
トランプ関税のショックから逃避するための最大の安全資産だった米国債の市場が動揺している。9日のアジア市場の取引時間帯に10年米国債利回り(長期金利)が4.5%台に上昇、日本の長期金利も一時、1.355%まで急上昇した。複数の市場関係者によると、中国勢が米国債売りを仕掛けているとの思惑が出ているほか、トランプ米大統領がドル安調整を志向しているとの観測も浮上。ドル/円も145円台へとドル安・円高が進んだ。米国債の「安全資産神話」が動揺するなら、世界の金融・資本市場が大混乱するリスクも出てくるだけに、市場はトランプ大統領と米当局の出方を固唾を飲んで見守っている。
<米長期金利が4.5%に急上昇、中国勢の売りやドル安誘導の思惑で>
米長期金利は8日のNY市場で、前日より0.095%高い4.355%まで上昇。9日のアジアタイムで4.4%台に上昇した後で4.5%台に乗せた。
複数の市場関係者によると、7日のNY市場での取引から中国勢の米国債売りが観測され、8日も継続していたとの見方が出ていた。9日のアジアタイムでの利回り上昇でも同様の思惑が意識されているとの指摘が出ていた。
一部の市場関係者は、米国が9日から対中国の関税を104%に引き上げたことに対抗するため、保有している米国債の売却に動いた可能性があるとみている。対米貿易収支で大幅な輸出超過である中国にとって、関税引き上げ競争の結末は自国に不利であり、米国の関税引き上げ戦略にとって大きな弱点になりうる米長期金利の上昇を狙った米国債売却は、対米交渉のカードになりうると判断した可能性もある。
<米長期金利の上昇、日本の長期債に飛び火 30年債は20年8カ月ぶりの高水準>
この米国債市場の下落基調は、9日の円債市場に飛び火した格好だ。日本の長期金利は一時、前日比0.090%高い1.355%まで上昇。30年国債利回りは一時、前日比0.355%高い2.78%と2004年8月以来、約20年8カ月ぶりの高水準となった。
市場の一部には、トランプ関税による日本経済への打撃を緩和するための日本政府による2025年度補正予算の財源確保のため、赤字国債が増発されるのではないかとの思惑が影響したとの声も出ていたが、複数の市場関係者は米国債市場の動揺による金利上昇への懸念が強かったと指摘する。
<ミラン論文とドル安誘導、ドルの実質実効為替レートは85年以来の高水準>
米国債への売りがにわかに高まった背景には、上記で指摘した中国勢の売りのほか、ここにきて急速にささやかれ始めたある思惑がある、と市場関係者は指摘する。それは、トランプ大統領のドル安誘導という新たな政策展開だ。
複数の関係者によると、トランプ政権2.0の発足前からトランプ氏を支えるチーム内でかつてのプラザ合意のようなドル安誘導を多国間で合意するシナリオが存在していたという。
足元で市場が注目しているのは、スティーブン・ミラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の論文だ。この論文では、米国以外の外国当局がドルを売却してドル安誘導するとともに、米金利の抑制を目的に外国当局に手持ちの米短期債と100年米割引国債との交換を求める──などが指摘されている。
具体的な手法よりも、市場関係者が注目しているのはドル安誘導の目的だ。関税を引き上げただけで直近のドル高を放置していれば、米国内での製造業の復権はできないという底意がトランプ大統領とその周辺にはありそうだ。
実際、ドルの実質実効為替レートは1985年のプラザ合意の時の水準まで上昇しており、ドル安誘導を狙うトランプチームの根拠にもなっているようだ。
<安全資産の動揺は要注意、日本では三者会合を開催へ>
だが、安全資産の米国債すら不安視されるようなら、世界の金融・資本市場は大崩れするリスクが出てくる。7日の当欄で「トランプ恐慌」の兆しがあると指摘したが、8日から9日にかけての米長期金利の上昇は、大混乱の「初期微動」かもしれない。
財務省、日銀、金融庁が9日午後4時から、国際金融資本市場に関わる情報交換会合(三者会合)を開催することにしたのも、市場の動揺に機先を制し、当局からのメッセージでマネーフローの急激なシフトを防ぐ狙いがあると筆者は考える。
とりあえず、9日のNY市場で米長期金利が上昇を続けるのか、それとも低下するのかが今後の市場を見定める上で喫緊のポイントになってきた。










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