宗教というもの ①

日本は世界でも稀な「無宗教国家」だとよく言われます。
生誕では神社、年末にクリスマス、結婚式では神式かキリスト教式（最近は人前式というのを選ぶ人達も増えてきたようです）そして死後は仏式・・。それぞれが形式であり、それぞれが日本の風土に根ざしていて、今やなくてはならない行事だとも言えそうです。

それでも、多くの家庭は先祖を祭る宗派を持ち、そのほとんどが仏教系の宗派なのではないでしょうか。

私はキリスト教（プロテスタント）の牧師の家に、長男として生まれました。
そしてキリスト教の教えによって育ち、それらをごく普通に受け入れます。
初めは何も疑問を持たず、次に酷く反発を覚え、４０歳を過ぎた頃になり、やっと「わかること」と「わからないこと」の区別や「わかった方が良いこと」「わからなくても良いこと」について、落ち着いて考えることが出来るようになったのです。
でも、最初に言っておきますが、私はクリスチャンではありません。これからも「なろう」とか「なりたい」とも思わないはずです。（未来のことはわかりませんが）

さて、今日のタイトルの「宗教観」ですが、私はキリスト教以外の宗教についてあまり知りません。
ですから、書いていくのは「キリスト教という宗教について」ということになります。読んでくださっている方々に、私はキリスト教を広めようとか、よく知って「学んでみませんか？」などと言うつもりは毛頭ありません。私は多くのキリスト教徒の方々に対して疑問ばかり持ちますし、正直に言うとあまり好きではないです。
でも、これまた多くの日本人はキリスト教について沢山の誤解を持たれていると感じているのです。
そういう方々に「キリスト教」を変な誤解から解き放とうというより、私は「一緒に考えませんか？」というスタンスで、幾つか思うことを書いてみたいと思いました。

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ところで多くの方が知るところの、
「汝の左の頬を打つものがあれば、右の頬を差し出せ」という言葉があります。
よく言われる「キリスト教の非暴力主義」です。
だけどすごく残酷ですよね。誰だってぶたれたら痛いし、プライドも傷つきます。聖書にはこのような、一見理不尽とも言える言葉がたくさん存在しています。

昔、年配の方がこのようなことを言われました。
「アメリカってキリスト教国だろ？それなのによく報復攻撃だと言って戦争をしかけるよな。全くいい加減な国だよな」
アメリカがいい加減だというのは多少わかる気もしましたが、報復ということについて、ちょっと考えさせられました。
誰でも、どのような人であっても、家族や友人を殺されたら悲しみます。そして殺した相手を憎みます。当たり前過ぎるくらい当たり前のことです。それが人間だから。
でも聖書は「許して、更に相手に攻撃させよ」と書かれているのです。こんなこと、普通の感情を持つ人間に求めても無理です。つまり聖書は、時に「到底ムリなこと」が書かれているわけです。

考えてみてください。
「毎日、食事を出来るだけとらずにいればダイエットに成功する」
そうすれば痩せられることがわかっていても、多くの人はそれが出来ずにいます。ダイエットに失敗した人はダメな人間でしょうか。
「一日１０時間、みっちり一日も休まず一年間勉強をしたら東大に合格出来る」
一年間誰とも遊ばずに息抜きもせず続けられる人はいるでしょう。けれどもそんな風に完璧に出来ない人が大半だと言えないですか？

つまり、どんなにご立派なメッセージがそこに書かれていても、私のような凡人とか、ごくフツーの人々にはムリ！なのであって、それが世間一般の考え方なのだ・・と思うのであります。そう考えると、「報復攻撃なんて絶対に良くない・・けど・・自分でもしちゃうだろうな」と。そう考えるのが妥当だと思いませんか。

でも実際に、「私はクリスチャンで、毎日神に祈っている」と言う人が「殺してやる～！」なんて青筋立てて怒り出したら・・何なの？？と思っちゃいますよね。よくわかります。私も同じように思うでしょう。

「おかげ宗教」という言葉があります。
お参りをしたり、神に祈ったから、望みが叶った・・神様のおかげだ・・だからこの宗派は素晴らしいというものです。
それは「熱心にお参りしたから」「お布施や献金をたくさんしたから」、だから望みが叶ったのであり、望みが聞き入れられないのは、何かが足りないせいだ、ということに繋がっていくことになります。
そうなるとちょっと恐いです。
それが正月の初詣くらいならいいのですが、極端な例ではカルト宗教の壷の購入（霊感商法とも言いますね）、身を粉にして新しい人を勧誘する・・ということまでになると大変です。

