ヒルネボウ

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漫画の思い出 萩尾望都『トーマの心臓』(2)

2023-07-18 01:00:26 | 評論

  漫画の思い出

   萩尾望都『トーマの心臓』(2)

漫画の中の少年たちのいちゃつき具合は、男らしくない。女子会の雰囲気だ。仲がよさそうで、どこかよそよそしい。女は男ができたら女子会を卒業する。一方、男は女ができても男子会を卒業できない。男社会の基本は同性愛だからだ。ただし、本物のゲイなら、男社会から離脱できるのかもしれない。ところが、交接を伴わない男色文化人は、精神的同性愛を死ぬまで維持することになる。その関係は義兄弟などと美化される。そんな男たちの強い絆を羨む処女は少なくなさそうだ。『トーマの心臓』の作者は、精神的男性同性愛と異性愛を意図的に混同しているらしい。

処女は、異性から見出されるために身を隠す。自分から異性を探すことはしない。なぜなら、処女はあくまで客体だからだ。

トーマは、ある男に女子会から連れ出された。〈トーマは、なぜ、死んだのか〉という問題は〈処女は、男に連れ出されずに、どうやって自主的に女子会から離脱するのか〉という問題の偽装だ。

この作品が発表された頃、処女は二つの矛盾するルールに束縛されていた。一つは〈お見合い結婚〉で、もう一つは〈恋愛結婚〉だ。前者を受け入れれば〈古い〉と嘲られる。後者を実践すれば〈ふしだら〉と嘲られる。板挟みだった。

解決策は、なくもない。自分を気に入ってくれた男と客体として結婚をし、男というものを知った後、主体として恋愛をするのだ。その場合、相手の男が別人だと、『君の名は』(菊田一夫)の真知子のようになる。純愛の不倫だ。

(続)


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