風 かざみち 道

笑顔の日々を話したい

闘病記録ノート⑤

2007-05-15 | 病気



<2クール目・前>


一時帰宅の時が偶然にも主人の誕生日。
一緒に家で祝えるとは、何と幸運なのでしょう。
でも一泊ですから、泊まった翌日の午後にはもう、
戻らなくてはなりません。
本当にあっと言う間でした。


家族みんなで食卓を囲み、自分の布団で寝る。
普通の事がこんなに幸せな事だとは。
なのに・・・これ以上贅沢言うなと怒られそうですが、
病院に戻る車中、涙が止まらなかったのです。
この病気になってからこれほど泣いたのは、
後にも先にもこの時だけでした。

戻る日の当日、日曜なので全員いたのですが
娘はやり慣れない家事の連続で寝坊。
息子は、主人と私二人にしてあげたいと言う優しさから。
(後日談)
主人も疲れと安心と、子供達と話したいだろうからの
こちらも優しさから。
日曜の午前中は皆部屋から出て来ず、居間で一人
ぼーっとテレビを見てました。

まるで遠足を待つ子供のように楽しみで嬉しくて。
指折り数えたこの日が、孤独感に包まれるとは
微塵にも思ってなかったのです。
皆がどれほど大変な日々を過ごしてるのか、
この一ヵ月半で私のいないペースでの生活が出来つつあって、
こんな一日は特別ではないのでしょう。
思い知ったのです。病院生活で、すっかり自己中心的になっていた自分を。
誤解とすれ違いだったのを、後から知った事実ですが、
この時はひたすら悲しくて、泣き続けていました。
運転してる主人は、黙って見守るだけです。
心配かけてごめんなさい。
                               
2クール目の治療内容は1クール目とほぼ同じなので、
未知の不安は減りました。
どんな治療なのか自分の身体がどうなるのか、
初めて体験するのは、本当に不安なものです。

そして研修医が変わりました。
大体2ヶ月毎に科を移り、最終的にはひとつの科に
属するそうです。
H.K氏と入れ替わりに来たのは、高校生に見えてしまうような
お坊ちゃま風でした。
人を見た目で判断してはいけません。
でも何か特徴と言われたら、ぼっちゃん先生としか。
他にたとえようがないのです。
やはり頼りなく映ってしまい、不安は拭い切れませんでした。

1クール目同様、首に静脈カテーテルを入れます。
違うのは今回ドクターではなく、ぼっちゃん先生が一からやるのです。
もちろんドクターが傍で見てますし、助言もします。
仕方ないのでしょうが、全ての処置に時間が掛かりました。
首元ですから、坊ちゃん先生の緊張の息も掛かるわけで。
またとてつもなく力が入ってしまいました。
終った後おどけるように「はぁー力入ったー!手に汗握る!」と私。
周りが和やかに笑ってましたが、本音です。
でも今回はスムーズに薬が流れ、やっと緊張が解けました。


抗がん剤投与の日程が終わり、また徐々に血液細胞が減って行きます。
その頃、主人が持って来てくれたものがあります。
クリスマス時期に合わせて、イルミネーションの写真です。
息子もネットで探してくれたり、撮ってくれた写真も
混じってました。
キラキラと夢が詰まっていて、癒される写真。
それをベッドサイドのロッカーに貼ると、味気ない入院生活が
少し賑やかになりました。
自分で工作した薬入れボックスも、クリスマスバージョンにしたり。
ナース達が「可愛い!」と喜んでくれるのを見て
私も嬉しかったのを覚えています。
                                      
クリスマス当日は、病棟内でサプライズがありました。
夕食後、部屋の明かりが消されたかと思うと、
カーテンを開けて勢い良く「メリー・クリスマース!!」の声。
何とプレゼント持ったサンタクロースが来たのです。
髭に帽子、赤い衣装。
左にサンタさん、右にはトナカイの着ぐるみ。
周りにわらわら寄って来たのは、サンタ帽の担当ナース達。
びっくりして声を失ってる間に「はいポーズ!」と
写真をパチリ。
サンタさんとトナカイは、呼吸器科の先生達だったのです。
血液科のドクターではなかったのが残念でしたが、
これは嬉しいサプライズでした。
凄いのはトナカイの着ぐるみ、先生の自前だそうです。

病棟によってはやらない場所もあるそうなんですが、
小児科にいるような、ちょっと照れ臭い感もありました。
その後の音楽会も、手作りな暖かいものでした。
共有談話スペースに患者さんが集まり、
ナース達がクリスマス曲を演奏してくれました。
フルートやキーボード。
ハンドベルやリコーダーまで。
忙しい中時間を作っては寮で練習したそうです。
こんな体験は初めてで、感動に視界が滲んでしまいました。
呼吸器科の患者さんたちは、年末年始に帰宅する方が多く
残った我々だけが頂いた贅沢な、そしてあったかい心づくしに
しばし入院の辛さを忘れさせてもらいました。


