くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「再びのぶたぶた」矢崎存美

2009-12-21 05:07:52 | ファンタジー
ぶたぶたを普及したいと思い、図書室に文庫を寄附しました。苦労してみつけた最初の三冊は手放せなかったけど。でも、もっと読みたいという子がいるならば、やぶさかではありません。
気になるらしくてぱらぱらめくる子はいるのですが、なかなか借りていかないんだよなあ。
と思ったある日、本屋に寄ったら新刊が出ていました。矢崎存美「再びのぶたぶた」(光文社文庫)。
これは……。再び買い求めて寄附しなさいということなんでしょうか。買っちゃいました。
「再び」というのは「スピンオフ」という含みがあるそうです。シリーズの番外編にあたる短編集。
最後の「桜色七日」は、わたしが初めて読んだぶたぶたシリーズの姉妹編(祖母孫編?)とあって、とても懐かしい思いがしました。そうそう、「ぶたぶたの食卓」に入ってたんだよね。このチャーハンがとにかくおいしそうで、真似して作ってみたんだけど、おこげはできてもやっぱりオリジナルとは違うものなんだなあ、と思いました。
だって、ご飯が茶碗一杯につき卵一個って……始めの半熟状は限りなくたまごかけご飯に近いですよね。わたしはご飯五人分に卵二個くらいの見当で作っているので。
うーむ、再チャレンジするべきか。いや待て。わたしは生卵は苦手なので多分無理でしょう。
でも、知っている物語と二重写しになる、というのは楽しいですね。

あとは、入れこになっている「隣の女」の構造もおもしろかったと思います。ぶたぶたさんはホラーが好きなのかあ。そういえばよく豚肉食べている……。
ただ、ラストの一文がよくわかりませんでした。頼まれてぶたぶたさんを主役に据えたホラーを書いた作家・鳥海。苦心して書いた作品をパーティーで渡すと、ぶたぶたさんは大変喜んでくれます。で、メールをくれる。タイトルは、「感想です」。
それをうけてのラストは、こう。
「その時、鳥海は本当の恐怖を知った気がした」
どこが怖いの? プロのホラー小説家でしょ。感想なんてこれまでもいろいろもらっているよね。ぶたぶたさんや、著名な演出家もファンだと言っているから、かなりメジャーな人気があると思われるのですが。今更?
捧げた本人の感想だから? しかも肉を食べさせられた揚句、最終的には捕獲されているし。
ただ、ぶたぶたさんの人柄(?)を考えると糾弾するような内容だとは思えないのですが。
恐縮な感じを、そう表現しているのでしょうか。ちょっと場にそぐわない気がしたのです。
まあでも、安定していておもしろく読めます。そういえば、二年前の冬、「ぶたぶたと秘密のアップルパイ」を病院で読んだっけ。インフルエンザでふらふらだったな、とか、読んだときの周囲の状況が割とすぐ浮かんでくる、稀有なシリーズでもあります。