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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた 武田家 85

2024年04月30日 10時03分18秒 | 甲越軍記
 春日、小幡らが笠原勢と戦っている間に、晴信は早くも六日羊の刻には軽井沢に入った。
この時、信州内山の代官、飫富兵部少輔虎昌、小室の代官、小山田備中守、岩尾の代官、真田弾正忠幸隆は上州勢三万三千が碓井へ押し寄せるとの報を聞き
板垣信形一手にて引き受けるとのこと、いかに名将とは言え五倍近い敵を支えるのは難儀の仕業、もし敗れることあれば病床の御大将苦しみ賜うことになるであろうと思えば、命ぜられることも無かったが、各々信方の与力として軽井沢に参じたのであった。
ところがすでに板垣の勝ち戦が済んだところであった、しかもそこには病床に伏せっているはずの晴信までもが一騎駆で着いていた。
一同これには驚いたが、さらに晴信の顔を見るに、病の人とは思えぬ顔色の晴れ晴れしさ。

信形の大勝利の報告を聞いて、晴信は「予は病に伏せっていたが、今日ここまで早がけに来て見ると、病の苦しみは消え去り、まことに爽やかな気分で力の湧き出るを感じた」と言い
「予は戦時に生まれ、戦場が合うようである」と満面の笑みで話した。

こうしているうちに甲州より晴信を追って、駆け付けた諸士が続々と集まり
その勢は一万にもなった。

その頃、上州勢は追い落とされて坂本まで逃げ帰ったが、そこには未だ一戦も交えぬ後方の上州勢が負け戦の思いもなく
後詰の大将たちは口々に「もし此度の戦で敗れるようなことがあれば、長野の始めの悪口が的中したことになる」
「我ら新手の一万六千で攻め登れば、敵は戦に疲れた小勢の者ども、入れ替わる兵もなくたちまち敗れ去るであろう
ここは再び攻め上って一戦すべし」と意気揚々に出陣する。






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