プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

広いアジア

2009-12-13 18:57:24 | インポート
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 今年の2月に行ったオマーンへのカヤックトリップの際に中継点として立ち寄った場所で、またカヤックトリップにてヨーロッパ、アフリカ方面へ飛ぶ際のハブ基点としてこれからも立ち寄る可能性の高い砂漠の都市・・・。ドバイのバブルが崩壊したけれどそのニュースを聞いてまず、世界各地からの出稼ぎ労働者たちはいったいどうなるんだろうかと思った。ドバイではドバイ人の占める割合が数パーセントしかなく、人口の90%以上が出稼ぎ移民で形成されている。とくに単純肉体労働者の人たちが多数を占めるが、彼らは驚くほど安い賃金で仕事している。ぼくが知り合ったレンタカー配車係のバングラデッシュ人のニイチャンは日本円にして月給三万円ほど、また安ホテルの住み込み従業員のインド人の兄ちゃんは二万円ほどと言っていた。相場的にも実際、そんなものらしい。そしてそこから故国の家族に仕送りをするようで、全くすごい世界だなと思ったが、それでも国に帰れば全く現金収入がなくそれよりはここで働くほうがマシだということだった。こっちが日本人だと言うと、どうやったら日本で仕事できるのか、オレを雇ってくれないか、と簡単にかつ真剣に迫ってこられて困ったものだった。日本の若者よりはるかに忍耐強く働き者の彼ら。アイランドストリームで雇えるものなら雇いたいなとか、そうなったらどうなるだろうな、とか想像したこともあったと思い出した。

 街を歩くと実にいろんな国籍の人がいた。一番多いのがインド、パキスタン、バングラデッシュ系の人たち、そこにアフリカ各地の出身者が続く、そして中国系、フィリピン系、ロシア系、また観光客や知的労働者であろうヨーロッパ系白人もわんさといる。あらゆる人種がミックスしている部分はすごく新鮮で面白いなと思ったが、その表皮を一枚引っぺがせば月給3万円の世界だったわけだ(逆にとんでもない大金持ちもいる)。

 いびつに歪んだ部分がたくさんあるドバイだが、今年ドバイとオマーンに行き「ああ、中東はアジアなんだな」と感覚的にはっきり認識させられたこともあった。ドバイ人もあるいはオマーン人も、自分たちはヨーロッパ人と違う、アジア文化圏の人間だと自覚しているフシがあるし、そういやサッカーのワールドカップの予選でも、中東各国はアジア・ブロックに属している。そして中東を介してアフリカがすぐそこに肉薄している感覚があるし、そのすぐ上に行くとヨーロッパが身近に位置するフィーリングもある。ちなみにカタール資本のテレビ・ニュース番組「アル・ジャジーラ放送」ってのがあるんだけど、それはまさにそういう視点というか世界観で作られている番組で、非常に面白い(BBCやCNNの中東版みたいなもので、しかしもっとジャーナリスティックで興味深い番組。実際面白みのなくなったBBCなどから転職してきた気骨ある記者も多いらしい。ホテルの部屋で毎晩見続けていたが、パレスチナ・ガザ地区のサーファーを取り上げる番組とか、エイジアン・ダブ・ファウンデーションのメンバーがセネガルのスラム街の音楽シーンを取材する番組とか、ほんとにすごいと思った。ネット上でもlive stationというサイトから無料視聴できる)
 アジアは広くて、さらに中東というハブを通してアフリカ、ヨーロッパと広がっていく文化のスジがあるなあ、そこには興味深いものがあるなという想いはドバイショックのあとでも心から消えないようだ、というかその感覚を思い出したのだった。

 ついでに以前、井筒俊彦という哲学者が、イスラム教の「アラー」とは仏教の「真如」と深いところで全く同じである、と言っていたことも思い出した。

 20,30年とかではなく、100年とか200年とか、あるいは500年、1000年とかそういう単位で考えてみると、行きつ戻りつしながらもいずれ世界から国境がなくなっていく方向に向かっていくことは、まず間違いないだろうな、とか、時々考えたりすることがある。そうなると世界各地の固有文化の消滅が危惧されるけれど、逆にぼくはそれによって各地固有の文化が自覚され、再評価されていく力学が働くようになるんじゃないだろうかと思う。ぼくは、ごくたまにだが想像する。セネガル人やインド人やロシア人がシーカヤックで湯浅湾のかるも島に渡り、たとえば明恵上人の偉大さについて哲学したりするシーンを。

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