一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
読んだ本の書評をお送りいたします。
活字中毒者のアナタのためのブログです。

人物を読む(2)―真間の手児奈のこと その2

2007-04-19 08:33:44 | Person
まず、手児奈伝説と同様なものが、菟原処女(うないおとめ)伝説として神戸市に残されていることを確認しておきたい。
つまり、これは物語パターンとして、かなり原型に近いものであるということだ。おそらくは、東洋各地あるいは西洋にすら、同じパターンのものがあるかもしれない。
となると、なぜ手児奈は身を投げて死なねばならなかったか、という心理的な穿鑿は、無意味ということになる(北山茂夫による虫麻呂評「ただ一つ残念なのは、何故に娘子が死をえらんだのかの悲劇の焦点が、つっこんで書かれていないことである」など)。

以上を踏まえた上で、参考になるのが、「手児」は普通名詞で「幼児」を指す、という大和岩雄説(「奈」は愛称の接尾語)。また、彼は、真間の手児奈は「遊行女婦(あそびめ、または、うかれめ)」であり、後代の「遊女」につながる存在だと述べている。
となると、手児奈伝説もかなり様相を異にしてくる。
たとえば、柳田国男説を借りれば、
「遊女といふ語には、本来売春といふ意味はありませんでした。(中略)日本の語に直してうかれ女と申したのも、今日の俗語の浮かれるといふのとは違ひ、単に漂泊して定まった住所の無いことです。」
と、手児奈は定着民ではなく、漂泊民ということになる。

最新の画像もっと見る