くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「三鬼」宮部みゆき

2016-12-18 20:01:02 | 時代小説
 「三鬼 三島屋変調百物語」(日本経済新聞出版社)、良かったです。
 待ち望んだ四冊め。おちかの身辺も移り変わります。
 正直、青野先生の決意はショックでしたが……。
 
 「迷いの旅籠」は、山中の村に「おばけ」が出た話。死んだ肉親に会いたい絵師が行ったことは……。
 「食客ひだる神」、だるま屋さんの弁当がすごくおいしそうなんです。この仕出し屋さんが、夏の間はなぜ営業しないのか。それは、ご主人に憑いているひだる神を太らせないため。神様のダイエット!
 ユーモラスでしみじみとしました。
 宮部さんは陰と陽の話を交互に意識して語っているそうですが、こちらは陽ですね。ひだる神との交流が、柔らかいものを感じさせてくれました。
 「三鬼」は、冒頭の妹のエピソードだけても腸が煮えくり返るような思いを感じましたが……そのあとの、鬼も、開拓の村も、そこにしか行きようのない人々も、もうみんなつらい。
 「三」というからには、やはり村井も須加も、鬼だということなんですよね。欣吉の姿も哀れです。
 「おくらさま」。よくこんな設定を思いつきますよね……。
 尋常ならざる老女が語る火事と、香具屋の蔵に住む「おくらさま」。それは、おちかの夢なのか。
 それ以上に青野先生のゆくたてと、どうやらおちかと縁のあるらしい瓢箪古堂の勘一さんの登場が、これから先の物語のことを想像させられました。