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 経営理念の研究(VERI研)と 法人の総務(hi-soumu)

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ベン&ジェリーの価値観と良心 (1)

2006-10-23 15:00:11 | VERI研
                       -VERI-情報0610

 紅葉を楽しむ季節が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 P.F.ドラッカーの著作「現代の経営」(1954)には、次のような社会的責任の指摘があります。
「事業の目標として利益だけを強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤り導く」。

「若者を引き留めるためには、キャリアや生活保障や経済的な報酬の約束だけでは、不十分である。ビジョンと使命を与えることができなければならない」。

「最も重要な結論は、社会のリーダー的存在としてのマネジメントの社会的責任とは、公益の利益をもって企業の利益にするということである」。

ドラッカーは、そのビジョンと使命を明らかにして企業を運営し、社会において企業が役割を担うことによって利潤を生み出すことは、経営陣の社会的責任ですよと主張しているわけです。

社会において、私たちの会社はどのような役割を担うべきなのか、自分はいったいどれだけの事をすべきなのか、これらに関しては、自分自身がどう判断するかという良心に関わる部分が大きく影響します。

今回は、ベン&ジェリーズ・ホームメイド社の経営理念を探求しながら、社会的責任に迫ってみたいと思います。

BEN & JERRY'S は、「米国の良心」と言われたブランドで、1970年代後半に創業して20年間で1億6,000万ドルに達するアイスクリーム企業に成長しました。

創業者ベンとジェリーの共著に「BEN & JERRY'S Double-Dip」(邦訳「ベン&ジェリー・アイスクリーム戦略」1999、プレンティスホール出版)があります。

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<共同事業の始まり>
 多くの若者たちが自分探しの放浪をした(ヒッピームーブメント)1960年代に、ベン・コーエンとジェリー・グリーン・フィールドの二人は中流家庭に育ち、中学と高校を共にした幼なじみでした。

ベンの職歴は、社会奉仕の分野で、唯一の本職はティーンエイジャーのカウンセラーでした。ジェリーは医者になる予定でしたが、結局二人は、親友と一緒に楽しみながら働く方法を考えることに行き着きます。

1977年、二人は、ペンシルベニア州政府を通して5ドル受講できるアイスクリーム製造の通信講座を見つけて受講し、競争相手の同業者がいない出店地を選び、平均年齢が若く大学生人口も多いバーモンド州バーリントンという田舎町に出店することを決めました。

バーリントンの繁華街で空き家だった小さなガソリンスタンドをみつけ、通行量調査のカウンターでその通行人を数えたところ他の候補地よりも多いので、ここを借りて数ヶ月間にわたり改修工事をすることになります。

1978年5月5日、手作りアイスクリーム店は開店します。二人は8,000ドルを出し合い、4,000ドルの借入をして、計12,000ドルを投資しました。

開店当初には1つ買うと1つ無料であげるというサービスをし、母の日はお母さんたちに無料プレゼント、冬のバーリントンはとても寒い町なので、「摂氏( )度以下になると1セントオフ」のキャンペーンをし、夏には「バーリントン市民のためのびっくりフェスティバル」を開催し、無料で映画をガソリンスタンドの外側の壁に映写しました。

ビジネスが1年間続いたらアイスクリームを無料プレゼントして祝おうと始めたの「コーン無料の日」は、今日も年次祝賀行事として続いています。

1980年には卸売りを始めます。翌年、最初のフランチャイズ店がバーモンド州シェルバーンにオープンしました。

<転機の到来>
 しかし、創業して3、4年間、地域社会に根ざした企業になりたいと全身全霊で仕事に取り組み、生活も、息をするのも、いつでも仕事中という長時間労働の成果は、売り上げは伸びましたが、雀の涙ばかりのお金しか稼げませんでした。

そこで二人は、もう十分にやったという思いで、会社を売りに出しました。
ところが、ベンの友達で80歳のレストラン経営をしている芸術家が、
「ビジネスを売ることは人生で最悪の失敗になるだろう、世の中のビジネスのやりかたが気に入らないというのなら違うようにやってみればいい、君が会社の経営者じゃないか」
と意見したのを受け入れ、会社の売却を取りやめることにします。

1982年、この時から、二人のビジネスの目的の焦点は、はっきりしたものとなります。
それは、「ビジネスが社会発展の力になると同時に、存続していけるかどうかを見届けること」というものでした。

1984年、販売拡大のための新しい製造施設のために、12株単位126ドルで、地域の顧客に対して直接公開販売をします。会社の15%の株式を販売して75万ドルを獲得する目標でした。

これにバーモント州の100分の1世帯、1800世帯が申し込み、株式公募は大成功しました。その後も追加の建設費用をまかなうために数回株式を引受業者と共に販売しては、常に売り切れました。

当時の固定観念では、企業とはお金を作り出す機械であり、自分のために行うものであって、その埋め合わせをするために慈善事業があるという考え方でしたので、企業から慈善事業への寄付を永遠に確実とするために、ベンは自分の5,000株を寄付して、ベン&ジェリー財団を1985年に設立しました。