キリスト教の神は（と言うと、色々な神様がいるの？といった疑問が出てきてしまいますが、まあそこには突っ込まないでください）「全能の神」と言われています。宇宙の創造主、絶対的な権力者、全てを知るもの、とも呼ばれています。
さて、この「絶対的な神」への罪の概念が二つあるということを知らない人は多いと思います。
crime（犯罪）とsin(罪）です。

この二つははっきりと線が引かれている、ということではないですが、「犯罪」というcrime（クライム）は「人が生きていく上での人間同士の罪」と言えると思います。
殺人、盗み、暴力、詐欺・・など、いわゆる「法律で罰せられる罪」のことです。先に書いた戦争や報復攻撃などもこれにあたります。
sin（シン）については、あまり聞き覚えのない言葉だと思います。これは即ち「神に対する罪」を指します。昨年秋「シン　シティ」という映画が公開されましたが、ここにもしかするとシンの説明が描かれているのかもしれません。

「神に対する罪」・・欧米ではsinという言葉が罪としてきちんと犯罪と分かれているのですが、日本ではあまりなじみがありませんよね。
簡単に言うと「神を冒涜する」ということです。
では冒涜とは何か？――神様などいない、偉いのは俺様だ、お金が全てでありお金が万能だ、私には神など必要ない・・このようなことを指します。

ちょっと前の時代、マフィアが描かれている映画では、裏切った仲間や敵対勢力の人間を殺してしまった後に、ボスが胸で十字をきります。「神よ、お許しください」と言ったりしますよね。
あれは「私は犯罪を犯した、しかしあなた（神）を忘れてはいない」ということだと思います。

つまりキリスト教ではcrimeよりsinを重く見ています。
もし犯罪を犯しても神の前で頭を垂れ許しを乞うなら・・許されます。
しかし「神など存在しない。故に私は誰にも謝る必要がない」・・となると許されません。
そもそも、人は罪を犯すように出来ていますから、crimeを起こしてしまうのははしょうがないのですね。

では、神は人間についてどのように考えているのか。
何十億人もの人間のsinを全て把握されているのだろうか。
もし把握されているのなら、どうして天災を起こし、例えばアメリカで起こったハリケーンのように、そこに存在していたであろう敬虔なクリスチャンの命を奪うのか。

もしもそこでですよ、謙虚なクリスチャンだけが助かり、極悪人は命を落とした・・ということがあれば、我々は神の存在を明確に感じ取ることが出来るはずです。
しかしそうならない。何故か？

それは、「おかげ宗教」ではない事の証明、つまり
「神は偉大すぎて人間ごときの未熟な知恵で推し量ろうとしても無駄だから」
という事だと思うのです。

庭に蟻がいます。
私が庭に水撒きをします。
蟻は自分達の巣に大量の水が流れ込むのを感じれば焦るでしょう。
「晴れているのにどうして水が・・？」と（そこまで考えないでしょうけど）思ったりして。
でも、蟻の立場ではハリケーン並みの水害が起こってるはずですよね。
「何故、この大きな生き物は（人間は）僕達が何も悪いことをしていないのにこんなツライ目に遭わせるのだろう？」

ここで言いたいのは「自分には到底理解出来ないが、大きな力のある者は何か大きな不思議な理由を持って、結果的に私達を不快な目に遭わせることがある」ということ。
それを理解しようとするのは無駄なのです。

え？神はそんなにイジワルなのかって？
んー・・。
では人は、太陽に対して「イジワルだ！」と思うものなのでしょうか・・。

そもそも、人類が発生するよりずっと前に存在している太陽とか、地球を取り巻く自然というものに、「他の人ではなく、私だけのお願いを聞いて欲しい」と思うことが傲慢。都合の良いところだけを利用して、都合が悪くなると怒るというものおかしい話。

だから、クリスチャンの方々が「神様がこんなことをしてくださった」などという言葉を聞くたびに、「それ、ホントにそう思ってるわけ？？」などというイジワルな感想を持ってしまうのです。