漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「襄ジョウ」  <ゆたかな耕作地>

2018年02月28日 | 漢字の音符
 私はこれまで襄の金文の字形を解釈できず、篆文だけで解字していたが、このたび仮説ではあるが字形解釈ができたので、甲骨文から金文・篆文を含む字形の流れをたどってみたい。

襄[㐮]ジョウ  衣部

甲骨文は窪地、金文は豊かな耕地
 甲骨文は皿の略体を上にのせた人の形。意味は地名で、そこは田猟地(狩猟地)だという[甲骨文字辞典]。皿は、おそらく窪んだ地形を意味し、これに人がついて窪地にすむ人の意であろう。窪地に集まる動物を狩猟した地だと思われる。金文第1字になると、この田猟地は姿を変える。皿人の左に土がつき、右に攴ボクがつく。攴は手に道具をもち打つ意だから、ここの土地が道具で耕され始めたのである。金文第2字は、上下に分離した衣のなかに、左から土、皿人(皿上の左右がふくらむ)、又(手)、そして皿の上に小さな〇(意味不明)がつく。衣は袋で、この耕作地にまく種をいれる袋を示したものであろう。この地は土壌の肥えた豊穣の地なのである。しかし、金文の意味は仮借カシャ(当て字)で、①人名、②輔助(たすける)となっている。
篆文は呪いで祓う
 篆文は全く様相がことなる。金文との共通項は衣だけ。衣の中は上から、口二つ・逆S字の中に工印(呪具)、その右に爻(まじわる)がある。S印は寿の甲骨文では田のあぜ道を意味した。これらを総合すると、田のあぜ道で呪具の工をもち、口々に呪文をとなえ、まじわらせ(爻)、何かを祓う意であろう。旧字は衣の中が、「口口+𠀎」となったとなり、新字体で用いられるときの口口が八に変化したになる。 しかし意味は、発音の上ジョウに通じて、あがる・のぼる。金文から引き継ぐ、たすける。それに、地名・人名である。金文の「豊かな耕地」、篆文の「はらう」、それに衣が意味する「袋」はイメージで出てくる。
意味 (1)あがる。のぼる。「襄陵ジョウリョウ」(丘陵にのぼる)「襄岸ジョウガン」(高い岸) (2)たすける。「襄賛ジョウサン」(賛助) (3)地名。人名。「襄陽ジョウヨウ」(湖北省の地名。要害の地)「襄公ジョウコウ」(春秋時代の王) (4)はらう(=攘)。除く。

イメージ  
 「仮借カシャ・あがる」
(襄・驤)
 金文の字形から「ゆたかな耕作地」(壌・穣・嬢・醸)
 篆文の字形から「はらう」(禳・攘・譲)
 豊かな耕作地を包む衣から「種をいれるふくろ」嚢・瓤
音の変化  ジョウ:襄・驤・壌・穣・嬢・醸・禳・攘・譲・  ノウ:

仮借カシャ・あがる
 ジョウ・あがる  馬部
解字 「馬(うま)+襄(あがる)」の会意形声。馬が首をあげること。転じて、あがる・のぼる意ともなる。
意味 (1)あがる(驤がる)。馬が首をあげる。「驤首ジョウシュ」(馬が首をあげ、疾走の姿勢をしめす) (2)のぼる。あがる。おどりあがる。「騰驤トウジョウ」(とびあがる。騰も驤も、あがる意)「竜驤虎視リュウジョウコシ」(竜が天にのぼり虎がにらみ視る意。威勢が盛んで天下を睥睨(へいげい)するさま)

