どうしたらよいか困っています。
九月から社会科の時間に、積極的に授業をすすめていくという方針で、男子三人、女子三人が一グループで、グループ学習をするようになりました。リーダーは私の好きなA君で、私は副リーダーでした。内心すごく喜びもしました。
ところが、私たちのグループにT君もはいっていました。このT君は二年生のとき、母から「今の両親の子ではなく親せきの人の私生児だ」と聞かされました。今となってはそれがかえってアダとなってしまいました。
時間中、T君とよく口げんかをします。私は血の気が多いのか、すぐ頭に血がのぼり、
「なにさ、おめかけの子のくせに!」としゃべりそうになってしまったことがたびたびありました。それで、あまり話をしないようにしてきたのです。
ところが、先日、A君から「少し頭がいいからって、そんなにお高くとまらなくってもいいだろ。俺達と話もできないというのか」「ちがうのよ!」心の中で叫んでも、A君にはわからないのです。私は高まんちきで、わがままな子だと、A君に思われているのです。
今、先生にいってグループをかえてもらいましたが、A君からは相変わらず冷たい目でみられています。悲しくて泣きながら眠ってしまう日もあります。どうか私によきアドバイスをお願いします。
(愛知 T・N)

A
お手紙を読んで、あなたの心の動きに怒りをおぼえました。
たとえT君が本当に私生児だったとしても、私生児自身のどこが悪いのだ。T君自身はなにも知らずにこの世に生まれてきたのです。T君にはなんの責任もない。そして、あなた自身にもおなじ人間としてT君を軽蔑する権利がこれっぽっちもないのだ。
ところが、あなたはごうまんにもT君をさげすんでいる。たとえ口には出さないにしても、「なにさ、おめかけの子のくせに!」と、しゃべりそうになるということは、あなたの心なかにT君への強いさげすみがあるからだ。あなたは、不幸な環境にいる人を上から見くだそうとする、おなじ人間として憎むべき人種の一人だ。
そんなあなたのごうまんで恥ずべき心のうちが、知らず知らずのうちにあなたの態度にあらわれているのです。A君が怒りたくなる気持ちは、よくわかります。あなたのような女をみていると、誰だって気持ちがいらいらして怒りたくなるのだ。
あなたの身勝手さは、居心地が悪くなれば先生にたのんでさっさとグループをかえてもらうところにもあらわれています。そして、最も困ったことは、あなた自身、自分の心のみにくさにちっとも気がついていないことです。
猛反省をうながします。


どうですか、厳しいでしょ。でもこれが三浦さんの考えなのです。ひじょうに彼らしい。
ほかにもいろいろあるのですが、手紙の中から相談者の現状をできるかぎり読みとろうとしていることに気づかされます。
ただ、少女たちの現実と三十男の三浦さんには乖離があるのですよね。例えば「交換日記」を始めたけれど、相手の男の子のことを好きでもないような気がしてきたからどうしたらよいのかといわれると、
「交換日記をしているからといって、あなたがどうして自分がS君のことを本当に好きかどうかについて思い悩むのか、そのわけが理解できなかったのです。」「交換日記というのは、『好きな人同士が自分の日記をみせ合うこと』」なのかと尋ね、そして結論は、
「日記とは自分自身との孤独な対話です。他人にみせたりするものではありません。ですから、交換日記には反対です。」
うーん、この子、日記の存在意義について知りたかったわけではないと思うよ……。
でも、青春期の少女の悩みは混沌としていて、手紙という形で気持ちを整理するだけでもだいぶ楽になるとは思いました。(そういえば、男子からの相談は例の一件だけですね)
「青春相談室」が、ほかの人生相談と違うのは、相談者の手紙の部分でしょうか。かなりページをさいているものもあります。普通ページの都合で短く編集してあるものなのです。なんていうか、悩みって普遍的なものでしょ。ひとりに答えながらみんなに発信する顔を持っているから、中心部だけで枝葉は取ってしまうことが多い。
もちろん文章に手は入っているのでしょうが、なるだけその人個人に応えようというイメージが伝わってきました。
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2 コメント

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記事転載させて下さい。 (onikosato)
2011-01-19 09:20:29
この三浦哲郎作品の感想を私のblogで紹介したいので転載させて下さい。
よろしくお願いします。
どうぞどうぞ (いつか)
2011-01-20 08:42:07
 onikosatoさん、はじめまして。
 同じ三浦文学を愛する者として、onikosatoさんのような活動をされている方には共感します。
 三浦さんの文章の確かさは、しんと胸に落ちてきて美しいですよね。わたしはどちらかというと古い作品の方をよく読んでいたように思います。

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