今更ながら佐野眞一のノンフィクション『東電OL殺人事件』を読んだ。
かなり有名な事件でとても印象に残っていて、この本も当時読みたいと
思いつつ機会を逃がしていたのだけれど、先日図書館へ行った際に
偶然見つけて借りてきた。
慶応大学経済学部を卒業し、東京電力で管理職まで務めたエリートOL
渡辺泰子が、夜は渋谷円山町の街角で客を引き売春を繰り返し、アパート
の一室で絞殺死体となって発見される・・・。
昼と夜の顔との落差がスキャンダラスな関心を呼び、彼女のプライバシー
を踏みにじる様々な報道が多々なされた。
年収が一千万はあったと言われる彼女が、なぜ売春婦となり雨の日も
風の日も客をとり続けたのか。
この事件は興味や親近感を持った同年代の女性がとても多かったと言うが、
私も彼女の心の闇の深淵に近づいてみたいと思った一人だ。
東電での仕事の後円山町で毎日4人の客をとる事を自らのノルマと課し、
公園や駐車場でも性交を厭わず最後には二千円で体を売った。
ホテルで放尿や脱糞をしたり、拒食症でガリガリに痩せていて、終電で
菓子パンをむさぼり喰いおでんの汁を啜っていたというその姿に、形容
し難い巨大な虚しさを感じずにはいられない。その闇は余りに大きく深い。
彼女の遺体は、1997年3月19日に渋谷区円山町の木造アパートの1階で
発見された。
犯人として逮捕されたのは現場近くに住むネパール人、ゴビンダ・プラサド
・マイナリ。その逮捕には始めから彼を犯人と決めつけた一方的な捜査が
感じられ、著者の佐野眞一は真相を究明すべく様々な角度から事件を掘り
下げる。
どう見ても被告を犯人とする決め手は弱く冤罪の匂いだらけなのに、直接
証拠が何も提示されないままゴビンダさんは犯人とされる。
この本では彼に無罪判決が出て涙にくれるところで終わるのだけれど、
その後が気になり調べてみたところ、検察が控訴し東京高裁では無期懲役
判決が下り現在再審請求中との事。
請求から3年経った今も審理は再開されておらず、現在日本国民救援会が
支援中だ。
裁判中裁判官が居眠りを繰り返していたり、児童買春で有罪になり罷免
された裁判官もいたりと、そういう奴らが人一人の一生を左右する権利を
持っているという事がとても怖い。
日本の裁判制度そのものにも疑問を強く感じる事件だ。
ゴビンダさんが無実ならば、本当の犯人はさぞほくそ笑んでいる事だろう。
「それでもボクはやってない」じゃないけれど、正義なんてどこにもない
のか・・・。
渡辺さんの遺体は死後11日経ってから発見されたとの事で、亡くなったのは
3月8日の未明とされている。
奇しくも命日近い時期にこの本を手に取り改めて事件に対して思いを寄せた
事に、何となく彼女に呼ばれたような感を覚える。
意味のない思い込みだとわかっていても。
彼女をあんなにも駆り立てていたのは一体何だったのか。
懲罰的超自我なんて難しい事は自分にはよくわからない。ただ彼女の叫びの
ようなものはすごく身近に感じる。
自分を極限まで追い込む事でしか生きる事が出来なかった彼女は、それでも
断じてあのようにして命を奪われる理由はないが、あのままの生活を続けて
いたなら何れ別の形で破綻していたようにも思う。
彼女を包んでいたのは絶望と破滅でしか無かったのか。
深い、どこまでも深い・・・・。
渡辺さんの冥福を心から祈ります。
かなり有名な事件でとても印象に残っていて、この本も当時読みたいと
思いつつ機会を逃がしていたのだけれど、先日図書館へ行った際に
偶然見つけて借りてきた。
慶応大学経済学部を卒業し、東京電力で管理職まで務めたエリートOL
渡辺泰子が、夜は渋谷円山町の街角で客を引き売春を繰り返し、アパート
の一室で絞殺死体となって発見される・・・。
昼と夜の顔との落差がスキャンダラスな関心を呼び、彼女のプライバシー
を踏みにじる様々な報道が多々なされた。
年収が一千万はあったと言われる彼女が、なぜ売春婦となり雨の日も
風の日も客をとり続けたのか。
この事件は興味や親近感を持った同年代の女性がとても多かったと言うが、
私も彼女の心の闇の深淵に近づいてみたいと思った一人だ。
東電での仕事の後円山町で毎日4人の客をとる事を自らのノルマと課し、
公園や駐車場でも性交を厭わず最後には二千円で体を売った。
ホテルで放尿や脱糞をしたり、拒食症でガリガリに痩せていて、終電で
菓子パンをむさぼり喰いおでんの汁を啜っていたというその姿に、形容
し難い巨大な虚しさを感じずにはいられない。その闇は余りに大きく深い。
彼女の遺体は、1997年3月19日に渋谷区円山町の木造アパートの1階で
発見された。
犯人として逮捕されたのは現場近くに住むネパール人、ゴビンダ・プラサド
・マイナリ。その逮捕には始めから彼を犯人と決めつけた一方的な捜査が
感じられ、著者の佐野眞一は真相を究明すべく様々な角度から事件を掘り
下げる。
どう見ても被告を犯人とする決め手は弱く冤罪の匂いだらけなのに、直接
証拠が何も提示されないままゴビンダさんは犯人とされる。
この本では彼に無罪判決が出て涙にくれるところで終わるのだけれど、
その後が気になり調べてみたところ、検察が控訴し東京高裁では無期懲役
判決が下り現在再審請求中との事。
請求から3年経った今も審理は再開されておらず、現在日本国民救援会が
支援中だ。
裁判中裁判官が居眠りを繰り返していたり、児童買春で有罪になり罷免
