舞台演出&舞台衣装:田中秀彦のブログ第一集『PLASTIC DIARY』

身体装飾デザイナーグループ
iroNic ediHt DESIGN ORCHESTRA
2006年1月2009年8月

■押井守監督初演出舞台作品「鉄人28号」観劇

2009-02-08 | 1:日記 [PLASTIC DIARY]
最高でした。
生きててよかった。

幕が開くと、舞台上にどでかい鉄人28号が片膝をついて座っていました。

「鉄人28号」といえば「敵を倒す」ヒーローロボットイメージがありましたが
さすがに押井監督、絵に描いたような「敵」は現れず、
テロリストと博士のぶつかる思想論議や
PAX JAPONICA シリーズと並行する思想が根底に流れていました。

パンフレットで知りましたが、
昭和30年代に連載された横山光輝氏の漫画原作では
鉄人は大日本帝国が開発した最終兵器で、コントローラーさえあれば
どんな破壊活動も可能な恐怖のロボットとして描かれていたそうです。
鉄人を悪用しようとする犯罪組織やスパイ団などとの争奪戦の末、
正義の少年探偵・金田正太郎が悪の手からコントローラーを守り
平和の為のヒーローとして操縦する物語に発展したそうです。
鉄人、自分で動く第六世代だと思いこんでいました。。。
今回の舞台はその設定がベースになっていました。

戦後の揺れる正義と欺瞞を、コントローラーの持ち主次第で
正義の味方にも悪の権化にもなる鉄人の操縦士である
正太郎少年の揺れる思想に重ねて描かれていました。

東京オリンピックの開会式で自衛隊機が空に描いた五輪は
高度成長日本の政策に反するテロリストによって阻止されたが、
正太郎少年の操縦によって鉄人28号が描いたものだった。
この物語展開は衝撃でした。

最後に観客の前で起動して立ち上がりました。
完全に立ち上がると劇場の天井をつきやぶりますので、その前に暗転しました(笑)。

ラジコンのようなコントローラー。
その持ち主の思想を反映する鋼鉄のボディーが最初から最後まで観客の前に鎮座していることで
身体と思想の密接な関係を考えさせられる効果がありました。
コントローラーと鉄人は、「甲殻機動隊」におけるゴーストと義体の関係と重なります。

川井憲次さんの音楽も素晴らしかったです。
時にクラシカルに、時にノスタルジックに、時に歌謡曲、時に演歌、
対抗する思想の歌の曲調を対称的に作曲して、
後半で正太郎を奪い合う博士とテロリストのシーンでは、
その二つの曲調が入れ替わりで進行するのはとてもユーモラスで
ブロードウェイ風な音楽遊びが感じられました。
ゲスト出演の東京五輪音頭も押井ワールドな空気を押し広げてました。

ロビーにきてた花がおしゃれでした。

「鉄人28号さんへ」


最新の画像もっと見る