石野真琴のなんでもあり?

多趣味な石野真琴が、普段感じている事、将棋、祭り、甲冑等々、趣味の内容を描きます

仮設住宅の住環境格差

2011-11-12 23:53:32 | 趣味
 冬の足音が近づく中、東日本大震災の被災地で、寒さ対策の遅れが深刻な問題になっている。
 取り組みの立ち遅れが特に著しいのが宮城県だ。9月30日に厚生労働省が開催した仮設住宅の居住環境に関するプロジェクトチーム(PT)会合で、平野達男復興対策担当相が宮城県東京事務所長を前にこう苦言を呈した。
 「仮設住宅の整備はそもそも県の事業だ。きちんと実情を把握して主体的に対応してもらわないと困る。村井嘉浩知事にも私から直接言う」
 平野氏が宮城県を名指しで批判したのには理由があった。厚労省の調査で、仮設住宅の住環境改善の取り組みに関してほとんど手つかずであることが判明したためだ。
 厚労省は30日のPT会合で、岩手、宮城、福島の3県を対象としたアンケート結果を公表。仮設住宅を設置している50市町村すべてから仮設住宅の住環境整備に関する回答を得た。その中で「雨、風よけのための風除室の設置」「断熱材追加」「窓の二重ガラス化」などの寒さ対策について、宮城県がほとんど何もしてこなかったことが明らかになった。
 風除室の設置については、福島県の実施率(実施見込みを含む)が82.4%、岩手県で28.9%に達しているのに対して、宮城県は1.7%。断熱材追加でも岩手県28.6%、福島県7.3%に対して、宮城県は0%。二重ガラス化でも岩手県42.8%、福島県11.5%に対して宮城県は0%だった。
 身体障害者や高齢者が必要とする手すりやスロープの追加設置についても、岩手県35.7%、福島県50.9%に対して宮城県ではわずか4.4%にとどまった。
■台風で劣悪な環境が露呈
 危機感を抱いた厚労省はPT会合に先立つ9月28日、寒さ対策について早急に措置を講じるように促す通知を仮設住宅を設置している各県の担当部局宛に送付した。同通知によれば、断熱材の追加や窓の二重サッシ化・複層ガラス化、玄関先への風除室の設置などの寒さ対策、通路や駐車場の舗装および排水用側溝の整備などについては、災害救助法に基づき国庫補助の対象となることを明記している。同法の仕組みにより、市町村の資金負担はわずかで済む。
 もっとも、災害救助法に基づく支援措置は今回初めて盛り込まれたものではなかった。すでに厚労省は6月21日の通知でも暑さ寒さ対策の実施を促している。岩手県や福島県はこの前後の時期から、すでに対策に着手していた。その反面で、宮城県が大きく出遅れたのはなぜか。
 岩手県や福島県では、仮設住宅の建設だけでなく、その後の追加工事に関しても県が主体的に対応した。これに対し宮城県は仮設住宅の設置者でありながら、その後の管理とともに増改築についても地元の市町に委ねた。
 ところが、地震や津波の被害が大きく、職員確保すらままならなかった市町側では住民に対して、「原則として新たな追加工事はしない。住民側で増改築することも禁止する」という姿勢で臨んだ。そのうえで、雨漏りなど最低限の補修工事しか行わなかった。県と市町の役割分担もあいまいだった。
 宮城県石巻市では、「夏場に大量発生したハエ対策として住民から要望が多かった玄関網戸の設置については、予算化して対応している」(仮設住宅運営管理室)というが、秋が深まりつつある現在もまだ未完了。
 そもそも宮城県内の仮設住宅のほとんどで玄関網戸が設置されていないのは、県がプレハブ建築協会との間で取り決めた仮設住宅の仕様に玄関網戸の設置を含めていなかったためだ。その結果、当初から仕様に盛り込んでいた福島県で玄関網戸の設置が72.1%に達しているのに対して宮城県ではわずか3.9%。県の取り組み方針の違いが、県民の住環境格差につながっている。
 9月下旬に日本列島を直撃した大型台風15号は、被災地にも大きなつめ跡を残した。石巻市では市内の至る所が冠水し、仮設住宅でも住民は暴風雨に悩まされた。
 289世帯が入居していた石巻市の仮設住宅大橋団地では、敷地内に水がたまった(写真)。団地内には水を流す側溝がないため、自然に乾くのを待つしかなかった。
 湿気対策も大きな問題になっていた。大橋団地住民の山崎信哉さん(75)は「室内では結露がひどく、乾いたタオルもびっしょりになった」と語った。石巻市の飯野川北高校グラウンド仮設住宅で暮らす鈴木しく子さん(63)は、「風除室がないので、玄関に風雨が吹き込む」と嘆いた。
 石巻市雄勝町名振の仮設住宅に住む大和久男さん(56)は、「地面からの湿気がひどく、布団も湿っぽい。棚の後ろの壁にはすでにカビが生えている」と打ち明ける。
■自治会結成遅れる石巻市
 仮設住宅についてはハード面での整備が急がれているのとともに、自治会の組織化や集会所の活用など、ソフト面での取り組みも急務だ。しかし、ここでも格差は大きい。10月6日の参議院・東日本大震災復興特別委員会で、牧義夫厚生労働副大臣は、同日現在で被災3県にある890の仮設住宅団地のうち418で自治会が存在することを明らかにした。
 ところが、石巻市の場合、市内131カ所の仮設住宅団地のうち、10月3日時点で結成済みはわずか3カ所、準備中も20カ所にとどまっている。
 看護師らのボランティア団体「キャンナス東北」で石巻エリアリーダーを務める佐々木あかね看護師によれば、「8月27日以降に訪問した石巻市内の仮設住宅12カ所のうち8~9割で、仮設住宅の敷地内に設けられた集会所がまったく活用されていなかった」という。
 「集会所の鍵は市役所が管理している場合が多く、ほとんどの集会所の談話室には机も白板も置かれていなかった。結果として、住民同士が顔を合わせる機会もなかった」(佐々木看護師)。
 こうした実態は、行政の機能低下によるところが大きい。津波の被害が大きかった石巻市では、市の職員の多くも被災。震災前からの行政改革で職員数も大きく減っており、住民への対応が困難になっている。市の担当者は「苦情処理に追われ、現地訪問もままならない」と打ち明ける。県による手助けも不十分だ。
 石巻市では仮設住宅への入居を抽選に委ねたため、被災住民が市内各地の住宅にばらばらに入居。コミュニティ形成を阻んでいる。岩手県の宮古市が抽選を行わずにすべての被災住民を地区単位で近隣の仮設住宅に入居させたのとは対照的だ。
 自治体の取り組み格差はすでに被災地の住民生活に大きな影響を及ぼしている。
(本誌:岡田広行 =週刊東洋経済2011年10月22日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 宮城県の被害は死者数だけ見ても岩手県の倍近くで、県の人口を見ると宮城県は岩手県の倍までは行かなくとも、8割ぐらい多いようです。そう考えると被害状況はこの2県ではそれほど大きな差はない・・と言えるのかも知れません。
 それはそれとして・・・。
 仮設住宅の設置場所選定および確保は市町村の担当で、建築資材の提供は国が行い、実際に建築するのは県の担当だと思います。
 しかし、仮設住宅の改善等を行う担当と言うのは決まっておらず、復興担当大臣に苦情が持ち込まれる・・・と言う事は、市町村は何も出来ないか担当ではないと考えており、実際に建築を担当した県が、県によってだいぶ方針が異なっていると言う事のようです。
 国に統一的な方針を・・・と言う主張もあるでしょうが、仮設住宅であればその気候や位置などによって、大きな差異があってしかるべきでしょう。
 沖縄に設置するなら風通しを良くして、東北や北海道なら寒さ対策を入念に・・・と言うのが誰もが考える事でしょうが、なにしろ仮設住宅です、とにかく早く建築することに眼目が置かれています。
 台風の影響で水害もあったようですが、建築場所もそれほど選択肢があったわけではなく、早く建築する為には寒さ対策、暑さ対策は二の次になっているわけです。
 この改善の担当を行うのが、県が妥当かどうか判りませんが、いずれにしても改善を継続する必要はありそうです。
 と言っても仮設住宅ですから、2年間と限られた使用期間なので、どの程度の費用を掛けて改善すべきか・・・そこが大きな問題なのでしょう。

