くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「今日もいい天気」山本おさむ

2013-02-18 05:51:04 | コミック
 先日ラジオで、ある新聞社の方が話されていたことが頭から離れません。世論調査をしたところ、原発賛成の人が六割を越え、反対は四割未満に止まっているそうなのです。たった五ヶ月前はその割合は逆だったと言います。選挙のときに、反・脱・卒をスローガンにしていた政党が敗れたからといって、原発問題がクリアーになった訳ではありません。福島の方々は今も苦しい思いをされているのだと思います。
 帰りたいけれど、生活を再生できる可能性が日に日に少なくなっていく。その現実に、どうやって折り合いをつければいいのでしょう。山本さん、この続きも読みたいです。
 「今日もいい天気」(双葉社)。先月、福島に家を買って埼玉の仕事場と行き来しながら暮らす毎日を描いた「田舎ぐらし編」を読んで、今回の「原発事故編」が発売になるのを待っておりました。
 わたしは山本おさむさんのまんがをほとんど読み、このテーマを皆さんにも共感してほしいと学校図書館にできるだけ配架してきました。重度重複の障がいを描いた「どんぐりの家」、ろう学校はどうして甲子園予選に出場できないのか「遥かなる甲子園」、「わが指のオーケストラ」、もちろん「そばもん」も愛読していますよ。
 今回この作品では、山本さんの憤りがストレートに描いてありました。それまでの平穏な暮らしが、音をたてて崩れてしまう。奥さんは翌日、愛犬を連れて埼玉まで車を走らせて脱出。放射線のニュースを見るたびに、自分は逃げてしまったのだと地元の人に申し訳ない気持ちでいっぱいになる様子……。
 被災地から遠くなるほど、その事実からも遠ざかっていくのでしょうね。もう福島の問題が「過去」である人たちもたくさんいるのでしょう。でも、それでいいの? 活断層の問題も遅々として進まない除染作業も、各原発にプールされている使用済み核燃料も、またどこで同じようになるか予測できると思うのですが。
 山本さんは、東京電力の対応や政府、そしてプロパガンダの発言を取り上げて怒ります。始めは騙されたふりをして、自分に安全だと言い聞かせたかった。でも、違う。福島で暮らす人、福島で農産物を作っている人、子供のことを守りたいと一時避難を選択した人、避難勧告を受けて仮設住宅に暮らす人、彼らの思いが、本作から溢れ出ているのです。
 なぜ原発を受け入れてしまったのか。もう半世紀も前の決断を、引き受けることになった現実。出稼ぎに行かずに済むようになった、町には奨励金が出た、誰のための建設なのか、誰かの苦しみの上に建つ原発で、誰が「得」をするのか。
 原発には反対です。声をあげ続けていくことが必要なのだと重ねて思いました。
 一見、もとの暮らしに戻ったように見える日常ですが、わたしたちはあの地震の前には戻れません。
 あと二十日余りで二年経ちます。でも、二年しか経っていないのです。隣県であるわたしたちも、作物の放射線測定をしています。なんでもかんでも拒否するわけにはいかないけれど内部被爆がひっそりと進行している可能性はあります。わたしにも、子供たちにも。
 山本さんの葛藤は、わたしたちと同じです。