因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ウテン結構 第3回公演『奇妙な旅の旅のしおり、この世の果て』

2019-10-09 | 舞台

*雨々(仮)作・演出 劇団サイトはこちら 本公演サイトはこちら1,2日暮里d-倉庫 13日まで
 旗揚げから3年間で5回の公演を行い、公演を重ねるごとに1ステージ増やすという宣言通り、3回めの公演が実現した。公演中、d-倉庫のロビーでは出演俳優の真夏果の絵画展示もあり、日常の時間を終えて訪れる観客の心身を和ませ、期待を高めてゆく。

 本ユニットは、演劇、戯曲、物語の関係性。俳優と観客との関係性について考え続けており、舞台に明確な答を提示するのではなく、時には迷う心や試行錯誤の様相を敢えて見せることで、創作の姿勢、これからの方向性を探っている、と見た。

 今回の公演と同じタイトルの戯曲を途中までしか書いていない劇作家のもとに、俳優たちが「このホンでは上演できない」と申し入れにくる。劇作家は恋人に書きかけの戯曲を読ませながら、劇世界に入り込み、この美しい恋人がほんとうは誰なのかが次第に明かされてゆく。劇中劇の形を取りながら、途中しばしば中断し、毎度の「本日はご来場ありがとうございました」と、素に戻るところもあり、今回はカーテンコールまで行っている。

 入れ子式の更に入れ子式になっていたり、あの人はほんとうは〇〇だったり、この人はもともと誰だったのか等々、どこに視点を合わせればよいのか少なからず戸惑うのは確かである。休憩なしの135分はやや辛く、たとえば120分ならよいということではなく、例えばやや点描めいた描写箇所をもっと太い線にする(抽象的な言い方になるが)ことで流れにメリハリが生まれ、何が必要なのか、そうでないのか、敢えて示さないことによる劇的効果が生まれる可能性も見えてくるのではないか。

 旗揚げ公演からおなじみの顔ぶれが多く、飛び道具的なキャラ設定においては「やはり今回も来たか」と「待ってました!」的楽しみもあり、ひとつのユニットの活動を、物語のように味わっている。3年の旅は半ばまでたどり着いた。

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