「トゥレット友の会」ブログ         ~トゥレット症(チック症)に関する情報発信と活動報告~

「トゥレット友の会」は、トゥレット症(チック症)の啓発と、  患者やその家族への支援を目的としたボランティア団体です。

チックの治療法ーNo.6 ニューロ モデュレーション

2018年09月28日 | トゥレット(チック)症の治療法

No.6 ニューロ モデュレーション

ニューロ モデュレーションというのは、
脳神経に外的刺激を働きかける治療法で、外科的治療と言えます。
近年、以下の治療法が紹介されています。

1.経頭蓋磁気刺激治療(TMS)*TMS=Transcranial Magnetic Stimulation
 TMS=Transcranial Magnetic Stimulation

これは磁気の刺激を外部からかける方法の1つで
痙性対麻痺の症状に対しておこなわれている治療法です。
近年、脳のリハビリや精神疾患の治療としても注目を浴びており、
チックへの効果もあるとのことで、紹介されています。

磁気によって大脳を刺激して、間接的に脳を活性化させます。
痛みや傷などの苦痛はなく、
浸透性が低い方法での刺激のため、
リスクも低いとのことです。

TMSを受ける回数としては、1セット30回が目安だそうです。
そうすると、週に1~2回施術したとすると、
治療期間は半年前後と、比較的短期で効果が得られるかもしれません。
勿論、効果の有無は個人差がありますので、
治療を進めながら様子を見るといいのではないでしょうか。

但し、保険適用外の治療なので、治療費は高額になります。


2.脳深部刺激療法(DBS) *DBS=Deep Brain Stimulation

この治療法は、脳の深い部分に電気刺激を与えて
チックを緩和・消滅するという治療法で、
チックの難治症状に対して施術されています。

◆医療機関
実際の手術は脳神経外科での施術になりますが、
脳神経内科が窓口になることもあります。
日本では、東京都小平市にある国立精神・神経センター病院が中心になって、
チックに対するDBSの治療や研究をされています。
現在では、その施術を学ばれるお医者様も増えているようですので、
他の医療機関でも施術が可能になって来ているのではないでしょうか。

NPO法人日本トゥレット協会の公式サイトの【医療機関】で検索し、
直接、脳神経内科、脳神経外科のある医療機関にお尋ねになってみてください。

◆DBSの現在
DBSは、これまでにも難治性疼痛や不随意運動症(本態性振戦・パーキンソン病・
ジストニア)の治療法として施行されています。
世界中ではすでに125,000人以上の患者さんがこの治療を受けられています。
日本では、2000年4月に健康保険が適用されました。

しかし、チックの治療法としての歴史は浅く、
日本では1999年の成功例を皮切りに施術が増えてきました。
とは言え、海外でのDBS件数は多いですが、本邦は決して多いとは言えません。
(2010年2月の報告では4件。この5年間では7件と聞いています)

しかし、近年、厚労省からの助成も受け、
DBSの研究や治療が強化されてきたとの報告がありました。
また、「トゥレットのDBSは、これまで数多く行われてきたパーキンソン病の
DBS手術と比べて機器を埋め込む場所が少し違うだけなので、
パーキンソンのDBSに慣れている医師にとってはそれほど難しいものではない」
といった医師のコメントもあるそうです。
現在、DBSの治療を検討されている方には朗報ですね~💙

◆DBSの治療内容
ジストニアの治療におけるDBSについては、以下のように説明書きがあります。
「DBS装置は電極、連結ワイヤー、
バッテリーを含むパルス発生装置(脳のペースメーカー)からなり、
電極は脳の刺激目標点に留置され、
パルス装置は前局部鎖骨下あるいは腹部に埋め込まれます。
連結ワイヤーは頭部から耳の後方の皮下を通りパルス発生装置へつながります。
バッテリーは3年毎に交換しなければならず、定期的に手術が必要です」

トゥレット症の治療も同様の手術になりますが、
「電気刺激を与える部位としては、視床、淡蒼球、内包前脚、測座核」とのことです。
(*2010/02/11 トゥレット症候群の医療を考えるシンポジウム 於:国立精神神経センター病院 )

手術は頭蓋骨に50円玉くらいの穴をあけて電極を入れます。
また、電気刺激は1度与えれば終わりというものではなく、
上記のとおり、パルス発生装置を体に埋め込み、定期的に微電流を送信します。
このようにメンテナンスも必要になりますので、大きな治療と言えるでしょう。

◆治療効果とリスク
効果は高いのですが、リスクがゼロというわけではありません。
・脳内での出血
・脳付近での脳脊髄液の漏れ
・感染症
・植込み材料に対するアレルギー
・手術部位での痛み(リスクの解説:Medtronic)

また、脳を刺激することにより発生する副作用もあるようです。

効果もリスク(後遺症・副作用)も人様々であり、慎重な選択を要するでしょう。

◆手術開始までと入院期間
DBS手術の場合、適応となるか否かの判断を下すため、
半年間ほど外来受診をしていただき、様々な検査を行う必要があるそうです。

入院期間の目安は、 国立精神・神経研究センターでは約2週間とのことですが、
予後が良い場合、5日ほどで退院された患者さんもいらっしゃるとのことですので、
個人差があることもご了承ください。

◆手術費
費用に関しては、医療機関によって差があります。
DBSの手術自体は保険適用ですが、
チックの治療となると、どうなのでしょう?分かりません。
病院によっては、「ジストニア性チック」の手術として
保険適用になるとの情報もありますので、各医療機関にお尋ねください。

<高額療養費補助制度の適用>
DBSは高額医療になるため、高額療養費補助制度を利用することが出来ます。
所得区分や年齢によって、支払い額は違ってきますが、
現役並み所得者(年収370万円~約770万円)の場合ですと、
自己負担額は約8万円余り(80,100円+〔総医療費-267,000円〕×1%)です。
詳しくは→ http://hoken.kakaku.com/insurance/gma/select/high-cost/self-pay/

但し、高額療養補助制度は保険診療分に対する助成ですので、
個室の差額代や食事代は補助の対象となりませんのでご留意ください。

<高額療養費助成の申請先>

★社会保険(社保)→健康保険証に記載されている協会(もしくは組合)
・全国健康保険協会(協会けんぽ)
・組合管掌健康保険(組合健保)
・共済組合
★国民健康保険(国保)→住所のある市役所(もしくは区役所)

◆DBSの必要性
チックは軽症のものばかりではありません。
重度で難治性のチックのケースでは、
自傷他害の運動チックや、絶叫等、大音量のチックのため
社会生活が難しく、日常生活にも困難を来します。

そういった患者さんにとって、DBSは救いの一手となります。
術後は、生活の安穏を得ることが出来、将来に希望を持って
新たなスタートを切られている患者さんがいらっしゃいます。

今後、チックに対するDBS治療が出来る医療機関が増え、
手術へのハードルが低くなることを切に願うばかりです。



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