ベンは会社から財団に継続的に税引前利益の10%を寄付しようと考えていたところ、それでは企業成長への投資をしてもらえないと株式販売の引受業者がいうため、7.5%で妥協することになります。

1981~87年の間にフランチャイズ店を約50店舗オープンし、さらに87~88年には販路拡大に集中して60店舗を出店し、その後はフランチャイズ店の育成に取り組みました。

1987年、熱心なガルシアファンの提案で、チェリーガルシア・アイスクリーム味を導入しました。グレイトフル・デッドのギタリスト、ジェリー・ガルシアために名付けられたチェリーガルシアは、ロック伝説のために命名された最初のアイスクリームです。

一方、新工場の操業開始により、牛乳のすべてを、バーモント州の酪農家500軒のグループからなる生協から長期的に購入するようになり、ベン&ジェリーのアイスクリームは100%バーモント製で、バーモント州の最高級アイスクリームであることを誇りとするようになります。

<使命の確立へ>
 私たちのビジネスは最高で、すべて自然の素材を使ったアイスクリーム、フローズン・ヨーグルト、シャーベットを提供し、社員や株主に適正な見返りを提供し、日常業務の判断をする上で、積極的に地域社会への配慮をします。

1988年には、社是を作って会社の目的を定め、その目標に向かって頑張ることが、ベン&ジェリーの一員として不可欠の要素となりました。
1.進歩的で不偏不党の社会的な課題を持つ
2.争いを解決するための非暴力な方法を支援することによって平和を求める
3.フランチャイズ契約を失った人たちに、経済的な機会を提供する方法を探す
4.思いやりのある資本主義の実践に貢献する
5.環境への悪影響を最小限にすることを目指す
6.食品製造と家族農園を支援する

この年、ベン&ジェリー社は、税引前利益の7.5%を非営利団体に寄付することに関して、NY市受付の女優ジョアン・ウッドワードの提供する経済重要会議から、企業寄付賞の表彰を受けました。

1989年、ベン&ジェリーの社長にチャック・レイシーが就任し、社会事業役員のリズ・バンコウスキーと一緒に「私たちの目標」を文章化しました。
1.誠実であれ
2.ベストを尽くせ
3.常に前進せよ
4.常に学べ
5.多様な人材を登用しよう
6.創造的であれ
7.連帯感を持つ
8.オープンで信頼される人間になる
9.お祝いと意味のある評価をする
10.総合的に判断し、積極的に相手の話を聞く
11.責任を持て
12.コミュニケーションの達人たれ
13.率直になれ
14.節約して利益を上げよう

また、ホワイトハウスのローズガーデン行事で、レーガン大統領によって、ベンとジェリーは、その年のアメリカ小企業人たちと命名され表彰されました。

この年、全社的な初めてのフランチャイズ店との提携で、小売りの社会的なキャンペーンとして、アイスクリーム店で顧客投票の登録を開始します。

当時多くのアメリカ人が無力感を持ち、投票というプロセスから遠ざかっていました。一般市民の要求をもっと政府に反映させるために、できることをやりたいという思いで、合法的な手続きで各店に公証人1名を置き、来店して投票手続きをした人にはアイスクリームを無料提供しました。

この政治参加への呼びかけは、より多くの人に店の場所や、製品のすばらしさをわかってもらい、新しいお客を探すという別のメリットもありました。それ以来、インベントで、またはアイスクリームのサンプルを配って投票を受け付けるライトバンで、投票手続きを行っています。

1990年、社会貢献をする企業に健全なビジネス戦略があることを示すため、社会による監査を受けることを始め、1989年度の年次報告書の中で「社会業績報告書」を発表しました。

株主総会では、アイスクリーム店に車いすが入りやすいか、環境責任経済共同体(CERES)の原則に沿っているか、取締役会に占める女性やマイノリティの数、その他社会的使命に関連する事項が話題でした。

※ the CERES Principles セリーズ原則とは
 1989年3月、アラスカ沖でエクソン社のタンカー「バルディーズ号」が座礁し、原油流出で多大な被害を引き起こしました。アメリカ合衆国では、この事故をきっかけに企業に環境倫理を要求する声が高まり、同年9月に
CERES(Coalition for Environmentally Responsible Economies 環境責任経済共同体)は企業に環境責任を守るようバルディーズ原則、現在のセリーズ原則を発表しました。

セリーズ原則は10項目からなり、署名企業は各社の事業活動の中にこの原則を積極的に取り入れ、重要な経営方針の一つとして位置づけています。
   1. 生物圏の保護
   2. 自然資源の持続可能な使用
   3. 廃棄物削減と処分
   4. エネルギーの節減
   5. リスクの低減
   6. 安全な製品とサービス
   7. 環境の復元
   8. 一般への情報提供
   9. 経営陣の参加
  10. 監査と報告書

<価値主導ビジネス>
 私たちの主張とは、
1.ビジネスは社会で最も強い力を持っている。それゆえ、社会全体の福祉に責任がある。
2.「価値主導ビジネス」は大きな利益を上げられる。
3.投資家、社員、消費者として、人々はビジネスに影響を与えられる。
4.ベン&ジェリーが多くの場面で成功したのは、自分に素直だったからだ。
5.ビジネスにはメンタルな面がある。

