くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「給食のおにいさん」遠藤彩見

2014-04-28 05:01:34 | 文芸・エンターテイメント
 先日、ビブリオバトルに取り上げるとしたらどんな本を選ぼうかと考えたんですが、今なら断然これですね。語りたくて仕方ないです。
 「給食のおにいさん」(幻冬舎文庫)。学校、食べ物、成長もの、とわたしの好きなジャンルが大鍋でじっくり煮込まれたようなおもしろさ。いや、給食だからじっくりは無理かもしれませんが。(時間制限あるからね)
 主人公の佐々目宗は、様々な料理コンクールで優勝した料理人。でも、人間関係がうまくいかず、独立しようとしたら店が火事に。
 自転車で二十分の小学校で、給食調理員の職を得ますが、自分の料理人としての立場にゆらぎを感じるように。
 保健室登校の一年生。毎日給食の残りをもらいにくる男の子。給食委員会のメンバー。シェフ給食の企画で現れた昔の彼女。
 そして、なにやらひっかかりがある管理栄養士の毛利。
 目的のためならば佐々目に蹴りを入れるのも平気。チワワみたいな顔をして、結構頑固。なぜ彼は給食の残りを児童に渡すのか。食に関わっていくことにものすごく力を注ぐのに、自分の食事には無頓着。(手洗いの習慣をつけようと、自作の劇を披露したり手品を習ったり)
 頑なな中に策士の一面もあります。
 わたしが気になるのは、家庭科の専科を持っている深津先生。男性です! 担任なのに専科なのはちょっと謎ですが。大学のときも、家庭科の資格をとる男性は彼一人だったとか。(わたしの知人には、女性で技術科という先生はいますよ)
 これに保健室の由比先生を加えて、佐々目の周囲がにぎやかになっていきます。
 若手料理人としての視点が、子どもたちや先生方と過ごすうちに変化していく様子がおもしろいんです。これまで見えていなかったものに気づくところが。
 チーズスフレの回が好きです。太ってしまった子役の女の子に、自分でできる料理を教える。でも、最初からうまくいくわけではありません。彼女は自分の真剣さが足りなかったことにはっとする。
 料理人だから、このままでは失敗することを、佐々目は知っていたはすです。でも、スー・シェフとしての立場を守って、いいタイミングで導いてくれた。
 大人と子どものふっとした違いや、見守るなかでできることに、わたしも気づかされたように思います。
 遠藤彩見さん、「冷蔵庫探偵」の方なんですね。持ってます。
 この続編も今月出版したばかりだそうですから、早速買いにいきますねー。

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