伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

BENTベント3 京都劇場

2016年08月08日 | 演劇・ミュージカル
で、「ベント」を見に行った。
前売り券も買ったし。


オリンピックで沸いてる中、
メダルを取った人も、逃した人も、
みんなすごい闘志だなあと感心しながらも…
その話をする。


前回の完全ストーリーネタバレを参照しつつ、
このブログに来ていただいている、わずかな方々、
まあご笑覧ください。


とにかく、私にとって観劇というのはとても珍しく
興味津々で、滅多にない体験なので、
長々と書かせていただく。




しかしそれにしてもこんなにまでして、
「ベント」にこだわるのはなぜだったんだろう。

やっぱり、昔に読んで、衝撃を受けた記憶、
そして、つい近所でそれが上演され、
そして主演が佐々木蔵之介、
私にとっては、特別な作品という思いが強かったんだろう。



その日の京都新聞の朝刊にもまだ広告が出ていたから、
あまりチケットが売れてないのかなとも思っていた。

大体「ベント」というタイトルが何だか良く分からないしね。
訳しようがなかったらしい。
日本語に該当する言葉がみつらからなかったと。



自分は演劇とは全く無縁で、殆んど見に行ったことない。


生涯で一度だけ見たのは、
若き日の市村正親主演の「エクウス」。
それのみ。

それはでも、素晴らしい舞台だった。


そのほかで京都で見るのは歌舞伎のみ。
歌舞伎は顔見世に何度も行き、結構詳しくなった。

だけどそれ以外は。

観劇をする、ということに慣れてない。
大丈夫か?



かつて何度も読んだ「ベント」の戯曲、
家の物置から探し出して来て、
改めて何度も読み直した。

ラストがどうだったのか、忘れていたし。



事前に、演劇好きの人たちのブログを巡って、
「ベント」についての感想も読んでおいた。

みんな若くて、大体のアウトラインを
知っているだけの状態で見ているようだ。
原作の脚本を知らない人が多かった。


自分は戯曲を読んでいるので、
まるでシナリオを熟読してから映画を
見るようなものだ。
大丈夫か?



京都劇場は、京都駅ビルの中にあって、
自分の家から歩いて行ける。

徒歩で行くのだ。
歩いて10分か15分ほどだ。

こういう時、京都ってのはありがたい町だ。

オリンピックが始まる…
その日に、足を運んだ。



その日の京都の最高気温、37.9度。

日陰のまったくない道路をたとえ10分といえど
歩くのはツライ。



京都駅というのは、知らない人もいるだろうけど、案外広い。
東西に広い。

京都駅ビルと言って、中にホテルやレストランなどが入ってる。
その東の端に京都劇場というのがあって、
前は劇団四季などの上演をしていた。
迷子にならないか?
でもちゃんと看板が出ていて。



行ってみたら、全席指定なのにすでにエスカレーターに人の列。
そのほとんどが若いきれいな女性ばかり。見事に女性ばっかり。

その中にちらほらと和服姿のご婦人たち。

こういうとこ、京都らしおすえー。
(劇を見る時って、一張羅を着るのかなー?)

おばさんたちもいた。
でも私よりは年下だろう。

男子は、奥さんのおともらしきほんとに少数。



何だろうこれは。

佐々木蔵之介のファン?
そんなに蔵之介(さんづけとかもう面倒なので、呼び捨てですまん)
ファンって多いのか?
それともボーイズラブ目当て?


パンフレットも買った。

劇場内に入ったら、意外とすごく人が入ってる。
2階は見えなかったけど、一階はほぼ満員だった。



しかし、この劇は、私にはよく読み込んだ戯曲。

どうしても、たとえば画集でよく見ていた絵を、
美術館で実物を見る時のような、
この背景はこうで、ここの色づかいはこうで…、
という確認作業になってしまう。


この場面の次にはこの場面が来て、こういうセリフで…
というのが全部分かってしまってる。

そこがつらいとこ。
オドロキというものはないだろう。



ただ、やはり、
このセリフを俳優さんがどういう感じで言うのか、
その時どういうアクションをするのか、
という俳優の演技への興味がある。

また新しい翻訳がどのようになってるのか、
演出は、舞台装置は、
そのような興味はある。



まず、舞台装置は、想像通りの、極力シンプルな、
よけいなもののまったくないシンボリックなものだった。

映画はある程度リアリティが要求されるが、
演劇では、演劇ならではのシンボリックなものが許される。
そこにこそ、舞台の良さがある(という、しろーと考え。)



