漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「乃ダイ」<弓の弦をはずした形> と「仍ジョウ」「扔ジョウ」「朶ダ」「孕ヨウ」

2018年06月08日 | 漢字の音符
 ダイ・ナイ・の  ノ部  

解字 弓の弦をはずした形。弦を張らずそのままにしておくことをいう[字統]。しかし、元の意味でなく仮借カシャ(当て字)されて、接続の助字・二人称などとして用いられる。
意味 (1)すなわち(乃ち)。接続の助字。「乃至ナイシ」(~から~まで。または) (2)なんじ(乃)。おまえ。「乃公ダイコウ」(なんじの公(きみ)の意で、おれさま。わが輩)「乃父ダイフ」(父が子に対して自分をいう語) (3)[国]の(乃)。助詞「の」の当て字。また、人名に使う。「志乃 しの」(人名)「千代乃ちよの」(人名)
  
イメージ
 「弓の弦をはずした形」
(乃・仍・扔)
 「同体異字」(朶・躱・孕)
音の変化  ダイ:乃  ダ:朶  タ:躱  ジョウ:仍・扔  ヨウ:孕

弓の弦をはずした形
 ジョウ・ニョウ・よる・よって  イ部
解字 「イ(ひと)+乃(弓の弦をはずした形)」 の会意。人が、弓の弦をはずした形をそのままにすること。元のかたちをそのまま守ることから、古い習慣などに、よる・したがう意となる。また、古いものが、かさなる意となる。
意味 (1)よる(仍る)。したがう。「仍旧ジョウキュウ」(古い習慣による=仍慣ジョウカン。今までどおりにする)「仍然ジョウゼン」(元どおり。今までどおり) (2)かさねる。かさなる。元のものにかさなる。「仍世ジョウセイ」(代々。累代)「仍孫ジョウソン」(本人から数えて七代目の孫。子・孫・曾孫ソウソン・玄孫ゲンソン・来孫ライソン・昆孫コンソン・仍孫ジョウソンとなる) (3)よって(仍って)。なお。しきりに。
 ジョウ・ニョウ・すてる・なげる  扌部
解字 「扌(て)+乃(=仍。古いかたちをまもる)」 の会意形声。古い習慣を手ですてること。すてる・なげる意となる。
意味 すてる(扔てる)。なげる(扔げる)。ほうる。「扔下ジョウカ」(なげおろす。うちすてる。)「扔棄ジョウキ」(すてる。扔も棄も、すてる意)

同体異字
朶[朵] ダ・タ・えだ  木部  

解字 篆文第一字(六書通)は、禾(稲の穂が実って垂れた形)の穂が垂れる方向が逆向きの字。禾は、実った稲や穀物の意だが、垂れる方向を逆向きにして、垂れる意としたと思われる。篆文の正字は第二字の「几+木」に変化した朵になった。「乃+木」の朶も同字で、日本では朶が正字で、朵は異体字となっている(中国は逆)。意味は「たれる」だが、下に木がつくので木の枝が垂れる意でも使われる。なお、朶の上部の乃は、字の構成要素として使われているだけで、乃ダイ(弓の弦をはずした形)との関係はない。
意味 (1)えだ(朶)。垂れ下がった枝。花のついた枝。「万朶バンダ」(多くの垂れ下がった枝)「万朶バンダの桜」「千朶万朶センダバンダ」(たくさんの花が咲き乱れていること) (2)しだれる。枝や花・実などが垂れ下がる。 (3)垂れ下がっているもの。「朶雲ダウン」(垂れ下がった五色の雲)「耳朶ジダ」(耳のたれさがったところ。みみたぶ)
 タ・かわす  身部
解字 「身(からだ)+朶(垂れる枝)」 の会意形声。垂れる枝のようにゆれ動く身体。
意味 (1)かわす(躱す)。身をかわす。さける(躱ける)。かくれる。「躱避タヒ」(身体をかわして避ける。責任を避けて逃げる)「躱蔵タゾウ」(にげかくれる) (2)み。かわし身。
 ヨウ・はらむ・みごもる  子部

解字 甲骨文は、人がお腹に子を身ごもっている形の象形。篆文は「人の変形+子」となり、現代字の孕ヨウになった。孕ヨウの上部の乃は、人の変形字であり、乃ダイ(弓の弦をはずした形)との関係はない。
意味 はらむ(孕む)。みごもる(孕る)。妊娠する。「孕女うぶめ」(妊娠中の女性=産女うぶめ)「孕婦ヨウフ」(妊婦)「懐孕カイヨウ」(みごもること。=懐妊)

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