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「死の誕生」が生物の起源?……自己増殖マシーン「RNA」が「壊れる」ことで全てが始まった! 202306

2023-06-22 10:42:00 | 📗 この本

「死の誕生」が生物の起源?……自己増殖マシーン「RNA」が「壊れる」ことで全てが始まった!
 現代ビジネス より 230622  小林 武彦


 すべての生物に共通である「死」。
つまり、生物の進化の最初から「死」はインプットされていたことになる。

ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』の著者である小林武彦氏が「死の起源」を探る!
(本記事は小林武彦『なぜヒトだけが老いるのか』から抜粋・編集したものです。)

🧬「よどみ」に生まれた生命のタネ「RNA」
 一番最初の生物を作った進化とは、いったいいかなるものだったのでしょうか。これは、コンピュータにたとえると「プログラム」のようなものです。プログラムは、簡単に言うと規則です。たとえば「AとBを足して平均をCとする、それを繰り返す」みたいなものです。

 進化のプログラムの最初は、単純な「物質」からのスタートです。
地球上の生命は38億年前に熱水が噴き出し、温度が高く化学物質が常に供給されるような比較的小さな「よどみ」で起こったと考えられています。このような場所は化学反応が起こりやすいのです。生き物は、昔から温泉が好きだったということです(笑)。

 そこで最初にできたのは、RNAやアミノ酸といった有機物です。有機物とは、生命の材料となる物質の総称です。

 RNAは将来親から子へ受け継がれる情報、つまり遺伝子となる物質(遺伝物質)です。新型コロナウイルス感染症のワクチンができたときによく耳にしたメッセンジャーRNA(mRNA)のRNAです。アミノ酸は、生物の体を構成するタンパク質の材料となります。

🧬RNAの3つの性質
 まずRNAです。RNAには、遺伝子の基となる3つの性質があります(図1‒2)。

図1-2 RNAの3つの性質

 1つ目は、自身を複製して子孫に継承する「自己複製能」です。
RNAは4つのブロック「塩基」(G、A、U、C)がつながったひも状の分子です。さらにGはCと、AはUと結合できます。そのため、図1‒2で示したように一方のRNA鎖を鋳型として、それとちょうど相補的な鎖(鋳物)を、時間をかけて作ることができます。この鋳型と鋳物(G-C、A-U)の結合は弱いので、熱やアルカリで剝がれます。すると、それぞれがまた鋳型として働いて相補的な鎖を作ります。

 このようにして自分のコピーを次々に増やします。「型」にチョコレートを流し込んで、同じ形のチョコレートをたくさん作るような感じです。

 遺伝子として必要な2つ目の性質は、変化することです。
ただコピーを作るだけでは氷の結晶が大きくなるのとあまり変わりませんね。RNAという物質は、都合がいいことに反応性に富んでおり、化学反応を触媒したり自身の分子を切ったりつないだりする「自己編集能」を持っています。この性質によって、G、A、U、Cの順番や長さが変わりいろいろな反応を触媒できるような分子に変化できます。

 つまりRNAは、自分と少し違う多様な分子を作り出すことができるのです。チョコレートの「型」が勝手に変化して、いろいろなチョコレートを作り出していくわけです。

 3つ目の性質は、壊れやすいということです。せっかくできても、時間が経つとまたブロックに戻ってしまいます。チョコレートにたとえると、溶けて形がなくなるような感じになります。これは次に述べるように、変化を加速する上で非常に重要な性質です。

🧬「死」の誕生
 このような変化を生み出す自己増殖可能なRNAが生命のタネ(種)となり、進化のプログラムが動き出します。

 進化のプログラムとは、簡単に言うと「変化と選択」の繰り返しです。「変化」はいろいろな分子ができること、多様性の獲得です。専門用語では変異と言います。「選択」は多様 なものの中で、たまたまその環境で複製しやすい、増えやすいものが選ばれて残ることで す。適応と言ってもいいと思います。

 このプログラムを動かし続ければ、やがてすごく増えやすい分子が誕生することは、容易に想像できますね。

 実際には、もう一つ重要なことがあります。

 それは、新しいRNAを作り出すための材料の供給です。作るだけではやがて材料が底をついてしまい、プログラムは止まってしまいます。

 生命の誕生は、奇跡的に良い条件が揃った小さな温泉の水たまりのような空間で、物質が濃縮された場所での出来事です。
 現在の科学力をもってしても試験管内でゼロから生命を作れないことを考えれば、大元の材料から作るのは大変で、RNAのブロックの恒常的な供給がないところで新しい組み合わせを作るのが難しいことは想像できます。

 そこでブロックを供給する方法は、一つしかありません。それは古い分子が速やかに分解されて、またブロックに戻ることです。つまりリサイクルです。

 RNAは先ほどお話ししたように、壊れやすい性質を持っています。作られては壊されて、次から次へと作り替えられます。その中でより増えやすい分子が自身のコピーを増やしていきます。
 あるいは、いくつかの違う性質を持ったRNA分子が共同で働いたりお互いにつながったりして、単に1本のひもではなく、複雑な構造(立体構造)を作ったのかもしれません。

 たとえば自己複製反応を助けるようなRNAや、切ったりつないだりの「編集」のみを
専門に触媒するようなRNAも登場したと思われます。まさに、RNAによるRNAのた
めの「RNAワールド」が展開されました。

 このように、最初の「生命のタネ」であるRNAは自己増殖マシーンでした。しかもそ
れらの性質は、RNAという「物質」の4つのブロックの並び順による「デジタル情報」で決まります。

 この自己増殖マシーンの進化のプログラムを動かしたのは、多様な試作品ができては壊されて材料を供給すること、つまり「壊れること」です。これが進化の原動力となり、「死の起源」となりました。

「死」はここから始まったのです。

ただし、RNAは物質であり、まだ生物ではありません。



ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者・小林武彦氏の待望の最新作『なぜヒトだけが老いるのか』(6月22日発売)は、ヒトだけが獲得した「長い老後」の重要な意味を生物学で捉え、「老い」の常識を覆します!




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