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4 コメント

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住宅住宅の寒さ対策 (山田)
2011-11-16 16:14:14
今回の寒さ対策は、本当に仮設住宅が寒冷地仕様になっていれば不要なものです。しかし、この夏の暑さが証明する様に、断熱性能の悪さは歴然としています。これは、中越地震の仮設住宅と同じもので建てられ、その時、指摘された、屋根天井の問題点をそのままにしたためです。ですから、今回の寒さ対策でこの点を絶対に改善されなければならなかったのですが、残念ながら意図的に外されたようです。しかし、昨日のテレビで言ってた様に、寒さで心筋梗塞
云々では、取り返しのつかないことになります。今からでも、県に屋根天井の改善を要望すべきです。
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仰る通り (石野真琴)
2011-11-16 22:52:18
>山田様
 仰る通りだと思います。
 問題は仮設住宅が2年間限定で、建築する時間優先と言う事が最大の問題だと思います。
 と言っても、それが仮設の宿命ですが。

 本設と言う言葉があるとは思えませんが、仮設住宅で使用している土地は、その期間が過ぎれば返す必要があり、堅牢で気密性が高く、防音・断熱性に優れた建物を作るのであれば、仮設ではなく10年なり20年なり、一般住宅なら30年~60年ぐらい使う事を考えて建築するものです。

 そう言う意味で考えた場合、何処まで仮設住宅に求めるべきなのか?
 そこが難しい問題であると思います。
 むろん、建設費も問題になるでしょうし。
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仮設住宅の寒さ (富岡)
2011-11-25 14:23:08
石野さんの言われることもごもっとですが。
仮設とは言え生活するに支障のある今の寒さは異常です。それが最低限改善されなかったら問題です。今話題のヒートショックで命を落としたら犯罪行為です。なにを言ってもいまの寒さの原因は当局の怠慢によるものです。岩手県では、知事が仮設に一泊し寒さ対策の効果を確認するそうです。前向きですよ。いい機会ですから、各県の知事が同様に体験すべきです。そうは、思いません。
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東北の寒さは・・ (石野真琴)
2011-11-27 20:29:33
>富岡様
 原理・原則は原則として・・。
 自分のような伊豆・東京でしか暮らした事がない者にとっては、東北、北海道の寒さは厳しいでしょう。

 岩手県の仮設住宅は取り敢えずの寒さ対策は終了しているようで、実際に体験して欲しいのは、宮城県の仮設住宅と宮城県知事でしょう。
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