要旨
ヴィジュアル系は20世紀後半に登場した、日本のロックバンド及びミュージシャンの系統の一つである。ヴィジュアル系を題材とした研究の多くは、大衆文化としての考察や、ヴィジュアル系の変遷など、社会学的なアプローチによるものが多いが、今回は日本語学的な側面から調査することを試みた。具体的には「和」をコンセプトとして活動している、、「己龍」というバンドに焦点をあてて、日本的なイメージの表現方法について考察した。
調査方法は、己龍が活動を開始した2007年から2014年の間に出された全4枚のアルバムに収録されている述べ49曲を調査対象とし、歌詞に使われている語の使用頻度をカウントして、頻出152語を一覧表に まとめた。 歌詞を構成している語の多くは流行歌やポピュラー音楽と共通していたが、随所に「和」を連想させるような語、古語、仏教用語などが使われていた。外来語や混種語の使用は非常に少なく、外国語やアルファベット語の使用は一度も見られなかった。また、漢字やカタカナの表記の仕方を歌詞や曲によって使い分けていることがわかった。
本研究では「己龍」を調査対象としたが、ヴィジュアル系と一括りに言っても様々なバンドが存在するので、ヴィジュアル系という全体の傾向や特徴を捉えるためには、多くのバンドを対象にして調査を行う必要がある