むかし酒田に相馬屋があった

2009-11-16 22:18:37 | 食べる
平成5年、私に結婚してやろうというキトクな人が現れ
慌てて入籍をお願いし2週間の国内旅行をしましたが
翌年春にも米沢酒田に小旅行をしています。

リッチでしたなー。
というより、貰うだけ使っていたのであります。

相馬屋の外観は記憶から消えてしまいました。
なだらかな坂を上っていった場所と思います。
玄関からして立派で帳場から左手奥、土蔵のような
部屋に案内されたと思います。

東大の近く、本郷に『明日香』という店があり
そこの地階が土蔵のような造りで落ち着きましたが
相馬屋はもっと小ぶりで丁度二人の食事に合います。

落ち着いた店で美味しく頂き、内容に比べて大変に
リーズナブルなお値段だった印象があるのですが
メモのようなものが残っていないのです。


実は、料理の一部も記憶から消えております。

コースは純粋な日本料理で
口取八寸、吸物、刺身と続いたハズです。
ここまでかなり満足。
瀬戸内とは違うけれども密度の濃い美食の世界が
ありました。

次に出たのが鯛のカブト煮。
一尺三寸の有田らしい皿に立派な鯛の頭!
実は内心「余り鯛が大きいのは・・」と思った。

ほんの心持だけ濃い目の味付けで、美味いの何の。

絶妙の煮加減でしっとり柔らかく、リッチな鯛の味を
甘辛い煮汁が西洋料理のソースのようにからんで
鯛が大きい分、一口の分量もチマチマとせず
江戸時代は鯛が大きかったと本で読みますが
その頃のお大尽になった気分です。

また、酒に合うんだ。
焼酎のお湯割りでは負けます、燗の日本酒だね。

骨まできれいにしゃぶりました。

もうこれで大満足「あとは要ラネー」
おなかが一杯、気分は最高

このころには、昼抜いておけば良かったとも
思っています。
我々は食べる量が少なめの人間ですから。

次に、蟹。

間違いなく明の赤絵の小鉢です。
といっても一辺が二寸五分、深さもそれくらいで
向こう付けなどには若干大きめになる器に、
蟹を殻から丁寧に外し、食べやすくほぐされた身が
山盛りで威張っているのです。

(普通ならカニもほぐしてあるとパスですがね)

一人分が大きめの蟹一杯でしょう。
もちろん(渡り蟹)

近年は毛蟹とか北海道辺りの蟹が人気のようですが
車海老とロブスターが違うように、日本料理では
やはりワタリと固く信じる私ですから

「うわ、ここで蟹かよ。
 出すんなら鯛の前だろ、もー食えねー」
とか思いつつ、食べると止まらない。

濃い味の鯛に負けない、しっかりと且つさっぱりと。

信じられないでしょ?

また酒が進むこと。

それから野菜か何かもあったはずですが、記憶が・・

まあ十分に堪能いたしておりますと、
最後は(相馬屋の名物となっております蕎麦茶漬)

もういい、ほんとカンベンして。

蕎麦の実の粥、
これがさらりとして、極上。

あとの水菓子に繋がります。


こんなコース、生涯で三本の指に入ります。

遠く広島から予約、ということで東北の味を見せ付けて
やろうと手ぐすねひいて待ってたのかな?
客のナリみてガックリしたでしょうけれど。

参りました。

そんな店がその平成6年に廃業されていたとは。

全盛の頃はどうだったんでしょうね。
まあ、我々は入れてもらえないよね。

人間の趣味が、時代が、変わろうとしていたのでしょう。
翌平成7年1月、神戸の大震災で日本が変わりました。

つまり、時代が変わろうという最後の鮮やかな夕日をみた
今、そんな気がします。