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レイアウト展 (タナカ)
2008-10-06 02:35:54
先日、東京都現代美術館で催された、「スタジオジブリレイアウト展」をみてきた。
「アルプスの少女ハイジ」から「崖の上のポニョ」まで、宮崎・高畑両監督の作品と、ジブリ作品のレイアウトを展示したもの。

レイアウトというのは、どういう背景で、キャラクターをどううごかすか、その指示が書かれた絵、とでもいえるだろうか。
そもそもアニメーションを製作する作業工程上つくられるもの。
いってみれば、そのカットをどう成り立たせるかという絵で描かれた仕様書のようなものだ。
仕様書が展示されていると思えば、この展示の、前代未聞のマニアックさがわかるかもしれない。

さて、じっさいにみてみると、レイアウト用紙というのは案外小さいものだった。
ただ、これは、額に入れられ壁に展示されているからで、机の上に置いたらまたちがうのかも。

驚いたのは「おもひでぽろぽろ」のレイアウト。
ほとんど鉛筆画と思うような完成度。
作品の「下書き」がこんな密度なのかとびっくり。
農作業をしているおじいちゃんの表情がよかった。

よく高畑作品は客観的といわれるけれど、こうしてレイアウトをみると、それが如実にわかる。
高畑作品は、真横からすこし引いたカメラアングルが多い。
ひょっとすると、そんなカットばかりを展示したのかもしれないけれど。

物量がもっとも多かったのは「千と千尋」。
天井までとどかんばかりにレイアウトが展示されている。
この展示室に入ったひとは一様にうわーと声をあげていた。

レイアウトはいろんなひとが描く。
だから、おなじキャラクターを描くとはいえ、それぞれタッチがちがっている。
「千と千尋」のボイラー室関係は、とくにタッチがちがっていて面白い。

レイアウトにも、技術的なこと以外の書きつけがしばしば書かれている。
「もののけ姫」の最後のレイアウトには、「山本さまよろしく。自由にやってください」。

「母をたずねて三千里」のレイアウトにはこんな七五調の書きつけも。
「レイアウトそのままやると失敗す」。

レイアウトをみていると、完成した画面はどうなっているんだろうと知りたくなる。
展示には、それに応えた部屋もあった。
レイアウトと、完成した映像をならべてあるというもの。
あれだけの密度で描かれ、指示や注意書きもたくさん書かれたカットも、映像でみるとほんとうに一瞬。

みにきていたお客は若いひとが多かった。
こんなマニアック企画にも、大勢のひとがきているとは、ジブリ人気はたいしたものだ。

カタログも購入。
表紙は「もののけ姫」のレイアウト。
鉛筆の線が躍動している。

内容は、まずレイアウトというものについての説明などの文章。
高畑勲、大塚康生、小黒祐一郎の文章が面白い。
とくに小黒さんの、「宮崎駿のレイアウトは映画的な空間を設計したものであり、それと同時に「いい画」なのだ」という結論には、じつに納得させられる。

カタログには、展示されていた膨大なレイアウトのほぼすべてが収録されている。
レイアウトはカットについての仕様書なのだから、なぜこの場面をこういうレイアウトにするのかという意図が、つねに隠されていると思う。
収録されたレイアウトすべてにとはいわないけれど、個々のレイアウトにも多少解説があると、より嬉しかった。


 
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