「トゥレット友の会」ブログ         ~トゥレット症(チック症)に関する情報発信と活動報告~

「トゥレット友の会」は、トゥレット症(チック症)の啓発と、  患者やその家族への支援を目的としたボランティア団体です。

チックの治療法ーNo.2 心理的療法

2018年09月25日 | トゥレット(チック)症の治療法

No.2 心理的療法
チックの治療法として心理的なアプローチによる行動療法があります。

1.チックのための包括的行動的介入療法(CBIT)

英語のCOMPREHENSIVE BEHAVIORAL INTERVENTION FOR TICSの
頭文字を取って、「CBIT」とも呼ばれています。

欧米では、薬物療法に並んで心理的アプローチによる行動療法が主流です。
2001年には米国トゥレット協会がCBITの効果を検証するため、
大規模な調査をおこなった結果、一定の改善効果を確認することが出来き、
アメリカではCBITが先行しています。

しかし、日本の医療土壌においてCBITが浸透していないため、
医師も患者もその療法があることさえ、知りません。
そのため、この行動療法に着目した日本の医師らが、
数年前からCBITの導入を試みました。
その第一歩として、今年(2018年)9月30日に
「CBIT」のセラピストガイド(翻訳版)が刊行されます。


<著書の紹介>
チックのための包括的行動的介入(CBIT)セラピストガイド

  -トゥレット症とのつきあい方 -
       監訳:金生由紀子・浅井逸郎

    (丸善出版)¥4,860

また、薬物療法とCBITとの複合的治療は単独治療よりも高い効果を発揮することが、

「米国トゥレット協会のインパクトサーベイ(2018年)」で明らかになっています。

*薬物による単独療法での効果 :大人47% ・ 小児44%
*CBITによる単独療法での効果 :大人36% ・ 小児40%
*投薬とCBITの複合療法での効果:大人77% ・ 小児80%

 

<CBITの特徴>

◆CBITは、ハビットリバーサルの応用編とリラクセーションです。

流れとしては、8セッションのフルセッションにフォローアップが3セッションあります。

 ★第1段階 1~8セッション(期間は約10週間)
       患者さんの改善状態に応じて治療期間が前後します。
 ★第2段階 9~11セッション(追加のフォローアップ)
       8セッション終了後、3ヵ月間のトレーニングの間に3回行う。

最初のポイントはチックに対する本人の気づきです。
次に、チックと前駆衝動について、本人に意識を持たせることが鍵になります。
従って、どちらかと言えば、突発的に起こるチックの患者さんよりは、
「チックが出そう・・・」
「ムズムズして、チックを出したい!」といった
前駆感覚のある方の方が取り組みやすいまもしれません。

いずれにしても、最初のセッションで前駆感覚を認知することから始めますので、

突発的なチックの患者さんにおいても、心配はないとのことです

②次に、ハビット・リバーサル・トレーニングです。

 これは、拮抗反応を利用した行動療法で、CBITの中核になります。

③次に、リラクセーションです。

 ・セクション4で「複式呼吸法」を学びます。

 ・セクション5で「漸進的筋弛緩法」を学びます。

呼吸法と筋弛緩法を上手く利用して、チックを出したい感覚を外に逃がしていき、身体をリラックスさせます。

④最後に再発防止を学びます。


◆このように、数週間かけて意識と行動の変化を積んでいく療法ですので、
即効性を望むものではありません。以下のようなタイプの方に効果が顕著です。

根気や真面目さなど、性格を考慮する必要があります。

・本人の治したいという意気込みや強い意思が必要です。

 但し、本人の意欲とは関係なく、効果の出やすいケースと出にくいケースとがあるようです。

・本人の治療意識が不可欠なので、年齢としては9歳以上に有用性があると言われています。

 年齢的に幼いと、CBIT療法をしている意味が分からないので、効果がありません。
 また、脳の発達を考えると、若年層のほうが効果は顕著であるとのことです。 

◆CBITは必ずしも全ての人に効果があるものではありません。
・チックが重症な方や怒り発作を伴う方は効果が出にくいといった声もあります。

・併存症(ADHA・ASD等)や精神障害、社交性の問題がある場合、
 トレーニング上、困難を伴うため、良い結果にならないこともあります。


<CBITの療法をおこなう機関>

CBITをおこなう資格として以下の条件があるため、施術者が限定されます。
  ①CBIT養成のトレーニングを受けた者。
  ②指導者は医師、臨床心理士、作業療法士、理学療法士、看護師等が
   対象となりますが、チック患者の臨床経験が3人以上あること。

現在、日本ではCBIT療法が出来る医療機関は極めて少なく、
ハードルが高いと言わざるを得ません。
医療機関としては、現在、日本では以下があります。

 ★東京大学医学部附属病院 / こころの発達診療部

 ★独協医科大学埼玉医療センター/ 井上 健先生(2023年5月追記)

→井上先生は、「誰でも、気軽に、安価で」受けられるよう、【リモート&グループ】によるCBITのセッションを推進されていらしゃいますので、遠方からでもオンラインで本プログラムに参加できます。

 ★一般社団法人 日本CBIT療法協会(2020年7月追記)

 ★瀬川記念小児神経学クリニック ⇒ 一般社団法人 日本CBIT協会
→瀬川記念小児神経学クリニックでは、CBITを「一般社団法人日本CBIT協会」としています。
CBITは8セッションのパッケージプログラムですが、初回を当クリニックで体験後、CBITを継続できそうだと判断されたケースにおいて、2回目以降のセッションを、「日本CBIT療法協会」との契約にて受けます。


2.曝露反応妨害法(ERP)
→ ERP:Exposure and response prevention

強迫性障害の治療法の1つとして曝露反応妨害法という技法がありますが、
チックにも効果的であると言われています。

突発的なチックではなく、不安・習慣化・強迫観念が伴うようなチックには、
このERPが有効かもしれませんね~💛


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投薬治療に抵抗がある方は、上記の行動療法を検討されるのも
一つの策ではないでしょうか。



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