舞台の上に一段上に回転するステージが設けてあり、
場面転換するしかけ。
それは暗転のあいだに、手動で動かしていた(笑)。

後半になると強制収容所オンリーの舞台になるので、
もうほとんど背景は動かない。

ほぼ想像していた通りの、シンプルな作業場。
2、3段の階段を作っていたのが、めりはりが効いていて
良かった。


ただ、死体の入った穴がどう表現されているのか、
それは確認したかった。


でも、どこにあるのか分からなかった。
俳優のセリフで、あるらしいことだけが分かる。

ラストでようやく分かった。
うまく作ってあった。



演出については、それはもう、素人なので私が
どうこう言える分際でない。

シンプルで、戯曲にきわめて忠実で、
装置も含めてみょうな誇張もまったくなく、
俳優の演技を極力効果的に引き出し、
決めるところで決めていた、ような気がする。



ただ翻訳、やっぱり
もとのよりもモダンになっていて、
「ホモ」という言葉はだいたい「ゲイ」に置き換えられていた。

そうだ、というセリフを、そうなんだよねー、
というように、少し俳優の呼吸に合わせたようになっていた。

原作…というか、青井陽治の翻訳のぶっきらぼうな感じが
とても好きだった私は、少し残念だった。


3Pしたのか、というセリフがあるんだが、
青井翻訳では、

三人でやったのか?
ふたりで三人ぶんやってたよ、

となっていて、「さんぴー」という言葉より、
ずっと青井翻訳の方が分かりやすかったのにな…
とも思った。


翻訳についてはね、
やはりすり込みというものが強烈だったので、
そこはいろいろと不満が残ったのはしようがない。

ただ、きちがいという言葉を多用していたのは立派だった。



そして最後に俳優の演技について。

青井陽治が、ニューヨークで最初に舞台を見た時、
主役のリチャード・ギアが、二日酔いの演技で
初登場してくるシーンの演技だけで惹きつけられた、
と言っていたようなカリスマは、蔵之介にはあまりなかった。


彼は淡々とオーバーアクトなく演じている、ように見えた。
そして、セリフが早い!

相手のセリフにすぐにかぶせて来て、間合いというかタメがない。
(ほかの人も同じなのだけど)言葉もひどく早口で、
どんどんと突っ走り、正直、落ち着いて演技を追えなかった。


1時から4時まで、休憩をはさんで2時間45分。
そのスピードでやりきらなければ、もっと長びく、
ぎりぎりのスピードだったのだろう、と解釈した。

とにかくどの人もセリフが早い。ように思えた。



そのことが、のち私に異常行動を起こさせた。
…ということは置いといて、



だから肝心のあのエアーセックスの場面。

そこも、疾風怒濤のごとく走る。
俳優二人が、畳みかけあい、どんどん猛スピードで走り、
あっという間に達してしまう。
(そう、二人は同時に果てる、という設定)

どんどんセリフが露骨になり
(だからネタバレの際には恥ずかしくて書けなかった)
でもちゃんと、彼らははっきり言ってた。
そこはすごかった。

でもそれも猛スピードで、あっという間。



あるブログで、
わりと唐突にその場面になるので、
彼らのエアセックスが、単に性欲の発露で、
ただ情欲しているだけに感じた、
みたいな感想を言っていた。

確かに、あれは自分たちの情欲が少しずつ
高ぶっていって、止まらなくなり、
どうにも止めようがなくなって、
どんどんエスカレートしていく、
そんな風にも感じられた。



「史上最高に美しいラブシーン」「永遠の3分間」と讃えられた
シーンではあったけれど、演出はそう解釈したのだと思った。

(このシーンは、読んだ時すごく強烈だったので、
自分のすごいまずいBL小説にぱくったのさ)




そんなわけで、私は劇を見ながら、
多分完全にアガっていたのだろう。
疾走するスピードについて行けず、落ち着けなかった。
慣れない観劇に。

俳優のセリフの入り、どんなふうにそのセリフに入っていったか、
どんなニュアンスだったか、
…何にも覚えてない。

戯曲は覚えているのに、
俳優の演技がどうだったか、
何も頭に入ってない!


老人力もだいぶついて来ているので、覚えられない!



ラストだけは、分かった。

戯曲はト書きだけなので、
どのように蔵之介が演じるのか、
そこは想像が出来なかった。

ラスト、彼は自分の黄色の星のついた囚人服を捨て、
ピンクの三角のついたホルストの囚人服を着る。

ステージの真正面に来て、ぎりぎりの前まで来て、
そこで観客に向かうように、見せつけるように、
彼は、ピンクの、ホモの囚人服を着た。
まるで、それが正装であるみたいに。

それは、たいそう素晴らしかった。



後ろを向いて、柵に向かっていくところで暗転し、エンド。

その直後、また舞台は明るくなり、
前を向いた蔵之介が挨拶をした。
そこで拍手。

出演者が次々に出て来て、挨拶をする。

大拍手で迎える観客。
スタオベする人も何人もいた。


演劇のカーテンコールって、こんななんだな…
すてき…


だけど、どうしても老人力のせいで、記憶がとんでる!
見たばかりなのに、とんでる。
あっという間だったから、夢中だったから、とんでる。

だめだ、思い出せない。


そこで、私は暴挙に出ることにした。


つづく




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