昨年の今日、こんな小文を書いた。
題して『2017年のバレンタイン』である。
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「ねえねえせんせい、ちょっと来て!」
と、なんだかとても楽しそうに呼ぶ声の主は、和太鼓教室の低学年3人娘。
いそいそと歩み寄ると、
「チョコもろうた?」
と訊いてくる。
「バレンタインデーはまだやんか」と返すわたしに、彼女らは、平日は学校へチョコレートを持っていけないこと、よって直前に配ること、などを説明してくれた。で、もういちど訊いてくる。
「ほんで、チョコもろうたが?」
「もらわんよ。くれる人、だ~れもおらんもん」
「もろうたことあるが?」
「あるよ。これでも中学校のときはモテたがぜ~」
「じゃあ最高何個もろうたことある?」
「5つ、かな」
「え~!少ない!!」
「むかしは義理チョコとかなくって本命の人にしかあげなかったの」
「本命ってなに?」
「ホントに好きな人のことよ」
「え~!5人もおったが!!」
「違う!おんちゃんを好きな人が5人おったが!!」
「え~!うっそー???!!!」
「(^o^)v」
なんてバカバカしい会話を繰り返しながら、彼女らの両手は後ろ手になったまま。ときおりチラチラと見えるその手には、なんだか銀色の包のようなものが見え隠れしている。
「ははあ、さてはオレにプレゼントだな」と見当をつけたわたし。「おんちゃんにチョコくれるが?」と切り出してみるが、「あまったらね」とつれない返事。「じゃあその手に持っているのは何なんだよ」と思いつつも口には出さず、のらりくらりとわたしをかわす少女らにつき合って、ひとしきり。そのうち彼女らは両の手に持つものを隠しもせず、身ぶり手ぶりで話をしだす。だが、いっこうに差し出そうとはしないことに、とうとうしびれを切らしたわたし。
「チョコ、もろうちゃうぜ」
単刀直入の物言いがお気に召さなかったのだろうか、それともハナからくれる気などなかったのだろうか。
「あまったらね~」
「余分ができたらね~」
などと口々に言いつのりながら帰路につく彼女らの背中を見送りながら、手玉に取られたオジさんはつぶやく。
「女は魔物・・・」
完敗 ^^;