ピンコロ往生伝

ピンコロで逝った方々のエピソードを集め、ぜひ自分もピンコロで逝きたいと願うブログ。

「よかったね、ブスに似なくて」

2016-09-26 00:09:22 | 日記
 40年ほど前に、80代で亡くなったAさん(女性)。
 群馬県で息子夫婦や孫たちと三世代同居をしていた。もともとは農家の嫁で、一応、専業主婦とは言いつつ、もちろん畑仕事は家族でやっていた。
 すでに40代でご主人をなくし、それからは中心となって一家を切り盛りした半生だ。
 性格はおおらかで、体形は小太り、ポッチャリ。田舎の朴訥なおばあちゃんという感じだけど、たまになかなか気の利いたジョークも飛ばす。
 娘はすでに、別のところに住んでいたのだが、その娘、つまり孫娘の顔をしみじみと見ながら、
「よかったね、ブスに似なくて」
 と言い放ったり。
 ずっと死ぬ直前まで、体が動く範囲で畑仕事もしたり、家の掃除もしていた。
 とはいえ、寝るのは一人の、じぶんの部屋。本人は、極力、息子夫婦や孫の生活には入り込まないように考えていたふしもある。
 それで、ある朝、普段なら早く起きてくるAさんが、いつまでたっても起きてこない。おかしいな、となって部屋に行ってみたら、すでに亡くなっていたという。
 死の知らせを聞いて駆け付けた娘は、
「誰にも看取られずに死なせてしまうなんて、かわいそう」
 と号泣し、同居していた自分の弟にあたる息子とその家族に、「おばあちゃんを大事にしてなかったんじゃないの」と責めたという。

(Aさんから学ぶピンコロへの道)
私は、娘さんの息子さん夫婦に対する攻撃は、完全に的外れだと思う。
 おそらくAさんは、同居はしているものの、出来るだけ息子さん夫婦には面倒をかけたくないし、本当なら一人暮らしの方がよかったと考えていたのではないか、とすら推測する。
 ある調査で、「独居老人」と、家族と同居する老人のどちらがより「幸せ」を感じるかと聞いたら、意外や意外、独居の方が「幸せ度」が高かった、なんて結果が出たのを耳にしたことがある。
 そらそうだろう。嫁や孫に気を使いながら生きているより、体が効くなら、一人暮らしでノビノビとやっていた方がストレスもたまらないし、ずっと快適だ。世の中、よく悲惨なものとして「独居老人死亡」なんてあげるが、本人はそれで満足だったのかもしれない。
 「誰にも看取られないピンコロ死」。これが不幸だったとはとても信じられない。


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