このまえ、魚屋仲間と話していた中で「山本富士子」という名前を出した
「山本富士子なんて言っても、今時の人は知らないぞ」
たしかにそれはそうだ(*注 昭和20年代~30年代のトップ美人女優)
山本富士子と言えば思い出がある
昭和35年頃、我が家の向かえに隠居した大工のおじいさんがいた
父はそのおじいさんに、小さな修理仕事があると頼んでいた
仕事が終わって日当を払う段になると、おじいさんは
「お金なんかいらん、さしみ一皿とこれ一つでいい」と言って、酒を飲む仕草をする
それでいつも焼酎の二合瓶1本と刺身一人前が日当だった
その頃、我が家には雌の三毛猫(三毛猫はみんなメスという言う説があるが本当?)
がいて、これが毛並み良くすらりとしたネコで、ネコの世界でもそうとうモテたようで
生涯に100匹ほど子を産んだが、その子猫もみんな器量よしで全てもらわれていった
おじいさんが小上がりに腰掛けて焼酎を飲んでいると寄ってきて愛嬌を振りまくネコ
おじいさんも目を細めて「おまえは器量よしだなあ、人間なら山本富士子だ」というのが
口癖だった
そのネコ「みー」も、おじいさんも何十年も前に死んでしまった
だけど、この光景は今も心に残っているのです