答えは現場にあり!技術屋日記

「三方良しの公共事業」をモットーに、辺境の高知のそのまた辺境から、土木技術者のオジさんが泣き笑いの日々を届けます。

年のはじめに『石工の話』

2019年01月06日 | 土木の仕事

昨年とある会合で、「スイスでは技能労働者のステータスが高く経済的にも豊かだ」という話を聞いた。「みんなのために働く人は尊い」という考えがあるのだという。それを受けた別の参加者が、わたしから聴いて感銘を受けた話だが、と前置きして『石工の話』を持ち出し、自説を披瀝していた。

『石工の話』、宮本常一『庶民の発見』のなかにその小話はある。


庶民の発見 (講談社学術文庫)
宮本常一
講談社


このブログでも何度か紹介しているし、『信頼をつくる「三方よし」のモノづくり』と題した拙講では、昨年来、わたしたちが生業(なりわい)とする「土木の仕事」における「信頼」を考えるうえでの重要なポイントとして、その構成上なくてはならないものとなっている。

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「金をほしうてやる仕事だが決していい仕事ではない。・・・泣くにも泣けぬつらいことがある。子供は石工にしたくない。しかし自分は生涯それでくらしたい。田舎をあるいていて何でもない見事な石のつみ方をしてあるのを見ると、心をうたれることがある。こんなところにこの石垣をついた石工は、どんなつもりでこんなに心をこめた仕事をしたのだろうと思って見る。村の人以外には見てくれる人もいないのに・・・」と。(P.24~25)

「しかし石垣つみは仕事をやっていると、やはりいい仕事がしたくなる。二度とくずれないような・・・・・。そしてそのことだけ考える。つきあげてしまえばそれきりその土地とも縁はきれる。が、いい仕事をしておくとたのしい。あとから来たものが他の家の田の石垣をつくとき、やっぱり粗末なことはできないものである。まえに仕事に来たものがザツな仕事をしておくと、こちらもついザツな仕事をする。また親方どりの請負仕事なら経費の関係で手をぬくこともあるが、そんな工事をすると大雨の降ったときはくずれはせぬかと夜もねむれぬことがある。やっぱりいい仕事をしておくのがいい。おれのやった仕事が少々の水でくずれるものかという自信が、雨のふるときにはわいてくるものだ。結局いい仕事をしておけば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれるものだ。(P.25)

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あらためて『石工の話』を読んでみると、今までそれほど気にはとめてなかった聞き書きのうしろに記された著者の感想に目が止まった。

恥ずかしながら、すぐには腑に落ちてこない。

何度か繰り返して読んでみる。

じわじわと腑に入ってきた。

こんな文章だ。

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だれに命令されるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さを、この人たちは自分の仕事を通して学び取っているようである。権威の前には素直であるが、権力には屈しない。そういう人間的な生き方をもってみると、この人たちにとって恐ろしいものは権威であり真理だけであるようだ。そうしたものをこの人たちは無意識のうちにもっている。そしてその総和が目のまえにある「かたちある文化」なのだと思う(P.26)

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「石工」たちの総和としての「かたちある文化」、

その末座に連なっている者としての自分、

少なくともそういう意識だけは持ちつづけていきたいと、

そう思った。

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