1991年、価値観を日常業務に組み入れようとするにつれて、財団と会社が一緒に動けば、進歩的な社会変化のためにさらに効果的であることがわかり、財団は社員が運営し、慈善事業は社会的事業役員のリズ・バンコウスキーが監視し、CAT(地域社会活動チーム)は社員の各拠点に置くという、三部門体制になります。

ベン&ジェリーは「働きやすい会社 全米ベスト100社」の1992年と1994年に掲載されました。その評価は、会社の特徴として長所は「アイスクリームを作って世界を救おう」であり、欠点は「混沌とした組織に耐えるためのユーモアが必要だね」というものでした。

資金運用方針は、課税対象の投資では株式投資をしない方針で、またギャンブル・酒・タバコ、武器製造、原子力、環境破壊にかかわる社債にも投資せず、非営利団体の協力して住宅投資をしたり、地域社会の支援に関連する銀行に預金をすること。

非課税対象の投資では病院、学生ローン、公共交通の地方債という優先順位で低利回りの投資で支援します。

仕入れの方針は、ホルモン成長剤を使用していない牛から搾った牛乳をアイスクリームに使用するために、安定した購入価格でバーモント州の酪農家を支援し、今後は主要な原材料の購入先を有機農法に転換するように協力していくこと、非営利団体が経営する製造会社と提携していくことです。

また、無漂白の用紙を使う努力をすること。パルプの漂白に使う塩素と有機塩素による汚染と関連は1980年代初期に発見され、いち早くヨーロッパでは、コーヒーフィルター、トイレットペーパー、女性用生理用品、牛乳容器の段ボールが、環境保護のために白から茶色に変わっています。

そして、熱帯雨林でしかとれないブラジルのナッツを使った製品を1989年に開発し、その容器に表示して熱帯雨林の伐採を防ぐキャンペーンを1990年に行ったように、社会的責任を担う原料仕入れ先やマイノリティの仕入れ先を開拓し、新たな味と新製品の開発に力を入れること。

販売の方針は、非営利団体が主催するイベントでアイスクリームを無料配布したり、職業訓練の場所にフランチャイズ店を提供し、非営利団体活動に顧客の参加を促すことです。

マーケティングでは、固定客を引きつける相互作用の質が重要であり、量ではないと信じて、コマーシャルではなく音楽祭のような地域活動に毎年予算をかけます。

アメリカの消費者は疑い深く皮肉っぽいので、時間をかけてより率直で前向きな姿勢で接していけば、彼らは企業を信じるようになるでしょう。

ベン&ジェリーのブランドイメージは、
「牛の群れと緑の牧草地が広がるバーモント州。ここに住む、気がよくあったかい二人の男が、世界で一流のアイスクリームをかなり独特の味で作っています」。

1991年、「世界はひとつ 心はひとつ 音楽祭」という、最初の無料音楽祭のシリーズをストウー(バーモント)、シカゴ、サンフランシスコで開催しました。1996年のミネアポリスで開催したベン&ジェリー音楽祭には、太陽の下に5万人が友達を連れて集まりました。

<ビジネスと政治の共存>
 社会は企業に役立つためにあるのですか。それとも、企業が社会に役立つために存在するのですか?

企業が大きくなるまでは、歴史的に、社会に最も強く影響を与えたものは、その存在目的を社会の福祉とする宗教と国家でした。

企業の目的は最大の利益を上げること考えられ、社会福祉が目的ではありませんので、副産物として社会悪となることを擁護することも多くなります。

このような状況の中で、企業が一般国民の福祉のために立ち上がったとしたら、ひときわ目立つことになります。ベン&ジェリーのもう一つのブランドイメージがここにあります。

(つづく)
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いかがでしたか。

四季の変化を愛する日本では、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書
(地球温暖化の原因となる、温室効果ガスの一種である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs、PFCs、六フッ化硫黄について、先進国における削減率を1990年基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標を達成するために、植林活動などのほか、他国の排出権を購入したり、より削減コストの低い国へ資金提供や投資を行い、その排出削減量を自国の削減量に還元することができる、世界を巻き込んだ社会的な仕組みがある)
のとりまとめ国として、関心がこれに集中する傾向があります。

2008年~2012年の間に、日本マイナス6%、アメリカマイナス7%、EUマイナス8%といった削減率を設定していますが、アメリカ合衆国はこれに参加していません。

国家・政治活動、宗教・慈善活動、企業・営利活動、それぞれが法律では分立していますが、地域社会では同じ生活の場となって融合し、一方、地球規模でもそれぞれ異なる次元で融合化が進んでいます。

特に、地域社会において役割を担うことによって利潤を生み出すという考えは、日本全国に行商に出歩き拠点を持って融合に努めた近江商人の家業精神に見いだされるもので、日本的資本主義の精神の一部となっています。

一方の、ビジョンや使命を明確に掲げて情報公開に努めるという考えについては、松下幸之助の経営方針では早くから従業員への決算公開が見られますが、それ以前の時代ではどうでしょうか。




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