11日は全国的に高気圧に覆われて気温が上がり、気象庁によると929か所の観測地点のうち、180か所で30度以上の真夏日となった。

 最も高かったのは群馬県館林市の33・7度。福岡県久留米市で32・7度、熊本市と栃木県佐野市で32・6度など、広い範囲で7月中下旬並みの暑さとなった。東京都練馬区でも30・8度を観測し、千代田区では、強い日差しで遠くに水があるように見える「逃げ水現象」が起きた。

 12日は雲が広がり、西日本などで雨が降るという。

この夏、猛暑の覚悟を? 史上最も暑かった6年前と似る
朝日新聞 2016年6月9日08時01分

 

 今年の夏は猛暑になる可能性が出てきた。観測史上最も暑かった2010年と海や大気の状況が似ているところがあり、さらにいくつかの条件が重なれば全国的に暑くなるという。猛暑になることを見込み、対策に乗り出す企業もある。

 気象庁の季節予報では、8月の気温は東日本は平年並みか高く、西日本は高い。夏の後半から暑い日が多くなる見込みという。

 10年は記録が残る1898年以降で、6~8月の平均気温が最も高かった。全国11地点で35度以上の猛暑日の日数を更新した。春に太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が高くなるエルニーニョ現象が終息。夏に逆に海面水温が低くなるラニーニャ現象が発生した。

 気象庁は今年もエルニーニョ現象が終息し、ラニーニャ現象が早ければ7月ごろに発生すると予測している。ラニーニャ現象が起こると、太平洋高気圧がいつもの年よりも北側に張り出し、日本列島を覆う。そのため、晴れの日が多くなり気温も高くなる。

 東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授(気候変動科学)は「残存するエルニーニョの影響よりも今後ラニーニャ現象の勢力が強まった場合、10年のように暑くなる可能性がある」と話す。

 もう一つ、猛暑になるかを決める要因は、日本付近を流れる亜熱帯ジェット気流がどう蛇行するかだ。10年は平年より北側に蛇行し、日本列島の上空は太平洋高気圧の上層にチベット高気圧も覆った。このため、日本列島全体が猛暑となった。

 今年はどうか。気象庁気候情報課の竹川元章予報官は「気流の蛇行は2週間くらい前にならないと予測するのが難しい」というが、今年はジェット気流が10年と比べて南よりに流れそうだという。その場合は、高気圧の張り出しが北日本まで及ばない可能性もある。だが、竹川さんは「終息したとみられるエルニーニョ現象の影響が残って大気が暖かい状態が続くため、西日本や沖縄では平年より暑くなる」と話す。

 猛暑を見越し、すでに対策が始まっている。

 サントリーは6~8月のビールの生産量を前年比で10%増やしたほか、酎ハイ類も15%増やす。キリンは6~7月のビールの生産量を昨年より約7%増やし、塩や果実を使い水分補給に適した飲料「ソルティライチ」について、凍らせて持ち運びやすい容器で今月下旬に販売する。アサヒも第3のビールを7~8月で前年比5%増やすことを決めた。

 お中元商戦も猛暑を意識する。高島屋は5~6月にかけて全国の店舗でギフトセンターを開設。目玉は「アイス系商品」だ。担当者は「今年のパワーアイテムで、暑い年には売れると見込んでいる」と話す。ここ数年人気傾向にあることに加え、猛暑を見越して前年より約2割増しの売り上げを見込んでいる。

 千葉県は猛暑で収穫が落ちないよう、夏秋トマト栽培の農家にビニールハウスの遮光や地面の熱の吸収を抑えるシートで対策を呼びかける。猛暑だった10年には出荷量が減少した。県の担い手支援課の担当者は「猛暑の影響が最小限になるように細かく情報提供していきたい」と話す。

 5月下旬、東京ビッグサイト(東京都江東区)で、環境省などが後援する猛暑対策の展示会が開かれた。約20社の企業が参加し、夏場に炎天下で作業する人たちを熱中症などから守るための商品やサービスが紹介された。

 大沼プランニング(宮城県名取市)は、米国から輸入した冷却機能を備えた衣服を紹介。服に縫い付けられたチューブを冷水が循環し体を冷やす仕組みだ。既に焼き鳥店や溶接工場などから問い合わせを受けている。大沼敏男社長(68)は「熱中症は今の時期も多く発生する。対策は今から始めないといけない」と話す。(小川崇)

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熱中症にならないように気をつけて、この猛暑の夏を乗り切りましょう。