くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「しゅるしゅるぱん」おおやなぎちか

2016-08-25 05:08:47 | YA・児童書
 東北ゆかりの本として紹介された一冊。おおやなぎちか「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)です。
 花巻の近くにあるらしい「しゅる」という町に、東京から引っ越してきた開人。お風呂あがりにパジャマが見当たらないとき、おばあちゃんに「しゅるしゅるぱん」と言われます。
 このあたりでは、山の神さまのいたずらでものが見当たらないことがある。そういうときなこの呪文のような言葉を言って紛らわせるのだとか。
 なんとなく腑に落ちない思いの開人ですが、自分を「しゅるしゅるぱん」だと名乗る男の子に会います。
 「きら」を助けなくてはならないというこの男の子、果たして?

 また、過去を描くパートもあり、こちらは「道子」や「妙」の視点です。道子は貧しいながらもあたたかい両親と暮らしており、仲良しの友達もいます。しかし、道子をからかう男子から「道子の母親はふられた」のだと告げられます。
 友達の父親である三枝面妖。地元の怪奇作家である面妖が蔵にいる姿を見て、道子は複雑な思いに。
 妙は道子の母親であり、開人からみれば「おひこさん」(曾祖母)にあたります。
 年頃になった妙が落とした櫛のために、呪いを受けて病床に伏した彼女を助けたのが面妖でした。
 二人は恋に落ちます。でも、「しゅるしゅるぱん」は結局何者? とか、なぜ面妖は別の女と結婚したのかとか、謎は残り続けるのです。
 
 現代の少年である開人は、リレーのバトンがうまくパスできないことで、仲良くできそうな友達とぎくしゃくしています。その子の一家が現在借りているのが、あの蔵のある家なのです。
 続いていく血脈。消えてしまう昔の記憶。蔵のある家がなくなっても、時は流れていくのだと感じました。
 でも、どこかに思いは残っていく。そんな気がします。