中学時代の友達から、千羽鶴を頂きました。
数人の人達から声が上がったそうで、遠くに住んでる人達まで
届けて下さいました。
なんて素敵なクリスマスプレゼント。
貴重な時間を沢山使って、願いを込めて貰って、本当に感動です。
色とりどりの鶴に皆さんの顔を浮かべ、幾度となく励まされました。
                       
忙しい中何度も病室まで来てくれて、明るい笑顔下さった方々も、
感謝してもしきれません。
本当に私は幸せ者です。どうもありがとう。


大晦日は、深夜零時までのテレビ視聴がこっそり許されたので、
紅白歌合戦をベッドで見てました。
そこに担当ナースがやって来て「東京タワー見に行きましょう」と
誘いがありました。
昼間のうちから「午前零時に2006と表示が変わるの。綺麗だから
体調が良ければ、一緒に行きましょ」と約束してたのです。
忍び足で談話室まで出向き、大きな窓から夜景を見ると、
宝石のようなイルミネーションが、東京タワーを包んでいます。
暗闇に浮かび上がる暖色の明かりは、静かに強く輝いてました。
二人でカウントダウンをして、西暦表示が変わった瞬間
「明けましておめでとう。今年もよろしく」と挨拶を交わし
微笑み合ったのでした。
そしてベッドに戻ってすぐ、家族全員に新年のメールを送りました。
                                             
1クール目と同じく、抗がん剤終えてからきっちり10日後、発熱。
奇しくもその日は、2006年元旦。
この日から何と、20日間も熱が出続けたのです。

病棟内は帰宅されてる方が多く、とても静かでした。
三が日、食事が全てお重箱で来たのには、驚きました。
栄養部からの手作りカード(折鶴つき)も、
大変嬉しかったです。
ちょっとした心配りが、辛い日々も和みます。
ただやはり病院食は、正直言って美味しくはないのです。
ましてや40度近い熱では、僅かばかり箸をつけた程度に終りました。

また浮腫みが酷くなり、利尿剤投与。
熱でふらつく身体に、すぐそこのお手洗いも遠くに感じ
「どうしよう」と思っていると、担当ナースが提案してくれました。
「嫌でなければベッド横に、簡易トイレ置きましょうか」
これには悩みました。究極の選択です。
いくらカーテンで仕切られてるとは言え、同室には他の患者さんもいる。
まぁでも、患者さんはお互いの状況も良く分かってるし、
簡易トイレ置いてる方もいるし、理解はして頂けると思う。
ただ使用中どなたか見えたら困る。
『恥ずかしい』の概念が取れません。
しかし続く40度前後の熱と、薬での頻尿には耐え難く。

しばし悩んでいると、ナースからこう言われて決心出来ました。
「血小板、白血球が少ないですから、ふらついて転んで
怪我をしたら大変です。出血は絶対避けなければ。
使用する時にナースコールしてくれれば、
私や他のナースがカーテン前で立ってますから。
心配なくお使い下さい」
実際はナースコールはしなかったのですが、
数回簡易トイレを使わせて貰いました。
         
病棟内は静かなのですが、ナース達は何やらてんやわんやです。
聞けば院内カルテが電子カルテに切り替わり、
患者も投与する点滴もバーコード読み、
看護記録も全てパソコン入力になったのです。
慣れない状態に更にシステムダウンで大騒ぎ、
本当に毎日がオーバーワークしてるようでした。

たとえシュミレーションを何度試した所で、
実際に稼動してみると、思ってもみないアクシデント、トラブルは
必ずあるもの。
起動に乗るまでは大変ですよね。
そうナースに言うと「患者さん第一に動きたいのに
患者さん以外の事に時間が取られて、もどかしいんです。
今も心配して頂いちゃって、これじゃ病院側はダメなんです」
と苦悩してました。
患者に迷惑かけない為に、ナース達は皆就業時間外に
入力などをしてるようでした。
一体一日何時間労働してるんでしょう。
頭が下がります。

私のベッドに来ては皆、色々お喋りしてくれました。
「熱があるのに愚痴聞いてもらっちゃってすみません」
「ここに来ると落ち着くんですよね」
「私の方が癒されるわぁ」と
口々にそう言って貰えて、嬉しかったです。
私はその何倍も助けてもらってるし、癒されてます。
様々な事に感謝した年末年始でした。




お弁当29

2007-05-15 | お弁当
今日は多忙の為、「闘病記録ノート」の続きアップは
夜の予定です。
よろしくお願いします  



   本日のお弁当

炊き込みご飯
揚げ鶏とナスのみぞれ煮
たらの煮付け
人参・きゅうり・豆の胡麻和え
メロン

訂正

2007-05-15 | 
07-04-28「青い花たち」の中で
名前の誤りがありました。


×金魚草→○ルピナス・テキセンシス・”ブルーボンネット”


×ヤグルマソウ→○矢車菊


×オオイヌフグリ→○オオイヌノフグリ

間違いだらけで本当にすみません。
次回より掲載の際には丁寧、正確な調べ方を
目標にします。

kattさん、いつもありがとうございます。