伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

シュルレアリスムと日本展

2023年12月28日 | 展覧会・絵
京都文化博物館へ「異界へのまなざし」展を見に行ったら、
同時開催していた「シュルレアリスムと日本」も
同時に同じ入場料500円だけ(割引で400円)で見ることが出来た。
存外面白かったので、こちらを先に取り上げようと思う。

4階展示室のみの展示なので規模は小さかったが、
いろいろ興味深かった。
シュルレアリスム好きには面白い展示だった。



京都文化博物館
https://www.bunpaku.or.jp/

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_sogo_post/20231216-20240204/
会期
2023年12月16日(土)~2024年2月4日(日)
会場
京都文化博物館 4階展示室


まず戦前の日本で
これだけシュルレアリスム絵画が浸透していたことに驚いた。
1930年代の日本の絵画界については何も知らなかったので、
日本でのシュルレアリスムの広がりや、
絵画界の傾向について知ることが出来たのは、ひとつの収穫だった。

1930年代当時の日本絵画界では、
よほどダリの出現が衝撃だったことを物語っていた。
展示されている絵画は悉くダリの影響を受けているように感じられた。
ダリやマグリット、イヴ・タンギーなど、
シュルレアリスムの画家の影響が顕著だった。
それほどシュルレアリスム絵画は日本画家にとっても衝撃的に受け取られたのだ。





今年はアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表してから、
100年になるそうである。
自分もブルトンのこの本を持っている。
フランスで高らかに宣言されたシュルレアリスムは、
文学もそうだが、何より絵画に広がりを見せた。

当時の絵画革新運動のキュビズムやフォービズム、
あるいはダダイズムなどが発展して、
シュルレアリスムへ展開して行ったのではないだろうか。

現実というつまらない事実から逃避して、
現実を超えた非現実の空想世界、
幻想風景に自由を見出した画家たちの自由な表現。
それがシュルレアリスムだったのではないか。




シュルレアリスムの根幹というか、醍醐味はコラージュだと思う。
絵画手法は抽象ではなく、具象絵画だが、
いっけん具象的な事物がまったく関連のないものと共存している。
写真のコラージュの技法で、
関係のないものが一つの画面に並行して描かれるのだ。


机の上のクロスの上に奥行きのある街並みが描かれていたり、
海辺に裸婦が横たわる傍らにはミシンが置かれていたり。
描かれる対象は具体的だが、
まったく関連のないものがひとつの画面に収まっている。

初めてダリを見た時の衝撃がそのまま日本絵画にも影響を与えたのだ。




中にはフォービズムや野獣主義などを想起させる荒々しい筆法のものもあったが、
総じて現実にはあり得ない非現実を描くことではみな、一致している。
同じ画面に異種のものが混在しているコラージュ技法が共通していた。



ただ東郷青児の「超現実派の散歩(1929年)」という作品は、
東郷らしさが優っていて、豊かな詩情を湛えていてる。
どちらかといえばシャガール風の幻想風景だ。



浅原清隆という画家の《多感な地上》(1939)は、
ハイヒールが毛の生えた犬に変貌したり、
女性の頭部のリボンが飛翔する鳥にメタモルフォーズするさまが、
静寂の中、不安感とシュールな味わいがある。



ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発行したのは1924年ということだが、
日本へは20年代後半に詩人の瀧口修造が刊行したアンソロジーが
紹介された最初だということである。
今回の文化博物館の展示作品は主に1935年ころのもの─
1932年―35、6年くらいのものが圧倒的に多かった。

その後日中戦争が始まり、太平洋戦争に突入する中、
絵画活動も戦争賛美に転換させられ、
自由な絵画活動が出来なくなった。
戦地へ駆り出され、戦死した画家もいた。。。

日本のシュルレアリスム絵画が再び活動を再開するのは、
戦後になってからである。




油彩画による具象画だけでは物足りず、
もっと自由な表現を求めてシュルレアリスム表現を追求する画家が、
戦後も活動したのだ。
絵画とはイメージを大切にするアートである。
シュルレアリスムの具象でありながら自由な発想は、
戦前も戦後も、日本の画家たちを刺激し続けたのだろう。


(画像はチラシより)


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