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阿弥陀像出てゆく阿弥陀花の昼 重治
「うまい、この句に座布団1枚上げましょう」
「いや、阿弥陀は無量寿仏だから、時間や空間などには左右されないはずだ」
「いや、阿弥陀は私達全てを遍く照らして、天上界にいるんだ」
「いや、阿弥陀像は、人間が想像した形に過ぎず、阿弥陀はいない」
まあまあ、議論はそのくらいにして、まとめてみましょう。作者の句意は、「阿弥陀像に阿弥陀様が在わすならば、きっと像を抜け出て、満開の桜を観に行かれることでしょう」という想像を「出てゆく」と断定したのです。
「とすると、夜になったら、戻るんですかね?」
「きっと夜桜も見るから、戻るのは深夜じゃないの?」
「花が終わるまで、私だったら戻らないよ」
「そうね、北海道まで、ずーっと花の旅をするかもね」
「いいなあ、阿弥陀様って」
「・・・・・・・・・・・」
クロモジ(黒文字)