いせ九条の会

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目的や問題の本質を取り違え/山崎孝

2006-02-27 | ご投稿
小坂意次文部科学相は2月25日、大阪府 枚方市で開いたタウンミーティング「ニート問題を考える」で、教育基本 法改正問題について「中央教育審議会(中教書)の答申では・職業教育の充実という観点も入っている。今国会での改正を実現したい」と述べ、あらためて今国会での改正に意欲を示した。

ただ終了後の記者会見では、法案提出時期に関して国会の会期延長の有無が分からないので、特定はできない。提出環境が早期に整うよう期待している」と、見通しが不透明であることを認めた。(共同通信電子版より)

教育基本 法(教育の目 的)第1条 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

と述べられています。「勤労と責任を重んじ」は明確に示されていて、「平和的な国家及び社会の形成者」の自覚しなければならないことも示されています。教育基本 法に示されたことを教育すればよいことです。

「平和的な国家及び社会の形成者」が「覇権主義の国家及び社会の形成者」にすることを狙っているのかもしれません。

教育基本 法改定の狙いは、先に紹介した加藤周一氏が述べた「子供の場合には、社会化の不十分のため、与えられた文化の受容へ向かう」という精神形成の特徴を利用して、愛国心を育てることにあります。愛国心は国家に従順になることではなく、客観的事実に基づき政府 の言動の見つめ悪い場合は批判することだと思います。教育基本 法がうたっている「真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」という考え方の教育です。

愛国心は教育によらなくても自然に備わっているものです。人間には組織に対する帰属意識があります。トリノ冬季オリンピックで日本 選手が勝利を得ると殆どの日本 人は喜び、負けると悔しい気持ちを持ちます。愛国心を煽る時は殆どが戦争するか、国家の統制を強める時です。このことは20世紀の日本 の歴史が証明し、まだ2006年になったばかりなのに21世紀初頭から、米国の2001年アフガン戦争、2003年イラク戦争で証明されています。

正義を掲げ多くの人の命を奪う戦争が行なわれます。大変大きな取り違えです。一人の命は大切なのに、これはどういうことなのでしょう。正義は普遍的なもので、何処の国に住もうと人の命を大切にしなければなりません。戦争政策はこの基準を忘れてしまいます。愛国心が悪用されると、他国も自国も人の命の尊さを麻痺させてしまいます。

ニート問題は国民の勤労意欲にかかわる問題でもあると思います。政府 が雇用関係の規制緩和を行なったために、正社員と同じように働くパート労働者に対して、正社員の賃金水準の7割以下しか払わないような実態、企業の利益を最優先させて平気でリストラを行なうなどの勤労意欲に影響を与えている社会の状況を改善することも必要だと思います。

自民党の経済・財政政策を見ると26日の朝日新聞には、(前略)

2003年度税制改正では株式譲渡益・配当所得課税を20%から10%へと引き下げ、企業が研究開発やIT関連投資をすると法人税が控除される減税案が柱になった。

 中低所得者向けの大型減税は選択肢にならなかった。財政悪化でそれだけの原資がなかったし、国民全体の懐を温めて消費を支えるより、大企業や資産家の投資意欲を刺激した方が少ない財源で景気浮揚効果が期待できる、という考え方が政府 内に強かった。高額所得者と企業に手厚い減税と規制緩和で1980年代の米国景気を回復させたレーガン政権と、その焼き直しともいわれる現ブッシュ政権初期の大型減税がモデルになった。

 2005年春を境に株式市場に活気が戻ってくる。資産家だけでなく、必ずしも所得が多くない若者までもがインターネット取引の普及で株式市場に招き寄せられた。

 個人投資マネーの流入で最も恩恵を受けたのが、ライブドアに代表される「将来の成長」が期待された新興IT企業だった。新興企業の経営者は自社株からの配当収入が減税されていたから、その面でも大いに潤った。

 神野直彦・東大教授(財政学)は「貧者より富者、勤労所得より金融所得、個人より法人を優遇するバブル税制のあだ花としてライブドアが出てきた」と指摘する。(以下略)

このようにニート問題の背景には政府 の真面目 に働くことが空しいと感じる人も出てもおかしくない経済政策が大きく関っています。このことも踏まえてニート問題は考えるべきだと思います。

小坂意次文部科学相は、教育基本 法には問題がないのに、国民が問題の本 質を取り違えることを狙っています。

この問題の本 質の取り違えは、憲法改定問題でも起こっています。若い世代の人で「9条マガジン」の掲示板でみかけるのは、改憲問題を自衛隊の存在させる問題として捉えている向きがあります。

自衛隊で国の独立を守る(反論 国の真の独立は外交にしかできない。世界有数の軍事力の自衛隊を持っていても、安保理に日本 を加えると米国の票をもう一票増やすとか、米国のポチなどと言われている。攻められる時を考えてのことだろうが、日本 は700年以上も攻められては居ない。日本 が将来攻められるという具体的根拠も無い。仮に攻められても今の自衛隊で反撃は出来る。)

自衛隊が必要で治安維持の役目 を果たす(反論 60年安保闘争時、政府 の一部に自衛隊の出動が検討された。このように反政府 の大規模な抗議行動の弾圧のために使用される可能性があることに注意の目 を向ける)

国内外の災害の救援で自衛隊が必要(反論 護憲を考える人たちの中にも自衛隊が国内外災害の救援活動に反対しない人が多い)

自衛隊と憲法規定との一致をはかりたいというのが、若い世代の改憲の理由となっています。これは、自民党の改憲の目 的を大きく取り違えています。

次回は、民主党の「問題の本 質を取り違え」を狙った例を紹介します。