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【0901/57:ダム問題】(芹谷ダム)ダムにほんろう半世紀:予定地の多賀町水谷地区

2009-01-10 22:57:22 | Weblog

【写真:ひさしを支える紅殻の柱。水谷など3集落で22軒に取り付けられた=6日、多賀町水谷】

■家の補修先送り/道は狭く古いまま

 46年前に始まったダム計画が止まる。県営芹谷ダム。水没予定地の多賀町水谷地区の人たちは、半世紀近い人生をダムに振り回されてきた。置き去りにされた地区を歩いた。(高久潤)

 元日。山口照子さん(77)は今年も午前5時から、雪かきで新しい年を迎えた。地区の中心にある浄願寺から県道まで、約50メートルの坂道に積もった雪を取り除く。

 寺の境内は、帰省で地区に戻ってきた人の駐車場に使われる。「正月は息子や孫が帰ってくる。お客さんに雪かきをさせられんよ」。つかの間のにぎわいを楽しみに、隣家と約1時間かけて除雪した。

 夫の清太郎さん(83)と2人暮らし。清太郎さんの祖父が建てた家に、2人の息子たちの家族8人が帰省してきた。「ダムの話が持ち上がった時は30代。それが80代になり、孫とここで正月を迎えられるとは思わなかった」と清太郎さんは話す。
   ◇   ◇
 水没するとされたのは、芹川支流の水谷川と山に挟まれた水谷地区を中心にした24戸。地区の住民は47人。65歳以上が半数以上を占める限界集落だ。

 計画当初は、地区のあちらこちらに「ダム反対」の看板が立った。しかし、年号が平成に変わるころから、住民に疲れとあきらめが広がった。03年、県と地元などはダム建設の基本協定を締結。予備調査の開始からちょうど40年が過ぎていた。

 この間、住民らは水没するかどうか分からない未来に、家の補修を先送りしてきた。上水谷の区長を務める谷口俊夫さん(59)は「変わったのは、茅葺き(かやぶ)からトタンになった屋根くらい」と話す。

 築100年を超える家屋も多い。柱の古さやすきまのできた板目など、老朽化が目につく。その家屋を雪が傷めつける。

 06年の年末。庭で知人と話していた宮下政昭さん(77)の耳に突然、バーンという音が飛び込んできた。見ると、大雪の重みに耐えきれず、ひさしや屋根が崩れていた。その冬、集落内に被害が続出し、宮下さんは「町中の大工が年末年始に集落に集まった」という。

 古びた家屋の軒をよく見ると、真新しい紅殻が塗られた柱や補強材が分かる。06年の大雪をきっかけに、多賀町がひさしを支える雪害対策として、約233万円かけて取り付けた。

 屋根の雪おろしは欠かせない作業だが、高齢者には酷だ。宮下さんも、8年前に患った脳内出血で左半身が不自由になり、雪下ろしができなくなった。「雪の質が年々重くなっている」「屋根に山から飛んできた杉の種子から芽が出始めた」――。きしむ家の下で住民らは口々にこぼす。
   ◇   ◇
 県道は集落に入った途端に狭くなる。車1台が通るのが精いっぱい。芹谷地区ダム対策委員会水没部会長を務める谷口伊佐男さん(71)は「舗装が傷んだら、そこだけ直す。子どものころと道幅は変わらないが、高さは数十センチ上がった気がする」と話す。

 県河川開発課によると、県道はダム建設の直前に付け替え工事をする計画だった。担当者は「道沿いに家が並び、拡幅工事もしづらく、結果的に何十年も手つかずになってしまった」と話した。

 宮西重明さん(66)、文子さん(61)夫妻は、畑でジャガイモと大根を育てている。日ごろの食卓に載せる食材だ。だが、最近は山から下りてくる猿の被害が増えた。さくをつくっても効果がなく、「猿の食い残りを食べているようなもの」と嘆く。

 10年ほど前、水没するまでの住まいとして集落内の中古の家を買い、引っ越した。文子さんは「ダムができないなら、老後のためにもっと便利な場所に家を建てたかった。この年齢ではローンも組めない」と嘆く。「ダムができれば全部解決するのに……」。
   ◇   ◇
 山口清太郎さんは最近、50代と40代の息子たちとこの家の未来を話すようになった。県から補償をもらい、傷んだ柱や床などを直して、自然豊かで空気のいい水谷地区に、息子たちが戻ってくれたら。照子さんとそんな願いを語り合う清太郎さんがつぶやいた。

 「ダムのことはもういい。50、60代の人がこだわるのはわかるが、自分には残された時間はあまりない」

 芹谷ダム 総貯水量560万立方メートルの県営の穴あきダムで、総事業費は約398億円。芹川沿いの彦根市や多賀町への洪水対策として計画された。1963年に県が予備調査を開始。水をためる通常型から穴あきダムに計画を変更したのに伴って、02年に予定地を芹川本流から支流の水谷川にした。県は03年に地元と基本協定を締結。だが、昨年10月、河川整備計画の策定の中で他の治水策を優先し、同ダム建設中止の方針を固めた。水没地域の水谷地区など計27戸が移転対象地域で、多賀町はすでに約2億6千万円を支出して移転用地を取得している。

(1月10日付け朝日新聞・電子版)

http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000901100001

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