くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「風にもまけず粗茶一服」松村栄子

2010-12-16 05:48:29 | 文芸・エンターテイメント
久しぶりにK書房に行きました。この書店、大好きなのですが、なにしろ駐車場が有料なため、行きにくいのです。いやー、最初の30分無料なんですけどね。とりあえずこの前まで三千円で駐車券がもらえたのに、突然五千円になってしまいました。
でも、岩波ジュニアの栗木京子の新書がほしくて。それはもちろんありましたが、他にも欲しい本がごろごろ見つかって、ほくほくです。
中でも、これは面陳してありました! 松村栄子「風にもまけず粗茶一服」(マガジンハウス)。
お若いおにーちゃん(超新星ゴニルという人らしい)がカバーモデル。「へ? 新版?」と一瞬思いましたが、あの本の続編であることがわかり、小躍りして購入。でも、一冊めと装丁イメージ違いすぎる。
一冊めとは言うまでもなく「雨にもまけず粗茶一服」(ピュアフル文庫が入手しやすいです。表紙カバーは柴田ゆうさん)のことですが、まさか、続編が出るとは。うれしー。うれしーー。
とにかく宣さんがいいです。彼が登場すると目顔が熱くなってしまう。遊馬との出会いもいいですが、ラストで茶人としての自分を取り戻す彼が特にいい。
物語が動いていくのを強く感じた一冊でした。
翠が自分の気持ちに気づいたり、幸麿さんとカンナの結婚が近づいていたり、奈弥子さんが思い切ったり。一年の間に、いろいろあったんだなあ。
坂東友衛流。剣道、弓道、茶道を極める武家茶道の宗家に生まれた遊馬は、家を飛び出して京都へ。そこで知り合った多彩な面々と過ごすうちに、自分の未熟さが見えるようになって……。というのが前巻のあらすじなのですが、今回は比叡山にこもった遊馬の修行(?)と奮闘の日々を描きます。
世俗を超越したようなお坊さんや、自給自足の文学農民五郎さん、山中で獣のように生きる世捨て人「烏天狗」、不良から一転、お坊さんの弟子にしてほしいと願う峰男。そんな人たちと過ごすうちに、遊馬は様々な価値観にふれ、成長していきます。
なにしろお寺ですから殺生は戒められており、食事は自分でなんとかしなくてはなりません。文明の機器もなく、交通手段は自分の足。たくましくなりますとも。
三十三間堂の大的大会で優勝するほどの力をつけた遊馬でしたが、彼を応援しようと立ち寄った佐保はそのままセンター入試を欠席してしまったのでした……。
それを知って恐縮する母。うーん、このあたりが終盤の伏線になっているのでしょうね。
佐保が提案した「谷修行」でいろんなことが劇的に変化します。やはり、彼女は遊馬にとってなくてはならない人なのかも。
そして、「風」のあとには「雪にもまけず粗茶一服」が収録されています。これが一冊にまとまっている構成がいいのです。「風」の伏線が「雪」につながり、オープニングと呼応しての大団円。弥生の思いがしみじみと胸に染みる。
そして、「すずめのがっこう」の歌を口ずさみたくなることうけあいです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