
19日の日銀金融政策決定会合の結果発表を前に、ドル/円の動向に市場関係者の注目が集まっている。市場予想や事前報道通りに政策維持が決まれば、通貨先物市場での円買いポジションが過去最大の規模に膨れ上がっており、ドル高・円安が急速に進むとの観測が広がっている。
その一方で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が19日の会見で利下げに慎重な姿勢を見せれば、米株が下落基調となってドル高から一転してドル安が進み、対円で円高になるとの予想も浮上。複数の市場関係者は、19日の金融政策決定会合後の植田和男・日銀総裁の会見での発言内容やトーンがドル/円の当面の方向感を決めると述べている。
<IММ通貨先物で過去最大の円買い持ちポジション>
17日の東京市場では、ドル/円が一時、149円台に上昇。日経平均株価も前週末比343円42銭(0.93%)高の3万7396円52銭と続伸した。米上院で14日に9月までのつなぎ予算案が可決され、15日にトランプ米大統領が署名して政府閉鎖が回避されて、リスクオフ心理が後退。トランプ大統領が16日にロシアのプーチン大統領と18日にウクライナとの戦争を終結させるための電話会談を行うと発言し、リスクオンへ向けた市場心理の好転がドル買いを促したようだ。
19日には日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)で、金融政策をめぐる議論の結果が公表される。日米の金融政策イベントの結果については、メディアと市場関係者の見通しともに日米で「政策維持」との見方で固まっている。
そこで注目されているのが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CМE)のIММ通貨先物における円ロング(買い持ち)の大きさだ。11日現在で13万3902枚と過去最大の規模となっている。もし、日銀の政策維持の決定とその後の植田総裁の会見を経て、投機筋がこのポジションの多くを手仕舞うことにした場合、少なく見積もっても2-3円の規模でドル高・円安が進行する可能性がある、との見方が市場で台頭している。
<トランプ関税の不透明性、植田総裁が強調なら円安進展か>
筆者は、円安進行が急進展するかどうかは、植田総裁とパウエル議長という日米中銀の二人のトップの発言がカギを握っていると考える。
まず、植田総裁の会見だが、国内における昨年を上回る春闘での賃上げ結果や食料品を中心とした消費者物価指数(CPI)の上昇テンポなど利上げを検討するべき要素と、トランプ関税に代表されるトランプ大統領の経済政策に起因した不確実性の高まりが交錯していると説明するのではないか、と予想する。
そこで、不確実性の見極めに力点を置き、次の利上げ時期が次回会合になる可能性だけでなく、いつになるのか不透明だというニュアンスを強めて情報発信すれば、会見中に円安が目立って進展すると予想する。
<「適切な」時期の利上げ、強調なら円高方向も>
一方、実質金利で見て大幅なマイナスになっている政策金利を「適切な」時期に修正していく方針を強調し、従来の半年に1回のペースから前倒しの可能性があると市場が受け止めるような発言になれば、通貨先物市場における円買いポジションの大幅な巻き戻しは発生せず、会見前の水準が149円台であれば、148円台へと円高方向に動く展開も予想される。
大方の市場参加者は、従来からのスタンスを維持しつつ、次の利上げ時期に関して「ノーヒント」を貫き、次回の4月30日・5月1日かもしれないし、6月ないし7月会合かもしれない、という市場の思惑を生みやすい発言に終始するとの見方をしているようだ。筆者は、このケースでは小幅に円安が進むと予想している。
<利下げ急ぐ必要なし、パウエル議長が強調なら米株安から円高>
その後に結果が判明するFOMCと直後の会見で、パウエル議長が今後の利下げでどのような発言をするかによって、さらにドル/円は大きな変動を強いられるかもしれない。
パウエル議長は今月7日、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスが主催したイベントで「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」「われわれは急ぐ必要はなく、状況がより明確になるのを待てる良い状況にある」と発言。当時のマーケットはこれを米経済への自信と捉え、米株高で反応した。
だが、足元における市場心理は、トランプ大統領による関税政策の急進性と猫の目のように変わる政策内容に強い懸念を示し、トランプ氏の経済政策は「マーケットへの逆風」というイメージを固めつつある。
したがって年内に2.5回分の利下げを織り込んでいる足元の市場に対し、7日と同じトーンで発言すれば、市場は失望感を募らせて米株がかなり下落する可能性が出てくる。
その場合は、外為市場でドル売り・円買いとして機能し、パウエル会見後にドル安・円高が進行している可能性がある。
<パウエル・プットで円安進展、トランプ大統領のけん制発言も>
ただ、マーケット心理の足元での変化をパウエル議長が認識し、米株を支えるような「パウエル・プット」的発言が飛び出せば、ドル高・円安が進みやすくなると予想する。先に提示した植田総裁のハト派的な発言で円安が進んでいるケースと、このパウエル・プットが合致すれば、円安の進展は「大幅」と市場が認識するほどに大きくなっていることも予想される。
同時にこのケースでは、トランプ大統領から円安をやり玉に挙げる発言が出たり、日本のマクロ政策に対しいていきなり批判を浴びせるような「不規則な」展開が待ち受けているかもしれない。
東京の市場参加者にとって大きなリスクなのは、上記で示したような組み合わせ次第で、ドル/円が円高方向にも円安方向にも振れやすくなっているにもかかわらず、翌20日が祝日で東京市場が休場であることだ。東京時間で19日正午過ぎから20日未明にかけて、多くの市場参加者にとっての「長い1日」が待ち受けている。










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