つれづれなるまま映画を観て過ごす「ベッチーの映画三昧日記」

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「デトロイト」

2018-02-05 19:32:06 | goo映画レビュー
●ベッチー的映画三昧日記
 人種差別が起因となった悲惨な事件を今のアメリカに問う「デトロイト」

 「ハート・ロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」など政治色の強い映画を送り続けている女流監督キャスリン・ビグローが、デトロイトで1967年に発生した暴動時に実際にアルジュ・モーテルで起きた殺人事件を映画化したもの。人種差別が起因となった悲惨な事件を今のアメリカに問うところにビグロー監督の強い主張を感じる。

 黒人たちの不満による暴動発生から2日目の夜、軍、州警察、市警察などが厳しく警備する町からやや離れたモーテルに黒人や白人の若者たちが集まりパーティなどに興じていた。ある黒人の若者が差別への反抗と遊び心から空砲のおもちゃの銃を警備中の軍隊に向かって撃った。現場はたちまち大混乱となり、銃声の通報があったモーテルに警察や軍が乗り込で来た。日頃から黒人への取り締まりに異常な何人かの白人市警官が捜査手順を無視し、発砲者探しのため、宿泊客に不当な尋問を始める。やがて、極度の緊張の中、取り調べは常軌を逸していく…。

 一種の群像劇だが、その中でも光ったキャストをピックアップしてみる。
 黒人蔑視の警官クラウスを演じるウィル・ポールターの子供っぽく個性的な顔が狂気を帯びていく過程がとても不気味だ。それは結局、誰もが彼の側に立つ可能性はあるということを意味するからだ。
 尋問の様子を見守り、なんとか黒人たちを助けようと警察官や軍人との仲裁役となる警備員ディスミュークス役で「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のジョン・ボイエガが出ている。非常に現実主義で正義感の強い彼が、事件後の捜査の過程で自分が殺人の容疑者にされ逮捕されたときに見せる後悔の念というか絶望感に打ちひしがれた表情が何とも言えない。
 また、歌手として将来を嘱望されていたアルジー・スミス演じるラリーは、この夜の出来事から白人と警官への不信から立ち直ることは出来ずに、他の仲間たちがプロになり日の当たるスポットライトを浴びる中、教会の聖歌隊員として一生を終えることになる。

 エンドクレジットで実在の彼らが事件後どのような暮らしぶりをしたのかが語られるが、誰もが重い十字架を背負ったままその後生きていったことを知り、胸につかえたものが楽になることはなかった。

 今、アメリカの映画界や音楽界では反トランプメッセージが強くなっている。本作もそのような流れからの1本と言えないこともないが、トランプはその発言から矢面にたっているだけで旗印に過ぎない。発言はしなくてもトランプと同じような考えを持っている人たちがアメリカを動かしているという事実もある。もともとアメリカという国に根付いている差別的制度のシステムが変わっていかない限り、黒人からヒスパニック系に変わっただけで歴史は繰り返されるのかもしれない。
 
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