プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

クラビー3 モーケン人

2007-03-27 05:01:58 | 東南アジアカヤックトリップ

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(3月12日付「帰ってきました」という記事から始まる旅記録の続きです)

 クラビ川河口のマングローブジャングルを掻き分けパドルを進ませると、しばしモスリム系漁民、モーケン人の集落が出てきます。モーケン人は古来、カバンと呼ばれる家船で生活し、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー沿岸を季節によって旅する漂泊の民族でしたが、タイでのモーケン人は大部分が定住しているようです。

 ミャンマーのメルギー諸島やインド領のアンダマン諸島、ニコバル諸島という多島海にいるモーケン人は、いまだに漂泊生活していると言われています。海との共生生活をしているだけあって、一説によれば2004年暮れのスマトラ沖地震の際にも、潮の流れの変化や波うねりのかすかな異変にいち早く気づき、みんな高台に素早く避難したので、大津波がやってきたにもかかわらずほとんど人的被害がなかった、とも言われています。特にミャンマーは軍事政権でなかなか情報が入ってこないため、「謎が謎を生む」という感じですが、海の観察眼の鋭さによってかなりの部分被害が軽減されたというのはどうやら本当のようです。少し前の「ナショナル・ジオグラフィック」誌にも取り上げられていました。http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/feature/0507/index4.shtml 参照。

 で、クラビー川河口付近の定住モーケンの集落に近づきますと、まずどこかに設置された町内スピーカーのようなものからコーランの独唱が聞こえてきます。マングローブやヤシの木が熱帯のギラつく太陽光線に照らされる中コーランが流れるという図柄は、なんともシュールに思えたりしましたが、よくよく考えると世界でイスラム教徒が一番多いのは東南アジアです。インドネシアもそうですが、東南アジアのイスラム教徒はイスラム以前の精霊崇拝も残しつつ、なんとなくうまい具合に混交していることが多いようです。余談ですがぼくなりに色んなものを見てきて、混交性こそがアジアのアイデンティティではないだろうかと思うようになりました。混交性とは要は多様性を重んじる、他者を尊重する、異文化をも受け入れるという発想のことで、それはさらにアレンジしだいでもっともっと21世紀的な素敵な叡智になっていくんだろうと思います。

 水際に立てられた高床式の家からおっさんらがこちらに手を振り「ハロー」と声をかけてきます。そんな感じで海からは結構人懐っこい人たちでしたが、逆に上陸してあたりを歩くと結構「なんだこいつは?」みたいな感じで、妙な視線を浴びせかけられました。ヨソモノはめったに来ない場所なのでまあそんなもんでしょう。水牛、ヤギ、ニワトリ、アヒルなどがそこらを歩き回り、子供らが粗末なゴムまりのようなボールでサッカーをし、だだっ広い草原のような広場ではおっさんらがタコ揚げしていました。みんな真剣な顔しておかしいんだけれど、どうも東南アジアでは凧揚げは大人の遊びのようです。

 別に「海洋民~!」「海洋漂泊民の末裔~!!」って感じではなかったです。まあ人は民族とかそういうものよりも生活環境のほうが影響が大きいんでしょうね。それからどうも東南アジア全般に目に付くことですが、みんなゴミをそこらにポイポイ、海にポイポイ、すべては水辺に垂れ流しというシーンをまのあたりにしてきました。これだけはいったい何考えてんだろうかと思いました。

 なお、ネットでちょっと調べていると、なんとミャンマーのメルギー諸島に行くシーカヤックツアーがプーケットから出ているのを発見してしまいました。http://www.seal-asia.com/seakayaking/index.htm すげえなと思いました。誰かぜひ行ってみてきてください。

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