くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「土蛍」近藤史恵

2013-08-06 21:37:30 | 時代小説
 熊は出ませんでしたが、土砂降り。雷がものすごくて、疲れてしまいました。
 近藤史恵「土蛍」(光文社)。「猿若町捕物帳」の新刊です。今回はずっと八十吉視点で、女の怖さを描いていました。だから、書き下ろしの「はずれくじ」に騙されるのですね。おはる坊……。
 「むじな菊」は、愛想のいい差配さんが殺されてしまう。店子の女房良江の兄が金の無心にきていたから、それが怪しいという話になります。
 むじな菊というのは、菊の花びらが散っている紋様なのですが、よく見るとそれはタヌキの毛なんだとか。美しいものの裏に何か醜いものが隠されているのですね。
 で、吉原が火事になり、梅が枝は胞輩の女たちとさるお屋敷で養生します。千蔭はその見舞いにいくのですが、奥方が気さくに娼妓たちに接している様子を見ます。
 ラストまで読むと実はこの奥方の芯にある苦渋が見えてきて、ぞっとしますよ。
 「だんまり」は芝居のタイトルなんだそうですが、悪人が暗がりの中で自分をとらえようとしていることに気づかない町人がタイミングよくその手をかわすんだとか。
 元結だけを切っていく辻斬りと、博打狂いの兄とを絡めています。
 「土蛍」は巴之丞の一座で自殺した役者が出ます。巴之丞の相手役・杉蔵はひどい女たらしで、自分の子供を産んだ女をほかの男に押しつけるとか。この役者は杉蔵の弟子で、たしかにわりない仲の赤ん坊がいるのですが、今さらショックを受ける事態ということでもないはず。(自分の子ではないことを承知で引き取っているのですからね)
 そして、梅が枝には身請けの話も出る。しかも 、火事で世話になったお屋敷だといいます。でも、そこのご主人は一緒にいた雛鶴という女の客だったはず……。千蔭は割り切れないものを感じます。
 千蔭、今回あんまり活躍しませんね。いや、相変わらず冴えてはいるんですが。
 こうやって読んでしまうと、続編が早く読みたくなりますよね。前の作品も読みたくたりました。