された裁判官もいたりと、そういう奴らが人一人の一生を左右する権利を
持っているという事がとても怖い。
日本の裁判制度そのものにも疑問を強く感じる事件だ。
ゴビンダさんが無実ならば、本当の犯人はさぞほくそ笑んでいる事だろう。
「それでもボクはやってない」じゃないけれど、正義なんてどこにもない
のか・・・。
渡辺さんの遺体は死後11日経ってから発見されたとの事で、亡くなったのは
3月8日の未明とされている。
奇しくも命日近い時期にこの本を手に取り改めて事件に対して思いを寄せた
事に、何となく彼女に呼ばれたような感を覚える。
意味のない思い込みだとわかっていても。
彼女をあんなにも駆り立てていたのは一体何だったのか。
懲罰的超自我なんて難しい事は自分にはよくわからない。ただ彼女の叫びの
ようなものはすごく身近に感じる。
自分を極限まで追い込む事でしか生きる事が出来なかった彼女は、それでも
断じてあのようにして命を奪われる理由はないが、あのままの生活を続けて
いたなら何れ別の形で破綻していたようにも思う。
彼女を包んでいたのは絶望と破滅でしか無かったのか。
深い、どこまでも深い・・・・。
渡辺さんの冥福を心から祈ります。
彼女の気持ちは計り知れないけれど、そこに至る過程を思う時深くやりきれないものを感じずにはいられません。
桐野さんのグロテスクは、ほんとにグロテスクな作品ですよね。しかし悲しいながら現実の方が、もっと残酷で醜いものだと思ってしまう日々ですが・・・。
事件当時、僕はまだランドセルを背負っていた頃だったので、東電OL殺人についての報道は記憶にありませんが、先日ふとした経緯でこの事件を知って、得体の知れない関心を持つようになりまして、それで昨日、実際に事件現場の喜寿荘101号室まで足を運んできたのですが、泰子がたどったルートをなぞっていくうちにまるで僕が自主的にこうした行動をとっているではなくて、それこそ泰子に呼ばれたような、妙な違和感を感じたんです。
円山町は元花街で、非常にセックスと因縁の深い土地らしいのですが、肉体的にも精神的にも娼婦失格の泰子がこの場所から一歩も外に出ずに売春をおこなっていたのは泰子も土地の磁場みたいなものに呼ばれたからかもしれませんね。
なんだか、未だに思い馳せる人がいて安心しました。
社会的にはとっくに風化している事件なのに。
社会的にはとっくに風化しているはずの事件ですが、これって未だに関心を寄せている人が少なくないって事ですよね。私や智幸さんのように。
円山町のホテル街をご自分で利用された事はありますか?(笑)
あそこは愛と欲の蠢く場所のように思います。土地の磁場・・確かにある気がする。泰子も私達も皆、その渦の中にいつの間にか引き寄せられてしまったんでしょうね。
私はまだ喜寿荘へ足を運んだ事はありません。智幸さんはあの場所から何を感じ取ったでしょうか?
泰子地蔵には今でも花を手向ける人がいるのかな・・・。
コメント嬉しかったです。ありがとうございます(^-^)
それは驚きです。事件からすでに11年以上も経過しているのに……。
ホテル街を実際に利用したことがあるかどうかについてはご想像におまかせしますが(笑)、たしかにあの場所の愛と欲の蠢く性的な空気はかなり過剰で、日も暮れないうちから、手をつないでホテル探しをする若いカップルや、あきらかに金銭が介在してそうな年の差カップルとすれ違う度に、妙な気後れを感じてしまうほどでした。
でも、円山町は不思議なところで、真新しくて綺麗な建物の合間合間に時間の流れに取り残されたような古い建物が点々としていて、まさに肉体だけ衰えてその他の時間は止まったままの泰子に重なるところがありました。きっと彼女にはこの場所、居心地が良かったのだと思うし、喜寿荘にしたって建物自体は時間の経過で老朽化しても未だに存在だけは続いていて。
語弊があるかもしれませんが、11年前に泰子が握ったであろうドアノブを握りながら思ったのは、彼女には相応しい死に場所だな、と。
泰子が犯人に抵抗した形跡はなかったそうですから。
……長々と失礼しました(笑)。
ではでは、おやすみなさい。
このブログを書く時今更かな・・とは思ったものの、泰子に呼ばれた私は(笑)書かずにはいられなかったのですが、その反応を知って自分だけではなかった事に驚きと感慨を持ちました。
>泰子が犯人に抵抗した形跡はなかったそうですから。
泰子は自分でどうする事も出来ないあの地獄から、何かが解き放ってくれるのを待っていたのではないでしょうか。
いや、地獄と思うのは浮世の人間だけで、彼女はそんな次元も飛び越えていたようにも思いますが。
目に見えぬ人の情念や欲は、途轍もないエネルギーを帯びていると感じます。
お互いその暗黒面に陥らぬ様、ご用心、ご用心・・・(笑)
泰子の母親は娘の異変を薄々感じながら、どうする事も出来ずに最悪の事態を招いてしまったのではないでしょうか。
ただそれは娘を愛していなかったとか、そんな単純な思いではなかったように私は思います。
から目をつけられてもしょうがないと。円山町という闇の世界へ何のためらいもなく無防備に入っていった結果ではないでしょうか?怖いことです!
何をしようと決して償いきれるものではありませんが。真犯人が今更捕まるとも思えませんし。
渡辺さんは自分をあそこまで追い込まずにはいられない状況だったのだと、私は思っています。