くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ちょっといい話」戸板康二

2010-07-21 05:27:01 | エッセイ・ルポルタージュ
念願の戸板康二「ちょっといい話」(文春文庫)を読みました。これも県図書館にて。中に生協のレシートがはさまっていて、これが02年。うーむ、久しぶりに借り出されたのでしょうか。
文人の話が多いので、わたしにはおもしろいです。サトウハチローが「上田敏訳の『海潮音』、永井荷風訳の『珊瑚集』を読んでいると、原作は、あんなにうめえこといっていないんじゃないかと思うね」と言ったとか。寺山修司が歌人で親しい人を聞かれて、「宮柊二さん/だって向こうもシュウジでしょ」とか。
こんなのもありました。北条秀司さんという方が、「(岡本)綺堂先生は、よほどウナギが好きだったらしい」という。その証拠を尋ねると、「半七が、のべつにウナギ屋に行く」。なーるほどー。
山岡鉄舟が清水の次郎長から、手紙の字が難しいといわれて書いたその後の手紙。「このあひだは、ありがたし。この品あげる。/六月二日  やまおか」。
虚子のエピソードも。彼を宗匠として久松伯爵邸で句会をしたときその場にいた「温厚な老人」が酒をついでくれます。虚子は松山藩士(あまり身分は高くない)だった自分の父親のことを思い出して、なんともいえない思いにひたりました。なぜなら。この老人、徳川慶喜だったのですって。
彼らしい台詞として、「選句は選者の創作です」というのも紹介されていました。北村薫がアンソロジーは選者を読むことであると語っていたことを思い出します。その人らしさが出るものですものね。(ということは選者の人柄が反映してしまうのですね……)
ほかにも、菊池寛「文才のある文学青年ほど、困ったものはない」や武者小路実篤「雑誌にたのまれたら書く。ことわるより書くほうが早い」も、時代を映しているように思います。
八千草薫の愛称はヒトミ。「二十四の瞳」を演じたとき、「ざんねんながら、二十四じゃないわ」 といったとのエピソードも。八千草さん、上品ですてきな女優さんですよね。
借り物なので本のページを折って読むわけにはいかず、もう一度さらっと読み返してしまいました。侍従長がタクシーで皇居まで行ってほしいと言ったところ、運転手さんに、「旦那、だいぶご機嫌ですね」と言われた話なども、おもしろいです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