ゆたかな耕作地
 ジョウ・つち  土部
解字 旧字は壤で 「土(つち)+襄(豊かな耕作地)」の会意形声。金文は豊かな耕作地を意味し、この意味を土をつけて強調した字。新字体は壌に変化。
意味 (1)つち(壌)。耕作に適した土地。「土壌ドジョウ」(作物を育てる土地)「沃壌ヨクジョウ」(肥沃な土地)(2)大地。国土。「壌土ジョウド」(①土地。②領土)=壌地。
 ジョウ・みのる   禾部
解字 旧字は穰で、「禾(こくもつ)+襄(豊かな耕作地)」の会意形声。豊かな耕作地に実った穀物。新字体は穣に変化。
意味 みのる(穣る)。ゆたか。ゆたかにみのる。「豊穣ホウジョウ」「穣穣ジョウジョウ」(穀物が豊かに実るさま)
 ジョウ・むすめ  女部
解字 旧字は孃で 「女(おんな)+襄(=穣。ゆたかな)」 の会意形声。心も体もゆたかな女性。本来は母親を指したが、のち娘にも使われるようになった。新字体は嬢に変化。
意味 (1)むすめ(嬢)。おとめ。(上方で)いとはん(嬢はん)。未婚の女性。「令嬢レイジョウ」「愛嬢アイジョウ」 (2)母親。「嬢嬢ジョウジョウ」(母親)
 ジョウ・かもす  酉部
解字 旧字は釀で、「酉(さけつぼ)+襄(=穣。ゆたかにみのる)」 の会意形声。酒つぼの中に酵母をまぜこんで、発酵(豊かにみのる)させること。新字体は醸に変化。
意味 かもす(醸す)。発酵させる。「醸造ジョウゾウ」「醸成ジョウセイ」(発酵してゆくこと)「吟醸ギンジョウ」(吟味した原料で念入りに醸造する)

はらう
 ジョウ  示部
解字 「示(神)+襄(はらう)」の会意形声。神に災厄などを、はらい除くよう祈ること。
意味 はらう(禳う)。おはらい。神に祈り災厄をはらう。「禳祷ジョウトウ」(祈ってはらう)「禳疫ジョウエキ」(疫病をおはらいする)
 ジョウ・はらう  扌部
解字 「扌(手)+襄(はらう)」の会意形声。手ではらうこと。
意味 はらう(攘う)。追い払う。しりぞける。「攘夷ジョウイ」(異民族を追い払う)「攘災ジョウサイ」(災いをはらいのぞく)「攘斥ジョウセキ」(はらいしりぞける)
 ジョウ・ゆずる  言部
解字 旧字は讓で 「言(ことば)+襄(はらう)」の会意形声。言葉ではらいよけるが原義。言葉を出して相手にゆずったり、言葉でへりくだって身にふりかかる災いをさけること。
意味 (1)ゆずる(譲る)「譲歩ジョウホ」(道の歩みを譲って先に行かせる)「譲位ジョウイ」(位を譲る) (2)へりくだる。「謙譲ケンジョウ」(相手をたてる)

種をいれるふくろ
 ジョウ  瓜部
解字 「瓜(うり)+襄(種をいれる袋)」の会意形声。瓜の種を包んでいるふくろの部分。転じて、ミカンの房のふくろもいう。
意味 (1)うりわた。瓜の実の中の種子を包んでいる部分。(2)みかんの内の房の袋。「瓤嚢ジョウノウ」(柑橘類の果実の中の房の袋)「砂サジョウ」(瓤嚢(じょうのう)の中に詰まっている、果汁を含んだ小さな果肉の粒のこと)
嚢[囊] ノウ・ドウ・ふくろ  口部


  上段は嚢、下段は橐タク
解字 篆文は、「タクの略体(ふくろ)+の略体(種をいれるふくろ)」の会意。タクの甲骨文字は、袋の上下を結んだ形。篆文で、この字の発音をしめす石タク(石セキに拓タクの発音がある)を囗で囲んで付け加えた。は、篆文での石の替わりにの「口口逆S工爻」を詰め込んだ形になったが、旧字では、の上部にの下部を合わせた形になり、種など中にいろんなものを入れ込むふくろの意。現代字は新字体に準じたが使われる。
意味 ふくろ()。「ノウチュウ」(①ふくろの中。②財布)「知チノウ」(知恵のありったけ。知恵ぶくろ)「氷ヒョウノウ」(氷を入れて患部を冷やすふくろ)「背ハイノウ」(背負いカバン)「土ドノウ」(土を入れたふくろ)
<紫色は常用漢字>

参考音符 音符「タク」へ

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