くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「トリック交響曲」泡坂妻男

2009-05-22 05:35:08 | エッセイ・ルポルタージュ
泡坂さんの本を読む、と言っておいて、今までかかってすみません。本を探すところから始まったので。数年前に古本屋で購入してしまっておいた「トリック交響曲」(文春文庫)。押入を探しまわってやっと発見。ちまちま読みました。 奥様もマジックをされるというところがとてもすてきで(「同じクラブにいたのを家に連れてきたのだ」)、さらには作品に触れたりマジックについて語ったりと、縦横無尽です。
このエッセイの出版は1985年になっています。文庫なので発表自体はもっと前ですね。泡坂さんが「11枚のとらんぷ」を書かれた頃のことや「亜愛一郎」シリーズのこと、それよりもまずマジックのエピソード、といった具合に。
マジックとトリックの相違について、ずいぶん考えているようです。
どちらかというとマジック主体ですね。ゾンビボウルとかカードの話がずいぶん出てきました。
直木賞候補になって、受賞するか落選するかわからないうちに頼まれた原稿を二つ書くよりは、最小限の手直しで済む手法を考えて書いたという「受賞と落選」、古今東西の様々なトリックを分類した項など、ものの見方がじんわりと伺えるエッセイでした。
この本を読むのにかなり時間がかかっているので、泡坂さんの小説も買いましたよ。さらに押入から未読の文庫も一冊……。よ、読みます。はい。

ところで、古い文庫広告っておもしろいですよね。巻末についていた文庫リストが興味深かったのです。ノンフィクションもののせいか、今書店に残っている本がないのよ!
二十年経つというのはこういうことなのかなぁーと。少し書名をあげておきましょう。
まず目についたのは、「父 小泉信三」秋山加代、小泉タエ。さらに小泉信三の「海軍主計大尉小泉信吉」なんてのもあります。伊丹十三「女たちよ!」、永六輔「遠くへ行きたい」、岩城宏之「棒振りの控室」なんか気になりますね。
本書でいちばん興味深かったのは、マジックでの助手の重要さ。とかく術者に目がいくものですが、ある助手がいなくなったらできなくなったレパートリーも多いというくだりに感心しました。