不育症の記録 あなたの産声を

6度目の妊娠で第一子を出産しました。記録を残すことで誰かの助けになればと思います。
旧 不育症記録 虹の向こう側

30・涙

2018年03月12日 | 3度目の妊娠
手術の後、私は4人部屋に入りました。
婦人科の患者さんばかりの病室でした。
お向かいのベッドの患者さんと、偶然名前が一緒だったことから仲良くなって、
それから担当の若い看護師さんとも仲良くなりました。

お向かいの人には中学生の娘さんがいたのでその話を聞いて、
その人が今回子宮を取ったことについて、辛い心情を聞きました。

担当の看護師さんはフレンドリーで、婦長が日勤ばかりしてる、私は夜勤○回も入れられた!とか
そんな愚痴をよく聞いていました。

傷の治りは早い方だったと思います。
手術から3日後の夜にお手洗いに行った時、自力でまっすぐ歩けない人を見つけて病室まで支えて送りましたが、
その人は私と同じ日に、同じ腹腔鏡下手術を受けたとのことでした。

話相手もいるし、夫も毎日病院に来てくれました。


同じフロアに産婦さんもいて、昼間は赤ちゃんの声がよく聞こえましたが、
私はこれまで妊娠初期でだめになるパターンばかりで、
胎動を感じたり出産準備をする時期まで進んだことがなかったので、特に辛いとは感じませんでした。


退院まであと2日。

手術の日までの毎日の緊張感が嘘のように、穏やかになっていました。
私が安静にしてる間に、気がついたら季節が変わりつつあって、自分がどれほど必死だったのかを感じました。


もうすぐ退院…と思っていた時に、看護師さんから呼ばれました。
手術についての説明を先生から聞くのだそうです。
わかりました、ありがとうございますと返して、私は指定された部屋に向かいました。


手術に立ち会った先生から、間違いなく子宮外妊娠だったこと、順調に手術が終わったこと、
今後の妊娠のために残った卵管の通りをチェックして問題なかったことを伝えられました。
それから突然モニター画面を向けられて「はい、ここです。間違いなく子宮外妊娠ですね」と言われました。

何も考えずにぼんやり画面に目を向けると、手術で卵管を摘出する瞬間の映像でした。


お世話になりました、ありがとうございましたと頭を下げて、私は部屋を出ました。


通路を歩きながら、帰りにお水を飲んで行こうかと考えました。
お水を飲んで、病室に帰ったらさっきまで読んでた本の続きを読もう。
今日夫が続きを持ってきてくれるって言ってたから…。

ああ、そっか。さっきの映像で、私は初めて自分の子供を見たんだ。

そう思って歩いていた時、突然目の前が歪みました。



気がついたら私は、人目も憚らず、その場で声を上げて泣き崩れていました。

お向かいのベッドの人が走ってきて、抱き起こして病室に連れ帰ってくれるまで。