20年ほどの前、伊豆の八丈島で78歳で亡くなったMさん(女性)。
もともと京都の老舗染物屋の娘さんだったというMさんは、典型的な「お嬢様」。若いころは、皇室の方がしめていたのと同じ帯を使っていたくらい、ものすごい裕福な家柄だったという。
だから性格もおっとり。何があってもクヨクヨしたりはせず、マイペース。
結局、実家は婿に入ったご主人の代で倒産、それで知人を頼って八丈島まで引っ越すはめになったものの、本人はさほど痛手に感じていた様子もない。
ずっと専業主婦で外の社会に出ることもなく、趣味は「着物」。家で暇があったら着物を縫ったりしていた
細身で背は高く、タバコは好きだが、酒は飲まなかった。
近所の人には、よくお金持ちで、たくさんの着物を買い集めていたころの思い出話をしていたという。
息子夫婦と同居していていたが、炊事洗濯は、自分でやっていた。
亡くなったのはちょうど節分の日。
2~3日前から身体の具合が悪くなって、寝たり起きたりしていたMさん、それでも、
「アイスクリーム、食べたいからちょうだい」
と夜の7時くらいには、息子の嫁に食べさせてもらったという。ただ、嫁の方は、2人の孫に、
「きょうは寝ちゃいけないよ。おばあちゃんが亡くなりそうだから」
と声をかけていたようなので、わずかな間に、相当、衰弱していたのかもしれない。
息子は外に出ており、嫁がMさんの寝ている部屋の隣で、何が起きてもいいように待機していた。
午後11時くらいには入り口をノックした上でMさんの部屋に入っていくと、少しのどぼとけを苦しそうにはしたものの、ほとんど眠っているようだった。
それでまた20~30分くらいして、また見に行くと、静かに目を閉じ、「苦しい」ともいわずに、すでに亡くなっていた。
さっそく地元の病院の医師を呼ぶと、死因は「老衰」といわれた。
80歳にもなっていないのに「老衰死」なんて、やはり表面はおっとりしていても、家が破産して八丈島に移り住んできたころなどは、目に見えない苦労をたくさんしてきたのだろうな、と息子夫婦は思った。
(Mさんから学ぶピンコロへの道)
調べてみると、「老衰」で亡くなるのは男性が1%余りなのに対して、女性は約5%。つまりそれだけ女性の方が、全身がバランスよく衰えて死に至る確率が高い。
しかし、意図して「老衰死」を遂げようとするのは、非常に難易度は高いだろう。もはや自分では体のコントロールができなくなったころに、ジワジワとやってくるのだから。
ややネガティブな話だが、さて、現代日本、「老衰死」するほど長生きして、果たして晩年、嬉しいことや幸せに感じたことがどれくらいあるのかな、と考えてしまう。あんまり、ありそうな気がしないのだな。
もともと京都の老舗染物屋の娘さんだったというMさんは、典型的な「お嬢様」。若いころは、皇室の方がしめていたのと同じ帯を使っていたくらい、ものすごい裕福な家柄だったという。
だから性格もおっとり。何があってもクヨクヨしたりはせず、マイペース。
結局、実家は婿に入ったご主人の代で倒産、それで知人を頼って八丈島まで引っ越すはめになったものの、本人はさほど痛手に感じていた様子もない。
ずっと専業主婦で外の社会に出ることもなく、趣味は「着物」。家で暇があったら着物を縫ったりしていた
細身で背は高く、タバコは好きだが、酒は飲まなかった。
近所の人には、よくお金持ちで、たくさんの着物を買い集めていたころの思い出話をしていたという。
息子夫婦と同居していていたが、炊事洗濯は、自分でやっていた。
亡くなったのはちょうど節分の日。
2~3日前から身体の具合が悪くなって、寝たり起きたりしていたMさん、それでも、
「アイスクリーム、食べたいからちょうだい」
と夜の7時くらいには、息子の嫁に食べさせてもらったという。ただ、嫁の方は、2人の孫に、
「きょうは寝ちゃいけないよ。おばあちゃんが亡くなりそうだから」
と声をかけていたようなので、わずかな間に、相当、衰弱していたのかもしれない。
息子は外に出ており、嫁がMさんの寝ている部屋の隣で、何が起きてもいいように待機していた。
午後11時くらいには入り口をノックした上でMさんの部屋に入っていくと、少しのどぼとけを苦しそうにはしたものの、ほとんど眠っているようだった。
それでまた20~30分くらいして、また見に行くと、静かに目を閉じ、「苦しい」ともいわずに、すでに亡くなっていた。
さっそく地元の病院の医師を呼ぶと、死因は「老衰」といわれた。
80歳にもなっていないのに「老衰死」なんて、やはり表面はおっとりしていても、家が破産して八丈島に移り住んできたころなどは、目に見えない苦労をたくさんしてきたのだろうな、と息子夫婦は思った。
(Mさんから学ぶピンコロへの道)
調べてみると、「老衰」で亡くなるのは男性が1%余りなのに対して、女性は約5%。つまりそれだけ女性の方が、全身がバランスよく衰えて死に至る確率が高い。
しかし、意図して「老衰死」を遂げようとするのは、非常に難易度は高いだろう。もはや自分では体のコントロールができなくなったころに、ジワジワとやってくるのだから。
ややネガティブな話だが、さて、現代日本、「老衰死」するほど長生きして、果たして晩年、嬉しいことや幸せに感じたことがどれくらいあるのかな、と考えてしまう。あんまり、ありそうな気がしないのだな。