8年間付き合ってから、私は彼女と結婚しました。
その頃は、日本中がバブルの好景気でありまして、仕事は恐ろしいほどにありました。
やってもやっても、減るどころか、その何倍もの依頼が来ます。
「能力があるのなら精一杯それを生かし、能力がないのなら努力すればよし」
そんな座右の銘のような考えを持って、一途に仕事に集中することをよしとしていました。
負けず嫌いということではなく、出来ることを出来ないと認めてしまうことが恥ずかしかった、そういった気持ちだったと思います。
勝たなくてもいい、でも負けない。
それが妻へ向けた私の心からの誠意です。
大金の動く仕事に集中しながら、小さな町工場の儲からない仕事までキチンとこなし、私はお金では動かない、自らが正しいと思う事によって動く・・
そんなヒロイズムを持つことが、私を選んでくれた妻への恩返し。
「私は最高の男を選んだ・・」そう思って欲しい。
もちろん出世欲もありましたが、一番に考えていたことは「カッコイイ武士みたいな男」になる。
自分を律し、部下を育て、会社を大きくする・・それが私の「男子たる本懐」でした。
しかし、人間は(っていうか私は)それほど強いものではありません。
そのうち、偏頭痛というものを起こすようになりました。
たまの休日には、布団をかぶって寝ていてもと頭が割れそうになってしまいます。
薬の量は増え、そのせい頭がで朦朧としてきます。
でも私は唯一の和めるはずである家庭でさえ、気持ちを張って愚痴や不機嫌な表情をしないことを自分に命じ、常に笑っていられるような努力をしていました。
しかし、その緊張の糸が切れるのも時間の問題でした。
ある日、仕事中に睡眠不足と薬の飲みすぎで朦朧としていた私は、車で人を轢いてしまったのです。
救急車で運ばれるその人を、泣きながら見送り、その人が持つ家庭のこと、お子さんのこと
そのほかの全てのことのために、(どうか無事でありますように!)と祈り願いました。
幸いにも相手の人は軽症で済みました。
そして思ったんです。
私のしていたことは正しかったのだろうか?
人の命を奪ってしまうような生き方をしていて、それが男らしい?・・まさか!
では、もう少しちゃらんぽらんに仕事をしていれば良かったってこと?
いや・・そうじゃない。
何かが根本的に間違っている。
もっと楽しく、平和で、のんびりとして、生き生きとした人生はきっとあるはずだ。
私の勘違い人生に、やっと修正のきざしが見えてきました。
何が間違っていたのだろう?どうすればいいのだろう?そしてこれから、どんな風に生きていこうか?
まず、その会社を退職することにしました。
引継ぎに3ヶ月くらいかかり、その間、沢山のお客さんと話して勇気をもらい
妻といっぱい語り合いました。
そしてわかったんです。
私は女性をバカにしていたということが。
いえ、あの、鼻で笑うとか、愚かだと思っていた・・ということではないんです。
家庭とは、男が一人で支えるものであり、女性は黙ってついてきてくれれば上手くいく。「男性優越主義」とでも言ったらいいのでしょうか。
だから「そんなに無理したら病気になっちゃう」と言ってくれた妻に、
「女のくせに何がわかる?」と思い、結果的にわかってなかったのは自分だったり。
身を削って仕事をすることが男らしくかっこいいということが、
いつのまにか家族を(最も大切にすべき家族を)犠牲にしてしまっていたり。
一からやり直そうと思いました。
まずしてみようと思ったのは、「女性を知ること」「もっと自然体で会話をすること」そして
「ワガママや愚痴を、頑張って言ってみること」(頑張らないと言えなかったんです)
すごく大げさですが、私は生まれ変われると思いました。
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