ひょんなことから知った人に、知人を介して「会ってもらえないでしょうか?」と打診した。
結果は、快諾とはこういうことを指して言うのだろうな、というほどの見事な快諾。
ほどなくして、先方からダイレクトメッセージが届いた。
彼いわく、このブログをずっと読んでくれているのだという。そして、わたしと会えるのが光栄だという。
この辺境の土木屋が、「光栄」などという晴れがましい言葉をいただくに相応しい人間かどうかは置いといて、さっそく、わずかなキーワードを頼りに過去コメントを探してみると、それほど時間がかからずに見つかった。そりゃそうだ。そんなにたくさんコメントが来るブログではない。と同時に、わたしが書いたテクストに対してコメントをしてくれようかという奇特な人はめったにいるもんではない。そんななか、どうやら何度かコメントをしてくれた人だったようだ。
そしてその最初は、こんな稿に対してだった。
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相手のチカラを出させないようにする。
そういう戦術が、サッカーなどのチームスポーツで、勝つために採用されるのはさほど珍しくない。
チームスポーツに限らず格闘技などでも、相手のチカラを削いで勝つ、という戦い方を得手とする選手は少なからずいる。
こと「勝ち負け」にこだわった場合、それは立派な戦術であり、他人がとやかくいう筋合いのものではない。
(エンターテイメントとしてのスポーツを楽しむという観点からすれば別ですが)
だが、ルールを改変するというのはどうだろう。
またまたスポーツの例を出すと、かつての水泳(田口信教しかり、鈴木大地しかり)や、かつてのノルディック(ジャンプしかり、複合しかり)のように、優秀な日本人選手が出現して競技を席巻すると、すぐさまルールを改変して勝たせまいと策略をめぐらす(どこの誰、とは特定できないが)欧米の輩のように。
そういう戦術を採用する人が、どうやら私たちの業界にもいるようだ。
せっせせっせと陳情とやらにいそしんで、今、優位に立っているものたちのチカラを削ごうとする人たちである。
だが、制度やシステムの改変は、それがどう転ぼうと、公共事業の請負者たる私たちにとっての宿命だ。
なにをどういおうと結果的には、変わったなかで泳ぎ切っていかなければならないのが現実である。
そのために肝要なのは、変化に対応できる柔軟な発想と、変化するなかでも変わらない理念を持ちつづけ行動していくこと。
そしてその繰り返しのなかから、それを実行できる人材を育てていくことではないだろうか。
制度改変についてのイニシアティブは施工者の側にはない。
バッジをつけた先生にお願いして、たとえいっときある例でそれが成功裏に終わったとしても、あくまでそれは、官の側が官にとっても都合がよかったから乗ったというに過ぎない。
繰り返し言う。制度の改変やシステムの改変は、それがどう転ぼうと、私たちにとっての宿命なのである。
もちろん要望をあげること、手練手管を使って制度を変えようとすることは、戦術として否定されるべきものではない。おおいにやったらよろしがな、である。
だが私は、そんなことよりも、内なるチカラを磨くことを優先したい。
地域を向いた仕事をしつづける。そしてそこから生まれた信頼をストックしていく。
今の「勝ち負け」というフローに一喜一憂し、そこを勝ち切る戦術を考え実行していくことは、番頭たる身として当然のことなれど、「信頼のストック」にはこだわりつづけたいと思う。
そのうえででき得れば、「だって私は技術を売ってるんだもの」、とにっこり笑って対応していくぐらいの心持ちでありたい。
とはいいつつも内実は、切歯扼腕、涙がちょちょ切れながら、青息吐息でついて行くのが精一杯だ。内々では、ああだこうだと愚痴ってばかりもいる。
だが、困った困ったと頭を搔きながらでも、そんな心持ちを忘れてはならないと思っている。
信頼は現場から生まれ、そしてその信頼はストックされる。
笑顔でたたかえ、えぶりばでぃ。
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「私たちも」で始まるこれに対するコメントの最後はこう締めくくられていた。
「常に自分達の武器を磨いて真面目に努力していたら、自然と道が開かれていました。」
刹那、坂本九がナレーションをしていた『新八犬伝』の名台詞が思い浮かぶ。
「因果はめぐる糸車、明日はわからぬ風車、臼で粉引く水車、我が家の家計は火の車、車は急には止まれない、すべて世の中堂々巡り・・・」
いやいやアレはよくないたとえ。この場合にアレはふさわしくない。と苦笑しつつかぶりを振ったわたしに、すぐ別の言葉が降りてくる。
袖触れ合うも他生の縁。
Webでのささやかな触れ合いが、まわりまわってあらたな縁となる。
発信しつづけることが、そして動きつづけることが、またあらたな縁を生み出す。
辺境の土木屋61歳、少しばかり感動している。
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