成瀬『鰯雲』

2014-07-31 15:28:35 | 映画
時折、昭和の映画を見たくなります。

DVDのストックから選ぶのですが
数少ない中からの選択はきびしい。

「前に見たな」ばっかりでカミサンを退屈
させてしまいます。
私は、何度でも見る派・・

小津、成瀬、木下、溝口などなど

中でも小津や成瀬は落ち着きますね。

昨日は成瀬の『鰯雲』
彼の作品としてはそれほど評価は高くありません。

昭和33年、成瀬初のカラー作品です。
(一般的にいって、彼は白黒が宜しいと思います)


映画は(時代の缶詰)と言われます。
その時代をパックして後世にそのまま伝えますから。

小説より、絵画より「鮮度が良い」のが映画です。
劣化が少ないと言いますか。

その分、古いテイストになりやすくもありますね。

『鰯雲』封切のとき私は9歳ですから多少は
大人の空気も分かります。
カミサンは生まれていませんからねえ。

今の30代以下の人ならどう見るんでしょうか、
分からない?古臭い?

いや「今の」とつけなくても、私も今回初めて
在る程度分かったかもしれません。

人間のありかた、といいますかね。

もちろん、若い頭でも、時代に置いて行かれた老人の
気持が分かるような気はしていました。
しかし、ただ、老人のくりごと。


「そうは言うけれど、そうもいかんじゃろ」

戦前の地主、戦後の没落をくいとめようとして
思うさまにならぬ情けなさ、それが今回は心に
響きました。

「そうでしょうね」と言ってあげるしかない。
時代が変わったのは当人がよく知っている!

誰も如何ともしがたい時代の流れを、しかし
「そうもいかん」と思ってしまうのが人間なのです。


若者は新しい時代を作ります。

とはいえ50年も経ってみると、昭和30年の
「新しさ」はいま見事に叩きつぶされています。

現在、生きておられるなら当時の若者が呟く、
「そうもいかん」


他にも生きいきと描かれている様々な人間模様。

「これは(ナルセの5本)に入りますねえ。
 名作と言えます」

なんて持ちあげるのは私くらいかな。

「そうは言うけど、なあ。難しいん」が口癖で。


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