くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「歪笑小説」東野圭吾

2013-02-14 05:17:10 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 東野圭吾「○笑小説」の第四弾。「歪笑小説」(集英社文庫)。これまでの短編集とは違い、なんと連作短編でした。しかも、灸英社なる出版社の編集者と作家を描いています。玉沢義正には笑ったわー。てっきり架空の人物だと思って読んでいたら、「ミステリ特集」で糸辻竹人なる人物が登場。推理小説の書き方のような本はあてにするなというすごいアドバイスをしてくれます。玉沢氏は日本ミステリ小説協会の理事長として、この、小説の書き方指南の本に賛辞を述べる。
 あぁ、そういえば推理作家協会の理事長、今は東野圭吾だったな……。ん? 前は? 確か……。あっ、「玉沢」って「王沢」、つまり大沢在昌なんですね。そうすると、ゴルフ場で唐傘ザンケ(作家名)を激励したり須和元子を諭したり。
 非常に格好いい役じゃないですか。
 今回はこの唐傘ザンケともう一人熱海圭介という作家がキーマンです。表紙も二人の単行本(文庫?)が撮影され、本の終わりには出版案内もある。これは書き下ろしなんです。全部読んだあとに読むとびっくりしますよ。こんなところに感動ポイントがあるとは思っていませんでした。「引退発表」の寒川先生が、「筆の道」で、唐傘ザンケの「魔境隠密力士土俵入り」と直本賞を争うのです! これで、元子のお父さんも安心のはず!
 どの作品も粒よりにおもしろいのですが、わたしがしみじみしてしまったのは、「序の口」と「文学賞設立」です。大凡(おおよそ)均一という年配の作家さんの味わいがいい。「ミステリ特集」で、ユーモアミステリが書けなかったと奥さんと話しているところもいいんです。
 熱海圭介が出てくると、ドタバタの要素が強くなりますね。「夢の映像化」の木林拓成(キバタク!)が「……ったく。マジかよ。あの主人公は俺しかできないんだよ」って言っているのがすごいおかしい。
 なんだか文芸担当っぽくない編集さんに振り回されたり、辣腕編集長の獅子取さんにアフロヘアを強要されたり、映像化の話がくれば設定を変えられたり(天下一大五郎を思い出しました)。わたしは多分、東野圭吾のギャグの方が好きなんだと思います。しかし、編集さんたちもみんな個性的ですよね。玉沢氏同様にモデルがいるのでしょうか。金潮社や剛談社というネーミングも楽しかった。