くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「シフォン・リボン・シフォン」近藤史恵

2012-10-12 05:12:39 | 文芸・エンターテイメント
 「シフォン・リボン・シフォン」(朝日新聞出版)、水橋かなえという女性が経営するランジェリーショップです。かなえは、両親としっくりいかない少女期を過ごし、東京で働いてランジェリーショップを開いていました。外国の下着を扱ったりオリジナルのナイティを販売したりで、店は軌道に乗ります。がむしゃらに働いていた彼女でしたが、乳癌という宣告を受けて愕然とします。
 入院したかなえに、母親は泣きながら云うのです。
 「罰が当たったのよ。あんたが自分勝手なことばかりしているから」
 ……娘にとって、母の存在って強いのですかね。(わたしも娘ですけど)
 母親の言葉に傷ついたかなえですが、母が倒れて介護しなければならないと告げられたとき、郷里に戻って義妹とともに面倒をみる決意をするのです。
 この本を読んでいると、素敵な下着が欲しくなってくるから不思議。読んだ印象からいくと、かなり高価な品物ばかりなんですよ。バーゲンプライスでも八千円を超える。そうすると、ナイティなんか万単位ですよね。
 基本的にはネット販売の拠点にしているので、ディスプレイを見てやってくるお客さんは少ないみたい。
 ところで、第二話ではある人物が父に内緒でこの店に通いつめる様子が紹介されています。あまりにも近所なのに車がコインパーキングに停めてある。そんな目立つことをするかな? とも思ったのでかすが、そういえばお父さんはこの店のカタログを持ち帰ったこともあったから、それを拾って読んだのかなと。そこに取り上げられたものを見て、いてもたってもいられなくなるほど焦がれる思いがつよかったのですね。
 四つの物語の根底には、それぞれの親子のしがらみや葛藤が描かれます。下着といいながらも、彼らが認めてほしいのは、「自分自身の選択」であり自己の肯定なのだと思いました。豊かな胸がコンプレックスだった女性の自立を描く第一話が特徴的です。でも、反対にお金に不自由しなかった昔のことだけをよすがに、家族の困惑を考えない姑の第四話も同様だと思います。自分だけが大切にされることを考えて、相手を大切にできない人は、本当に自分の望む暮らしはできない。そう思いました。
 シフォン・リボン・シフォン。やわらかくて上品なお店ですよね。